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退院した弟からの電話

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[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫
・お義母さん(夫の母・お義父さんの急死により2023年秋から同居後、2024年2月に老人ホームに入居)

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らしだったが2023年夏前に他界)
・弟(夫の弟・成人後職歴無し・お義父さんの死後、うつ病.統合失調症を発症し保護入院)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹)

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2023年年末にうつ病と統合失調症で保護入院となっていた義理弟だったが、
入院は年が明けて、2024年7月まで続いた。

7月までのうちに度々、ケースワーカー(か、病院の担当者だったかは忘れたが)から夫に連絡があり、
退院後は実家に帰るか、その他で生活できる方法を探すか、
入院費用を夫が支払う意思はないか、
など連絡が入ったが、
夫は実家に帰っても、埃とゴミと荷物だらけの、だれも家族がいない実家で一人暮らしをするのは不可能であること、
入院費用は払う意思がないこと、費用は叔父さんが払うと当初病院に言っていたので、そうしてもらうか、生活保護を受給して自分で支払うこと、
を伝えた。

結局、病院の入院費用は叔父さんが払ったかどうかはわからないが、
普通は持ち家がある場合は生活保護を受けるのはなかなか厳しいらしいところを、
持ち家を担保にするという方法で、生活保護の申請がおりた。
生活の場は、本人とケースワーカーが話し合ってグループホームに入居することになった。

7月の後半、また夫に病院側から連絡があり、
グループホームに入居するには保護者の同意が必要なので書類にサインをして欲しいという連絡があった。

どうも一筋縄ではいかない。
夫がサインをしなければ、弟の新しい生活が成り立たなくなる。
これ以上、叔父さんを介入させてサインさせるわけにもいかない。
何より、叔父さんは入院中2回病院を訪れたそうだが、
(いずれも本人とは面会はできず)
2回に訪れた際には担当者に
「もう来ません」と伝えていたそうだ。
恐らく、年齢的に高齢で体の調子も良くないから、とか
言う言い回しをしたんだろうと思ったが、
弟を見放したと思われたくなかったのだろうと想像でき、
そう言いながらも、もう関わりたくないから「来ない」と伝えたんだろうと思った。
夫は嫌だけど…と悩みながらも、そうするしかなかったので、
書類にサインをして返送した。
もちろん、サインしたということは弟の保護者になったということで、
弟がもしグループホームで何かあった場合、夫にまた連絡が来るのだ。
夫にどこまでものしかかる家族の負担に、
私の気持ちもずっしりと重くなった。

しばらくしてグループホームの入居が決まり、その後、退院とともに入居したと連絡があった。
携帯電話は生活保護費の中から契約をし直し、電話番号も合わせて伝えられていたが、夫は自分から連絡はしなかった。

8月のお盆が始まろうとしている頃、仕事中の夫の携帯に見覚えのない番号で着信が数回あった。
誰だと思って夫がかけ直すと、それは弟だった。
夫が帰宅後、私はその内容を聞いた。

弟から伝えてきた言葉は、
退院して、ホームに入った。
まだ手が痺れるけど生活はできている。
お母さんは元気か?
だった。

弟は、自分がうつ病ということをあまりしっかり理解できていないように感じたと夫は言った。
手の痺れで入院していた、と理解しているような言い方で話していたらしい。
夫はこれまでの家族への対応と変わりなく、
「うん」「そう」「はい」を端的に繰り返し、数分で電話を切ったそうだ。

簡単に治る病気ではないのは理解できる、付き合っていかないといけない病気なのもわかるけど、
「迷惑かけてごめん。おかげで無事退院できた、色々ありがとう」
と、謝罪と感謝の言葉が欲しかった。
夫に、色々すみませんでした。と、色々ありがとうございました。と、
伝えて欲しかった。
「自分は大丈夫。お母さんは元気?」と言った弟に、
がっかりしてしまった。

その言葉は、施設にいるお義母さんと同じに感じた。
「施設は嫌な場所だけどなんとかやってる。弟が入院してしまってかわいそう。」
どちらも、夫を想う言葉は、どこにもなかった。

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