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オカルトメディアとそのリテラシー

みなさんこんにちは。長南です。
朝日新聞が「陰謀論」をテーマに特集を展開する中で、雑誌「ムー」の編集長が「Qアノン」で盛り上がっている人たちに「陰謀論への免疫が足りない」と語っていたのが記事にされました。

朝日新聞に「ムー」編集長登場

この記事はTwitter上でも話題になり、Togetterでもまとめが作られているようです。

note のプラットフォームを使って「ムーPLUS(あえてリンクは張りません)」を展開してがんばって(?)いるところを批判するのは若干気が引けますが、「ムー」というメディアは「Qアノン」信奉者を「陰謀論への免疫が足りない」と批判できるようなリテラシーや矜持を持ったメディアだとは私は考えていません。

「ムー」と「オウム真理教」

日本においてメディアのオカルトリテラシーが試されたのは間違いなく「オウム真理教」の一連の事件で、これらをどう扱ってきたのかが一つの目安になるところですが、麻原彰晃が「ムー」に寄稿していたことや教団が広告を出していたことは有名で、知っている人も多いと思います。

結果論と言ってしまえばそれまでなのですが、オウム麻原の認知を広げる役割を「ムー」が果たしてしまっていたというのは事実です。オウムのときとは時代が違うとはいえ「あなた方がそれを言う資格あるのですか?」というのが率直な感想です。

オカルトというのはどうしても信憑性に薄い話題を扱わざるをえない部分があるのですが「自分達は論拠の乏しい、あやしい話題を扱っている」という慎重さや慎ましさを忘れた途端、どんどんカルト化していくのではないかと危惧しています。

日本と「Qアノン」

そんな「Qアノン」ですが、私が観測している中で日本で盛り上がって(?)いるのは「科学的な妥当性だけを重視する一辺倒な報道ではなく、知的好奇心を刺激することを目的として」いるとする、アルファベット6文字カタカナだったら3文字の某メディアや、私の周辺で一時期「馬術団」と揶揄されていた某団体方面です(「ムー」の編集長はそのあたりを意識して「あいつらとは違う」という趣旨で発言したのかもしれませんが私には五十歩百歩に見えます)。

「Qアノン」には2020年のアメリカ大統領選挙に関連して語られることが多いのですが、実は日本の匿名掲示板「2ちゃんねる」(現「5ちゃんねる」)や画像掲示板「ふたば☆ちゃんねる」と関わりが深いところがあります。

「2ちゃんねる」は日本のインターネット上に様々なミーム(流行)を作り出してきた、良い意味でも悪い意味でも影響力が大きいコミュニティだったのですが、2014年に当時の「ひろゆき」から「N.T.Technology会長」の「ジム・ワトキンス」が管理権限を奪うという出来事があり、その頃から徐々に日本での存在感を低下させてきています(代わりにSNSが個人間のコミュニケーションとして台頭してきました)。

「Qアノン」が誕生したとされるアメリカの画像掲示板「4chan」は「ふたば☆ちゃんねる」を流用して作成されたとされ、また2015年に管理者が「ひろゆき」に交代されたとされています(Wikipedia:4chan)。また、「ジム・ワトキンス」は「4chan」派生の画像掲示板である「8chan」の管理人となり、現在「Q」は「8chan」に以降しているとされています(Wikipedia:Qアノン)。

つまるところ「Qアノン」というのは「ひろゆき」や「ジム・ワトキンス」がアメリカで管理している掲示板発のミーム(流行)であり、「アメリカの2ちゃんねらーっぽい人たちが主張している言説」ということができるように思います。「アノン」というのは「Annonymous(名無し)」を示しているのでいってみれば「Q名無しさん」といったところでしょうか。

なぜ2020年に大きな騒ぎになったのか

そんな「2ちゃんねらーの妄想」が2020年にはアメリカの国会議事堂を一時占拠するような事件に発展してしまったわけですが、こういったミームが急速に広まる原因は「世界に渦巻く社会不安」があるのではないかと思っています。

この社会不安、2020年の場合はコロナ感染症のパンデミックによるものが大きいのですが、アメリカの場合は大統領選挙も大きな要素です。「Qアノン」はトランプ氏を支持するコミュニティーだったわけですが、どうやら2020年の選挙では対立候補のバイデン氏に負かされそうだったわけで、自分達の信奉する現職大統領が落選するかもしれないという危機感もあいまって、「Qアノン」そのものがカルト度を強めていってしまったのではないでしょうか。

「オウム真理教」が活発に活動していた1990年代後半は、オカルトシーンに蔓延していた「1999年に人類滅亡する」という「ノストラダムスの大予言」による漫然とした社会不安、そしてそれを利用して勢力を拡大したカルト宗教が蔓延していました。「オウム真理教」にしても彼らが信じる終末論をもとに彼ら自身の妄想やミームを膨らまさせ、最後にはサリンによるテロにまで手を染めてしまったのはみなさんご承知の通りかと思います。もちろん「1999年の人類滅亡」をネタに使っていた「ムー」も褒められたものでないのは言うまでもありません。

社会不安によるカルト増幅効果に注意

こうしてみると、世界全体が社会不安に陥っている現在は、さまざまなカルトが力を持つ基盤を持っている時代といえるかもしれません。

オカルトは言うに及ばず、ワクチンに対する議論や空間殺菌マスク系警察など、コロナ感染症に関するものでもいろいろなデマが日々広められ、議論を呼んでいます。様々な陰謀論やデマも広まっています。カルト宗教については近年影響力が落ちている傾向がある中で、コロナによる自粛要請によって活動に制約があるのか、それほど脅威ではないのですが、オンラインでのカルトなコミュニティには「Qアノン」に限らず警戒が必要です。

このようなときに重要になるのは冷静な心とファクトやエビデンスを重視する態度です。オカルトに関しても実生活をオカルトを必要以上に混ぜず、分離独立するリテラシー能力が必要に感じます。一見センセーショナルな言動に対して「どうしてそう主張するのか、主張の妥当性はあるのか」といったところを問い続けることが大事になってるように思います。

程度の差はあれ社会活動に制約が課されている中で、現状を必要以上に悲観しないだけの心の強さ、皮肉にも「ひろゆき」が言った名言「嘘を嘘と見抜く力」が必要になってくるのではないでしょうか(蛇足ですが今でもコメンテーターとしてメディアに「ひろゆき」が登場することがありますが、ちょっと危険な傾向だと個人的に見ています)。

「ムー」はもちろん、某オカルトメディア、某馬術団、「風の時代」とかそういったものに流されないように日々強く生きていきましょう。

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