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6月第一弾 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

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写真集と言うものは、自分が出版してから10年以上理想的には20年ぐらい経過して、それを見返すというのが非常に正しい鑑賞の仕方であると思う。
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2024年6月の記事一覧

カメラノートスペシャル6月第一弾 1 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

1 私は手元に自分の写真集をおかない主義なので、十数年前にできたと思うのだが、奥付がわからないので、正確な年代は不明である。 通して本が返品されたりすると、ほんの疲れ方が汚れ方がひどいと思うので、ダイレクト通販と言うことにした ウィーンモノクロームセブンティーズと言うタイトルは小さな出版社の社長であり、編集長が決めてくれたのである。こういうタイトルは自分ではなかなか考えつかないものだ。この写真集はハードカバーで500ページあって、重さが2.5キロある。最初は1000ページの写

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カメラノートスペシャル6月第一弾 2 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

2 オンラインの写真集を私が高く評価していないのはそれが立体物ではなくて平面化されたメディアであると言うことだ。写真集と言うのは映像によって立体彫刻を作るようなものだから、アイディアを考えているときに、最初に頭の中に浮かぶのは、平面的な画像の羅列ではなくて、彫刻のような3次元の立体の姿が頭に浮上してくるのである。

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カメラノートスペシャル6月第一弾 3 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

3 0.5キログラムのハードカバーで、ペーパーの印刷はモノクローム一色と言うので本の立体的な構造が決まったのである。ただし、西川帝国主義の我々が属している世界でこういう出版物を流通させるためにはいろいろトリックをやらねばならない。20歳代に買ったアンディーをホールの仕事を紹介した。500ページ位の写真集があって、それが気にいっていたのだが、これはソフトカバーなのである。しかも、ソフトカバーの写真集そのものが流通しているから、アメリカから輸送してくる間に、すでに表紙が擦り切れて

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カメラノートスペシャル6月第一弾 4 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

4 モノクロームの写真集のそれもフイルムを使ったものであれば、通常は印画紙にプリントしたものを版下に使うのである。しかし私はその方法は使わなかった。まだデジタルデーターから写真集を作ると言うことがかなり初期の段階のプロセスであったので、それなりに実験をしてみたかった。どういうことかと言うと、まずモノクロ寝顔フラットベッドのスキャナーでスキャンする。これもファイルの長さは非常に短くて、マックス1 MB位のファイルサイズなのである。写真集で使われたイメージは全部で600カット位で

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カメラノートスペシャル6月第一弾 5 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

5 今回の田中長徳のカメラノートスペシャルでは、写真集の見開きページと言う事について集中的に考えてみることにする。写真集の見開きページとその視神経に与える影響力と言うのは非常に重大なものであって、これがバーチャルな写真集ではなかなか達成できない。視覚的効果なのである。見開きいて写真が左と右に並んでいると言うのはペーパーに印刷された。写真集の場合、それがかなり強烈な視神経の刺激として我々に伝達されるのである。その理由の1つに写真集を見る観察者が実際に指でページをめくっていくと言

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カメラノート6月第一弾 6 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

6 グラフィックの本場のスイスのポスターなどに比べると、ウィーンというか、オーストリアのポスターは、グラフィックデザインからすると、かなり遅れているというのが、いつも私が考えていることだ。ウィーンのポスターが田舎っぽいのは、このように巨大なポスターを展示することがパワーであると言う風な誤解があると言う点にある。日本から来た旅行者でウィーンに到着して1番びっくりするのは、巨大な女性の下着の広告がそこら中にあるので、目がクラクラしてまっすぐに歩けないと言うことであった。その下着メ

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カメラノートスペシャル6月第一弾 7 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

7 ウィーンモノクロームセブンティーズの作品の中で、私が気に入っているショットの1つがこれだ。7年間暮らした。ドナウ運河に面した。アパートメントから歩いて2分位のところに巨大な公園のエントランスがある。アウガルテンと言う名前で中にはウィーン少年合唱団の本部があったり、陶磁器のワークショップがあったりする。ウィーン少年合唱団の本部は寄宿舎になっていて、メディアで私も取材に行ったことがある。非常に巨大な庭園であって、皇帝フランツヨーゼフはアウガルテン公園を散歩するのが楽しみだった

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カメラノートスペシャル6月第一弾 8 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

8 巨大な絨毯を丸めて3人で運んでいる青年のスナップショットである。考えてみると、アンリカルティエブレッソンもロバートフランクも、そしてウィリアムクラインも素晴らしい。スナップショットをたくさんとっているのに、絨毯を丸めて担いで歩いている。3人の青年と言うのは撮影したことがない。ここら辺が時間軸と私が移動している。カメラのポイントとの非常に微妙かつマジックな遭遇なのである。

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カメラノートスペシャル6月第一弾 9 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

9 写真集winモノクロームセブンティーズの中で1番観光写真的な映像と言えばこれに尽きると思う。これはwinの国会議事堂である。winのオペラ座と並んで最も有名な観光スポットになっているが、ウィーンの観光馬車でこの前を通過してもエントランスが見えるだけで、上のほうにデコレーションされたダイナミックな銅像は見ることができない。これはソ連製の500ミリのレフレックスレンズでかなり距離をとったところから撮影したものだ。そうするとダイナミックな銅像の全体像がエキセントリックに浮かび上

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カメラノートスペシャル6月第一弾 10 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

10 ウィーンモノクロームセブンティーズを担当したアートディレクターさんが優秀なので、この見開きページのコントラストと言うのは、私などの貧困な精神では絶対に構成できないものであると考えているのだ。左は確かに私がそこにいたからこういう写真を撮影しているのであるが、場所は既に失念してしまっていて、どこかの冴えないカフェのがらんとした空間で男性が背中を見せて、何かのゲームをやっているところである。ウィーンのカフェで有名なのはアドルフヒトラーが若い頃絵描きを希望して、ウィーンのアカデ

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カメラノートスペシャル6月第一弾 11 写真集の作り方ウィーンモノクロームセブンティーズ

11 写真集の見開きページに共通項となるような1つのオブジェを提示して、ただその共通項となるオブジェの物理的なスケールが完全に異なっているために、写真集の観察者に一瞬の等身大から離脱しためまいを起こさせると言うのは、かなり高度な写真集編集のテクニックである。この写真集を制作してくれた。アートディレクターさんはそこら辺のことに精通しているので、我々写真家が作る。いい加減な写真の編集作業より3クラス上を行っていると言うことで、この見開きのコントラストに私は非常に尊敬を払うことにな

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