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義母の近い将来

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[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫
・お義母さん(夫の母・2023年秋から同居開始、要介護3)

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らしだったが2023年夏前に他界)
・弟(夫の弟・お義父さんの死後、長年の無職を経て介護施設に勤務を始める・実家暮らし)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)

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私と夫は、そもそも初めからお義母さんにホームに入ってもらう事を考えていたが、
介護認定の再調査の結果が、お義母さんがこちらに引っ越してくる数日前に判明したり、
また叔父さんに急かされて仕方なく段取りもなにもできないまま引き取る日が来てしまったりして、
とりあえず在宅介護の色々な段取りをした。
ホームに入るにも、本人の健康状態や動向など、私達が把握していない部分も多く、
「一緒に暮らしていなかったのでお義母さんの事はよくわからないけどホームに入れてください」
ではホームへの入居申請も通らないだろうというのもあり、しばらくは在宅介護でお義母さんの動向を観察していた。

前記事にも書いたとおり、お義母さんは私の想像以上に手がかかる。
それに加えて、自分の神経質な性格で自分の精神状態がダメになっていく。

夫も個人経営で仕事をしていて代わりが効かない仕事の中で、日々のハードワーク+お義母さんの深夜のトイレ見守りに寝不足が続いてイライラしやすくなっていた。
私達は今後はお義母さんにホームに入ってもらう事を了承してもらう必要があった。

お義母さんに話すことを夫に切り出してもらうようお願いしていたが、
夫も言いにくいのか、なかなか話し出さない。
やっと3人で居る時に夫が話を切り出した。

「ちょっとこれでは、〇〇(私)の体も無理が続いて心配やし、
自分達の仕事と生活もままならないから、
共倒れにならないうちにおかあさんには施設に入ってもらおうと思ってるけど…それでもいいかな?」

お義母さんは下を向いて黙り込む。
続けて私が補足する。

「私が専業主婦ならまだ、、お世話はできるかもですけど、
私が仕事できないとなると〇〇(夫)さんに生活費をすべて担ってもらわないといけなくなるのもあるし、、お義母さんにはちゃんと介護士さんがいる場所で、こんなウチみたいに段差ばっかりの家じゃない場所で安心して生活してもらいたいと思ってるんだけど…
お義母さんはどう思う?」

なけなしの言い訳。
思っていたより手に負えないから入ってほしい、という気持ちがバレバレだったのかもしれない。
もう一度お義母さんに問う。
「お義母さんの意見聞かせてほしいんだけど、どう?」

お義母さんは黙ったまましばらく沈黙が続き、

「おかぁさんはどうって言えんわ。好きにしてくれたらいい。
どうせ、おかぁさんはあと1年の人生だから。」

と今まで見たことのない嫌な顔をして言い放った。
自分の人生を諦めたような言い方だった。
なんで一年?そんなことないでしょ?と笑い飛ばして空気を変えようとしてみたものの、
自分は昔から胃潰瘍がある、あそこが痛い、ここが悪いと
体の不調自慢のような話が続き、
だからあとは短いからもうどこでも適当なところに入れてくれたらいい。
と少し怒りのような感情もまぜながらお義母さんは私達に話した。

夫と二人してなだめながらも、
「まぁ、じゃぁそういうことにさせてもらうからね」と夫がしめた。
その後、寝支度を手伝って寝かせた後、
夫と二人になった時間に、私は泣いてしまった。

こんなに色々お世話してあげてるのに。
なんであんな言い方で突き放すような事を言われないといけないの…
私の言い方、なんかきつかったかな?
ずっとこのままここで私達と生活できると思ってたのかな?
申し訳ない気持ちと、でも大変なのを理解して納得して欲しかった気持ちとで夫に泣きついてしまったのだ。

夫は「言われて傷ついたとかじゃないと思うよ。多分、不安なだけだと思うから。」
落ち込みながらも、自分で
「仕方のないこと、きちんと本人には説明しないといけないことはある」と気持ちに折り合いをつけて心を落ち着かせた。

またある日、
ケアマネージャーさんを交えて特別養護老人ホームの申し込みの話をし、
お義母さんにも申込書のサインをしてもらい、
ケアマネージャーさんが帰宅後に、今後の段取りを話した。

「お義母さん、これでホームの申し込みは進めさせてもらうからね。
どこに入れるか、すぐ入れるかはわからないけど、その都度きちんと説明するからね。」

お義母さんは「そうか」と言ってお金がかかることをとても心配していた。
以前に私がお金の心配をするような話し方をしてしまったからか。
ケアマネージャーさんも説明の中で本人に間違った金額(実際は介護保険適用前の金額)を話してしまっていたため、そんなにお金がかかるのか、と驚いていた。

「えらいお金がかかるんだな、、」と言うので、
「でも介護保険も使うし、お義母さんの年金の中で払えるように今色々と手続きしていってるから、私たちが無理することはあんまりないから、安心していいよ」
と伝えたが、お義母さんはこう言った。

「もうずっとここに座ってようか」

…え?リビングにずっと座って、居るというお義母さんに一気に腹が立ってしまった。

私「いやいや、お義母さんそれは私が気になって仕方がないからだめだよ笑」
お義母さん「なんで?〇〇(私)さんは隣の部屋で仕事しておいてくれたらいい。おかぁさんはここに座ってできる事する」

できる事する?…
家に来てから自分で何かをしようとすることを一切してなかった、自分で動く事を全て放棄しているかのような生活の仕方を見てきた事から、
この言葉に心底腹が立ってしまった。
自分の立場もわかってないのか、私達がお世話をしてきたことで、
実家にいたときの生活よりも健康で清潔で、規則正しい生活をさせてもらっているということを理解できていない!とムカついてしまった。

「お義母さんさ…じゃぁお義母さん自分で全部できる?
自分でお風呂入れる?食事の用意して食べれる?自分で尿意に気づいてトイレ行ける?できないから私お世話させてもらってるんだよ?
お義母さんがここにずっと座ってるっていうことは、私がずっとお義母さんの事を見てあげてないといけないんだよ?」

黙ってしまうお義母さん。
言ってはいけないことを言ってしまった。
本人ができない事を責めるような言い方をしてしまった。
これまでの細かなお義母さんへのイライラが言葉となって出てしまった。
反省しつつも、「もうずっとここに座ってようか」の言葉が作り出すイライラがおさまるまで時間がかかってしまった。

夫にも話をし、反省の旨を伝えた。
やっぱり私は介護にむいていない。

その後、再び夫と3人で老人ホームに入ってもらう説明をした。
私達もきちんと場所を確認して申し込みを進行していくこと、
ホームに入るまでは、これまでどおり私達がやれることはきちんとやること、
ホームに入ったらそれでさよならじゃなくて、もちろん定期的に会いには行くし、何もお義母さんを一人にさせて終わり、という事ではないということ。

そうするとお義母さんもスッキリとした顔こそしていなかったものの、
「みんなが良いようにしてくれたらいい。」と納得はしてくれた。
私達も納得してくれた事に安心していた。

夫の仕事が休みで家にいる日、私は買い出しと称して二人を家に残して出かけた。
その時、お義母さんが急に泣き出したというのだ。
夫が話を聞くと、ホームのことをどうやら姥捨山のように思っていたらしく、捨てられるんだ、と泣き出したという。
夫はなだめてその場をしのいだ。
私達はまた落胆したが、本人も不安なのだから仕方がない、と言い訳をした。

後日談として、
お義母さんがホームのことを姥捨山と想像していたのは理由があった。
お義母さんの受け入れが決まって迎えの日まで実家で生活してもらっていた頃、
叔父さんが実家に来て、
「あっちに行ったら施設に入れられるだろう。施設なんか入れられたら誰にも会えん。姥捨山みたいなもんだ。そういうところに行かされるんだ」
とお義母さんに言ったという。
叔父さんはどこまで嫌な人なんだろう。

お義母さんを受け入れて1ヶ月と少しが経った頃、
一つの封書が届いた。
綺麗とは言えない字で、夫と私の連名で宛名が書いてあった。
差出人は夫の弟だった。

私「弟?自分で発送してきたの?」
夫「そうみたい、これは叔父さんの字じゃないな…」
私「…え、、何?これ」

中身はまたも私達を苦しめるものだった。

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