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置いてきた麦茶

オフィスで2Lの麦茶のペットボトルを愛飲していた。

日頃こまめに水分を取るようにしているせいか、またはオフィスが乾燥しているせいか、普通の500mlのペットボトルはすぐに飲み切ってしまう。新しいものを買いにオフィス1階のコンビニに行くのは面倒だし、大体ペットボトルだけではなく何かおやつも手にして帰ってくることになるので、いろいろ都合が悪い。だから、ある時から近所のスーパーで2Lのペットボトルを買って持って行くようになった。もちろん1日では飲みきれないので、余った分は共用の冷蔵庫に入れて帰っていた。

そして、いまオフィスには1ヶ月前の金曜日にいつものように置いて帰った麦茶がおそらくそのまま残されている。

3連休明けの月曜日、ちょっと億劫な気持ちで出社の支度を整えて、家を出る前に軽くメールの確認でもしておくか…とメールボックスを開いたところ、そこには「今日は全員テレワークにしてください」という部署全体宛の連絡が届いていた。コロナウィルスのためである。

そして、結果として、その日からいまに至るまでずっとテレワークをしている。

最初は同僚と「あの書類どうします?」「来週出社できたら、その時に片付けましょうよ」なんて話をしていた。次第に「来週」が「来月」になって、最近はとうとう誰も出社の話はしなくなった。

Zoom越しに見る部署の人たちは以前と変わらず元気そうに見える。これまでオフィスで見ることのなかったお子さんたちが、たまに画面に映り込むのも微笑ましい。きっと私たちはこの仕事のやり方、もっと言うとこの世界に徐々に慣れていくのだろう。

でも時々、夜寝る前に、誰もいないオフィスに残されているであろう飲みかけの麦茶のことを思い出す。

あの麦茶を取りに行くのはいつになるんだろう?

(写真は★きい★さんによる写真ACのものです)

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