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アルチザン28ミリとライカのSummaron28ミリのガチンコテストで分かったいくつかの事

私にとって1950年代に作られたライツのSummaron2.8cm f5.6と言うのはノスタルジックオブジェなのである。大学1年の時に友人から借りて使ってその描写力にびっくりしてオーストリアウィーンに住んでいた時は同じレンズを2つ持っていてよく使ったものである。

数年前にライカの会社がそのレンズのレプリカを作ったので馬鹿なことをやるなと呆れていたのである。かなりマニアックなレンズであるからそういうものをマーケティングでは全く評価されないと思ったのだ。そうしたらつい最近アルチザンから同じレンズが出たのでこれはどれだけ使えるのかと言うことに興味を持った。

カメラ雑誌が全盛期であった頃のレンズの比較テストと言うのは非常に退屈なものであって、日比谷あたりのどこかの建物を道の反対側から撮影したり、英国大使館のレンガを撮影してどこまでよく写っているかと言うとんでもないテストなのである。しかし大昔に流行ったレンズのテストチャートみたいなものだからそれでよかったのだということに気がついて、東京駅八重洲口の2階のコンコースから今建設中の八重洲口のビルを何の変哲もなく撮影したのである。

しかしそればかりでは面白くないので後期高齢者がコンコースに座っている作例もFacebookにアップした。一昨年からアルティザンの新製品をガチンコ対決と言うことで野口ルックス50ミリef 0.95とアルティザンの同じ明るさのレンズとかいろいろやっているのであるがその両者にほとんど差がないと言うのが面白かった。と言うよりも全く同じレンズで撮ったような印象があるのだ。それは21ミリef 1.5のレンズでも同じだった。

今回ライカの28ミリとアルティザンの28ミリでは描写がかなり違うと言うのに興味を持った。しかしFacebookのガチンコ対決で最初から種明かしをしてはつまらないのでどっちがどっちはわざと伏せておいたのである。

ありがたいことにこのようなマイナーレンズであるにもかかわらず150位のイイネをいただいて50近いコメントもいただいた。面白かったのはほとんどのコメンテーターが間違っていたのである。つまりこちらがライカのレンズだ描写が良いと言うのはアルティザン28ミリであったと言うことが面白かった。

50近いコメントのうちで7割5分は間違っていたと言うのも興味深かった。何かつい最近の報告によると出雲の大手カメラ屋さんにライカの復刻版28ミリの方が310,000円以上で出ていたそうである。アルティザンのレンズのほうはその消費税位で使えるのだから実用と言う事から言えばどちらが良いとか悪いとか私が言うまでもない。

これも言うまでもないことであるがライカの最新型のデジタルカメラで2つのレンズを撮影してそれをFacebookにアップしていてほとんどの皆さんがスマートフォンかiPadで見ているわけであるからそれが滑稽なのはフイルムカメラ時代にサービスプリントでカールツアイスのレンズの優劣を語ったのと同じナンセンスであることだ。

しかしこの実際的な比較の仕方と言うのは別のサイドから見れば有効なのであってMTF曲線がどうのこうのと言うのに比べればまずレンズの実態とその描写感覚を伝えていると言う可能性はあるのだ。

私が痛感したのはプロ写真家としてそれも広告写真関係の仕事として長年フィルターワークで苦労していたと言うことが今のデジタルカメラ時代にはすべてゼロになってしまうだということである。要するに今回テストした2つのレンズと言うのは確かに描写はわずかに異なっていて、アルティザンの方がコントラストが高いし、やや色温度が高く描写されているのであるがそんなのはPhotoshopで簡単に補正することができる。

2つのレンズの仕上げを細かく見てみるとアルティザンのレンズがライカのレンズのデッドコピーと言うわけではなくて微妙なところが異なっているのも面白い。しかし友人からオリジナルの1950年代のSummaron 28ミリレンズの画像を提供されてそれを見たところではそれぞれのレンズの部分のハンドリングの使いやすさは1950年代のレンズの方がはるかに進んでいると言うことに気がついたのである。

5月14日までギャラリーバウハウスで展示中のウィーンとライカの日々でもこのオリジナルレンズで撮影された作品が展示されている。

手元にある2つのレンズのどちらを使うかと言えば間違いなくアルティザンの方である。しかしデジタルカメラでは使わずにちゃんとエム型フィルムライカで使おうと思う。そうすれば私のウィーンとライカの日々の当時の記憶をそのままに現代につなぐことができるからだ。

今流行のデジカメによるレンズ交換遊びがまだスタートするずっと以前の16年前にエプソンで出した写真集のために私は昔のライカレンズをたくさん世界で最初のデジタルレンジファインダーにつけて遊んでそれを写真集に発表したのであった。

数があるクラシックレンズの中で1番面白かったライツのソフトフォーカスレンズTambar 90mmであった。ソフトフォーカスレンズと言うので有名になってしまったがその時私が当時のアサヒカメラにカラーで発表した作品は中間絞りよりも絞った状態でギリシャのアテネを撮影したのであるがこれがなかなか優秀なスナップシューターであったことだ。

ライカの会社はこのソフトフォーカスレンズをレプリカで作っているからそのまたレプリカを希望したいなぁ。


ズマロン(顔本では左)

ズマロン

アルティザン(顔本では右)

アルティザン


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