見出し画像

川上未映子 死ぬことにはふたつのこわさがあるものです

消えてしまうことへのこわさ
残ってしまうことへのこわさ
どちらかをこわがる人々がそのこわさを競いあうせいで
そのどちらもこわがってはいない子どもらがこれまでにたくさん死んできた
おまえはどっち、どっちがこわい?

扉ーそれが決して開かないとわかっていても、叩かずにはいられないもの
失意ー胸のなかに広がる曇天
安堵ー死ぬことと眠ることにはそんなに違いはないんじゃないかと当たりをつけること
笑顔ー求められるとその瞬間、そのよさのいっさいが失われてしまうもの
愛ー全ての人生が、本当に、一度しかないことを、理解すること