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#87 何故うんちは出るのか?どのようにうんちを出したくなるのか?

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回お届けする内容は、腸内環境に対する素朴にして奥が深い疑問についてお答えしていきます。それはすなわち、何故うんちは出るのでしょうか?どのようにうんちを出したくなるのでしょうか?うんち=糞便を体外に排出するというのは、人の体内の恒常性を維持するのになくてはならない機能ですが、排出する方法についてはあまり考えたことがない方も多いのではないでしょうか?そんな素朴な疑問に答えていきます。

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

何故うんちは出るのか?

まずはじめに取り組む疑問は、「何故うんちはでるのか?」という点についてです。みなさんも、是非お時間があれば考えてみて下さい!皆さんが考えている間に、この疑問が浮かんだ経緯をお話します。

この疑問が浮かんだのは、友人と歩いているときのことでした。インスタグラムをフォローなさってくれている方はご存知かと思いますが、室長は長距離を散歩するのが大好きです。この前も、友人を誘って山手線を一周するという長距離散歩をしていたさなかの出来事。IHMC2022というヒト細菌叢の国際学会に参加した際に、プレバイオティクスが試供品として配られていたので受け取り、散歩当日に飲んでみました。すると、お腹の調子がかなりよくて、散歩の合間合間にトイレに立ち寄る事がありました。そこで、そもそもうんちはどうして出したくなるのか、といった疑問が浮かんだのです。すぐさま専門の友人に尋ねると共に、帰宅後に調べてそのメカニズムを知ることができました。

はい、ということで疑問が浮かんだ経緯のお話でした。みなさんは、何故うんちがでるのか?という疑問に対する自分なりの答えを得られたでしょうか?それでは先に進みます。

何故うんちがでるのか。それはズバリ、ヒトという恒常性維持機能をもった生物だからです。雲をつかむような答えですね。恒常性維持機能をもつということは、個体の体内を外界の変化に対して一様に保っておく必要があります。

そこで、エネルギーを食物などから摂取し、代謝し、要らなくなった細菌や細胞は体外に排出されます。うんちによって老廃物が排出されることがなければ、不要な物質が排出される経路は尿のみとなってしまいます。

便秘になると生活の質は下がりますし、腸閉塞になると腹痛や嘔吐などを伴います。ヒトは適切な排便ができなければ、健康な生活を送ることができません。

ヒトを消化管が内側を通る管、ちくわのような存在であると捉えるのであれば、上からものを入れる限りは下から出す必要があるのです。

ここまでは、なんとなく考えつく答えなのではないでしょうか?では、どのようにしてヒトはうんちに行きたくなるのでしょうか?

どのようにうんちを出したくなるのか?

では、うんちが腸内に貯まり始めたところからお話を始めます。つまり、そろそろうんちを体外に排出しないといけない状況を仮定します。以下、うんちを糞便と呼びます。

まず、糞便が結腸にて形成されると、次に向かうのは直腸です。腸の構造については#75で詳しく解説しているので、気になる方はこの後是非チェックして下さいね。さて、直腸へ糞便が送り込まれると、直腸内圧が上昇します。つまり、糞便が直腸の内壁を外へ押しやるのです。

直腸内圧の上昇に伴い、直腸壁が伸展します。糞便の圧迫により直腸が広がるのです。この伸展は、骨盤神経という神経を刺激します。骨盤神経は、脊髄の一部である第3-4仙髄に送られます。ここを排便中枢と呼びます。

ここから登場するのが、肛門括約筋と呼ばれる、肛門を閉じる働きのある筋肉です。随意的に動かせる横紋筋からなる外肛門括約筋、随意的に動かせない平滑筋からなる内肛門括約筋が重要です。

排便中枢からの脊髄反射=排便反射によって、意識とは関係なく=不随意に内肛門括約筋が弛緩します。これは、糞便を体外に出す第一歩です。内肛門括約筋が緩むことで、糞便が外へ出やすくなります。

また、排便中枢からの排便反射により蠕動が促進し、糞便を直腸側へ押し出します。これも反射であり、不随意です。反射的に糞便が大腸によって移動され、直腸の糞便を押し出そうとするのです。

でも私達には、外肛門括約筋が残っています。こちらは、随意的に動かせる肛門括約筋。糞便が、外の世界へこんにちはしそうになっても我慢できるのは、外肛門括約筋のおかげです。

排便中枢へ届いた刺激は、脳にも到達します。ここではじめて便意を生じる、つまりトイレに行きたくなるのです。トイレに到達すると、私達は脳からシグナル伝達をおこない、遠心性骨盤神経を会して外肛門括約筋を弛緩=緩めます。最後の砦を開くのです。さらに、腹筋に力を入れることで腹圧を上昇させて排便を促進します。

以上のプロセスを経て、ヒトは排便を達成するのです。

精巧に作られた排便の仕組み

排便に関連する一連のサーベイを終えて、室長は感動しました。まだまだ知らない人体の凄みがあるなあと。今回のお話を復習すると、排便を調節するのは2種類の経路があり、排便反射による内肛門括約筋の弛緩と、随意的な外肛門括約筋の弛緩により達成されます。

ちなみに、サンプリング・レスポンスといって直腸に到達した内容物が、ガスか、固体か、液体かを認識して反射を変化させるといった仕組みもあります。これもまた、神秘ですね。

今回は、腸内環境の基礎的だけど深い疑問、どのようにうんちを出したくなるかについて答えてみました。

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