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自転車ヘルメット助成金(墨田区)

すみだが大好き
墨田区議会議員・国民民主党のちょうなん貴則です。

議員の務めの1つは「情報開示」だと考えnoteを始めました。

今回は墨田区の自転車ヘルメット助成について、まとめと考察を書いていきます。
疑問点や感想、またご指摘など、こちら(LINE)までいただけると幸いです。「読んだよー」の一言をいただけるだけでも、とても喜びます♪

5つのまとめ

1.目的は、自転車用ヘルメットの普及・啓発
2.対象は、自転車損害賠償保険等に加入している区民(全年齢)
3.内容は、ヘルメット購入時に2,000円引き
4.注意点は、2022年12月23日以降に購入したものも対象(遡及で対応)
5.懸念点は、結果として墨田区内で自転車利用時にヘルメットを被る人の絶対数は増えないかもしれない

墨田区HP(2023)「墨田区自転車用ヘルメット購入促進事業について」https://www.city.sumida.lg.jp/kurashi/jitensha/bicycle/helmetsokushin.html 
(最終アクセス日:2023年7月20日)

1.導入の背景と目的

(1)改正道路交通法

2023年4月1日から改正道路交通法が施行されました。
本法令の施行により、ヘルメットの着用努力義務の対象者が13歳未満から全年齢に変更となりました。改正後の法令の定めは以下のとおりです。

(自転車の運転者等の遵守事項)
第六十三条の十一 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
2 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
3 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

e-gov法令検索(2023)「道路交通法」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
(最終アクセス日:2023年7月20日)

(2)ヘルメットの着用率

道路交通法の改正後、埼玉県で実施されたヘルメット着用率調査結果では、わずか5.8%でした。4月以降ヘルメット販売が伸びたために、在庫が枯渇したことも一因としてありますが、ヘルメット着用が浸透しているとは言い難い状況です。

県警は5月11~22日、さいたま、川越、久喜の3市の駅や商業施設の周辺で着用率を調査した。警察官が確認した自転車の利用者は1438人で、ヘルメットを着用していたのはこのうちわずか83人。着用率は5・8%だった。2月の調査からは2・5ポイント改善したが、1割にも満たない。

朝日新聞デジタル(2023)「自転車ヘルメットの着用率5.8% 背景に品不足もすでに解消」
https://www.asahi.com/articles/ASR663QTDR5LUTNB00Z.html
(最終アクセス日:2023年7月20日)

(3)ヘルメットを着用する効果

ヘルメット着用が努力義務となった背景として、ヘルメット着用時の致死率の低下があります。ヘルメットを着用した場合と、着用していない場合では事故に遭遇した際の致死率に2.3倍の差があることがわかっています。
 ・ヘルメットを着用した場合の致死数は、10,000人あたり12人。
 ・ヘルメットを着用していない場合の致死数は、10,000人あたり27人。

自転車による死亡事故
ア.約7割が頭部に致命傷を負っている
イ.ヘルメット着用による致死率は差は2.3倍
   ・ヘルメットを被った場合の致死率は0.12%
   ・ヘルメットを被っていない場合の致死率は0.27%
  ※調査対象となる分母の数値が記載されていないことは要注意

警視庁(2023)「自転車用ヘルメットの着用」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/helmet.html
(最終アクセス日:2023年7月20日)

(4)本施策(ヘルメット助成金)の目的

・道路交通法が改正されたこと
・ヘルメットの普及率が低いこと
・ヘルメットを被ると命が守られること

上記を背景として、今回墨田区では自転車用ヘルメットの「普及」はもちろん、ヘルメットを被ることの意義を広く理解してもらうための「啓発」を目的にヘルメット購入時の値引き(助成)を決定しました。

2.施策(助成金)の詳細

ここでは、助成金の具体的な内容をご紹介します。
 対象者 :墨田区民
 対象年齢:全年齢
 条件1 :自転車損害賠償保険等に加入していること
 条件2 :区が指定する販売協力店舗で購入すること
 条件3 :SGマーク等の安全基準を満たしたヘルメットであること

本施策の特異な点を記載します。
今回の墨田区の施策では、施策開始前に購入した方も助成の対象にしています。これは「平等」「公平」といった側面を捉えたものですが、裏を返すと「施策効果を無にする」という可能性を含んでいます。

令和4年12月23日(令和5年4月1日から全年齢でのヘルメット着用の努力義務が決定した日)から事業開始前までに安全基準を満たした自転車用ヘルメットを購入された方に、最大2,000円の購入助成を行います。既に自転車用ヘルメットを購入された方や購入を予定している方は、購入時のレシートや領収書を大切に保管していただけますようお願いします。

墨田区HP(2023)「墨田区自転車用ヘルメット購入促進事業について」
https://www.city.sumida.lg.jp/kurashi/jitensha/bicycle/helmetsokushin.html
(最終アクセス日:2023年7月20日)

3.他自治体での施策実施状況

道路交通法の改正に伴う、自転車用ヘルメットの助成についてはいくつかの自治体の施策を例示として記載をします。

(1)港区

・令和5年7月14日(金曜日)から実施 
 ※上記日程から対象者を13歳未満から全年齢に拡大
・2,000円分の区内共通商品券(スマイル商品券)を進呈

(2)江東区

・令和5年4月3日(月曜日)から実施
・事業協力店にて1個当たり最大2,000円引きで購入可能

(3)目黒区

・令和5年4月1日(水曜日)から実施
・ヘルメット1個につき2,000円
 販売価格が2,000円未満の場合は販売価格
 ※自転車利用者1人につき1個

(4)足立区

・令和5年3月10日(金曜日)から実施
・2,000円引きで購入可能
 ※値引きは、1人につき1回限り

(参考)東京都の補助金

自転車用ヘルメットの助成については購入費用の半額、最大1,000円/個の補助金が東京都から各自治体に出ています。そのため、各自治体の助成金額が2,000円になるケースが多いです。小池都知事の発信は以下のとおりです。

今年度から、補助対象にヘルメットの購入を加えることといたしました。具体的に申し上げますと、区市町村の、いくつかもう既にスタートしておられるところがありますけれども、区市町村が負担する経費の2分の1を都が補助するというものです。

東京都(2023)「小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和5年4月28日)」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2023/04/28.html
(最終アクセス日:2023年7月20日)

4.施策の効果

本施策の予算は、4,000,000円。
ヘルメット1個あたり、2,000円を助成するため、本施策では2,000個のヘルメットが値引きの対象となります。(2,000円×2,000個=4,000,000円)

区内の自転車ユーザーは約200,000人いるため、今回の助成では約1%の人が新たに自転車用ヘルメットを手にすることになります。(2,000個÷200,000人=0.01=1%)

この「1%」の増加分が本施策の目的であった「普及」と「啓発」に対する期待効果です。(加えて、区内事業者による自転車用ヘルメット2,000個の新規販売分という商業的な支援もあります)

しかし、本施策では、既に購入した方も対象としています。
そのため、実際には「新規の購入分」で1%の上積みを期待することはできません。もしかすると、既に購入をした人が2,000人いたら、それだけで予算が無くなり、施策が終了になる可能性もあります。
この点では、本施策の目的であった「普及」と「啓発」は限りなく効果が低くなると考えられます。
そして、この点こそが、墨田区の自転車用ヘルメット助成の論点でした。

5.まとめ

今回、墨田区の自転車用ヘルメット助成のキーワードに「平等」「公平」が挙げられます。
確かに自発的に自転車用ヘルメットを購入し、用意した方については、値引きがないというのは、納得感がないかもしれません。そして、今回はまさにそのようなケースのお声を区民からいただき、施策を2022年12月23日まで遡って適用することを決めました。

しかし、「平等」「公平」を求めるならば、そもそも自転車用ヘルメットの助成は、自転車に乗らない人からしたら、不平等であり、不公平なのです。
何かしらの施策をやる際に、全ての人が対象でない時点で、不平等が生じているにも関わらず、平等を求めると、効果に疑義が生じるのは、まさに2面性だと感じています。

このようなケースの際に、今現在の私なりの整理ですが
住民全体に係る基礎的な住民サービスに関しては「平等」「公平」を追い求めることが必要だと思いますが、今回のように商業的な事柄に係る、言うならば行政が必ずしもやる必要がないものに関しては、「平等」「公平」ではなく当初に据えた目的達成のため、効果の最大化を目指すべきではないかと考えています。

とは言え、上記は事後的な見解であり、私も悩みながらも遡及適用に対して賛成の立場をとっています。
だからこそ、今回の「補正予算:4,000,000円」の使い方が妥当であったか(どの程度、当初の目的を達成できたか)は、しっかりと各議員と連携して検証をし、次の施策の議論に繋げたいと考えています。

区民の生活を豊かにする!
という目的の達成のため、「誰のために」「何のために」という観点を忘れずに、引き続き取り組んでまいります。
お褒めでも、お叱りでも、お声をいただけますと幸いです。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。

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