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悲惨な実家の一室

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[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らし)
・お義母さん(夫の母)
・弟(夫の弟・無職・実家暮らし)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)

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お義母さんが立てない。
全員でお義母さんをなんとか立たせようとするが、
どうも膝に力が入らない。

こんなに体力も無くなっていたのか…

私の夫は医療従事者のため、
正しい方法でお義母さんの補助を行うが、
普段と違う状況に、お義母さんも焦り、さらに立ち上がれない。
しびれを切らした叔父さんや叔母さん達がなんとか部屋に戻そうと
お義母さんを取り囲む。

ここに手をつけ
かかとを抑えろ
膝立ちですすめ

など、まさに寄ってたかって状態。
いろんな人がいろんなことを言うことでさらに部屋に帰れなくなるお義母さん。

結局、最期までお義母さんは立ち上がれなかったため、
座布団に座ったままの状態で夫が座布団を引っ張って移動。
なんとかいつも過ごしている部屋に戻ってもらった。

そもそも翌日もお義母さんのお世話や家のこと、各種手続きなどのために
実家に行くつもりだったので、
お義母さんに明日また来ることを伝えるために、
私は初めてその部屋に入った。

「えー…」

愕然とした。
床には古新聞が敷かれ(弟になぜか聞くと「とくに意味はない(?)」と言われた)
もう何年も敷きっぱなしであろう平たくクッション性のほとんどない昔の敷布団。
枕は粗品のタオルを何個も折りたたんで重ねたもの。
部屋の壁一面にとにかく積もった荷物と埃。
何箇所もある挿しっぱなしのタコ足配線のコンセントにも埃。
クーラーもない。

こんな場所でお義父さんと弟と3人で過ごしてたの?
あまりにも不衛生で驚きを隠せなかった。
元々の家の古さは仕方がないが、
手入れをしていないのがすぐに見てとれる。
仏間の畳もそうだったが、歩くと「あっ」と声が出そうなほどへこむ。
実家は山のすぐ下に、山に沿うように立てられていてとにかく湿気がすごい。

なんでこんな状況なのに、なんで教えてくれなかったのか。
お義母さんをみんなで移動させた後、叔父さんの妻が、

食事の用意をいているからそれを食べさせて欲しいと弟に頼まれ、
手伝いで実家に行くと
お義母さんのために具材を細かくきった炒め物があり、
それを見て胸がいっぱいになったと、
一人でお義父さん、お義母さんの面倒を見ていたのかと思うと、
と、泣き出した。

私はそれを見て、弟が無職でお義父さん、お義母さんの年金で
暮らしてきた現状の方が頭をよぎり、悲しい気持ちにはなれなかった。
むしろ当然と思ってしまう気持ちもあったが、
何も知らされてこなかったにしても、
弟にまかせっきりにしていたことは事実だった。
それに関してはきちんとお詫びしないと、というのだけを思った。

私は叔父さんの妻に、きちんと生活を立て直さないといけないこと、
それにはお義母さんの年金だけではもうやっていけないし、
弟さんもしっかり仕事をしなければいけない。
だからひとまず生活保護を受給して、就労支援など第三者に介入してもらって立て直さないと、お義母さんもお義父さんと同じ道を辿ってしまう。
と、真剣に話した。
横にいた叔母さんも、そうね、と頷いていた。

「お義母さん、お義父さんいい顔してましたよ。
苦しそうな顔してなかった。」

お義父さんとの最期の姿を見ることなくお骨になってしまった、
お義母さんが不憫でたまらなくなり、涙が出てしまった。

お義母さんは私の手を強く握ってくれて、ありがとうと言ってくれた。

「お義母さん、また明日来ますね。」

そう言ってホテルに帰ろうとした時、弟に

「任せっきりですみません、明日また来るので宜しくお願いします」

と言ったが、弟はうんうんと頷くだけだった。

この弟、私は結婚してから全く1対1で話したことは無く、
どう話していいのかわからなかったから、こういう声かけしかできなかった。
少し話しただけでもわかるコミュニケーションの不器用さ。
ほとんど自分から発言はしない。
長く社会から離れているのがよくわかる性格。
私はこれから弟とどうコミュニケーションを持てばいいのか
少し不安がよぎった。

ホテルに帰った私達は、お風呂に入ってすぐに
歩いて15分ほどの、閉店時間ギリギリのディスカウントストアに行って
お義母さんの髪を整えるクシや水のいらないシャンプー、
爪切りのセットなどを購入し、明日に備えた。

とにかく明日は、役所への手続きとお義母さんをできるだけきれいにすることを目的にした。

翌朝、叔母さんが少しでもお手伝いをしたいからと、
車を出してくれて、私達は実家へと再び向かった。


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