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#95 細胞膜の構造。Part2: リポソームから細胞膜へ。

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードは、前回に引き続いて細胞膜の構造についてお話していきます。細胞膜は、動物、植物、細菌に関わらず普遍的にみられる構造です。膜構造は、いわば生命を成り立たせる上で必要不可欠ともいえます。細胞膜を理解することは、結果として腸内環境を構成する腸管や腸内細菌を理解することにもつながることから、腸内環境を理解するための基礎知識として位置づけています。

前回は、分子の極性から自己組織化についてお話しました。今回は、自己組織化により生じるリポソームから細胞膜までのお話をしていきます。

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

リポソームの復習

まずは、前回のエピソードの後半にてお話した、リポソームの復習から始めます。リポソームは、リン脂質の自己組織化によって形作られる構造で、細胞のように球状の構造体です。

前回のエピソードでは、球状や層状までと言及してしまいましたが、正確には球状のみで、層状に成るのは脂質の自己組織化により生じる構造でした。すみませんでした。

では、リポソームの膜構造は、どのようになっているのでしょうか。実は、細胞膜と瓜二つで、脂質二重層により構成されています。すなわち、リン脂質分子が2層重なったような膜構造を取っています。

細胞とリポソームの違いは、細胞には脂質二重層に膜タンパク質、膜の中身も存在するのに対して、リポソームには存在しない点にあります。膜構造としては極めて似ているので、細胞膜の研究にも用いられたりします。

では、リポソームとほぼ同一の膜構造をもつ細胞膜について迫ります。

細胞膜は水の助けで成り立つ

細胞膜は、リン脂質によって構成される脂質二重層からなります。リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどが含まれます。二重層の内側と外側では、リン脂質の構成が異なることが知られています。

では、具体的に二重層ではどのように分子が並んでいるのでしょうか。ここでは、リン脂質を2つの部分に分けて考えます。リン脂質のリン酸、つまり水に馴染みやすい極性のある分子構造と、脂質、つまり水に馴染みにくい非極性構造によりなります。リン脂質には、水に馴染みやすいところと馴染みにくいところが共存していると考えて下さい。

ここで、二重層は、大きく分けて3つの異なる領域によって考えることができます。まずは、細胞の外側を向いた部分です。ここには、リン脂質の中でもリン酸が頭をだしています。なぜなら、細胞の外側は水で満たされており、脂質が頭を出すよりもリン酸が頭を出すほうが水との親和性が高いためです。渋谷のスクランブル交差点、朝の満員電車に例えるなら、上から人の頭を見た時の頭に、リン脂質のリン酸が相当します。

続いては、細胞質と隣接する、内側の部分です。ここには、細胞の外側同様に、リン脂質のリン酸が頭を出しています。ただし、先程登場したリン酸は二重層の外膜側であるのに対して、今回登場したリン酸は二重層の内膜側にあるものを指します。細胞の内側にも水が沢山存在するので、やはり水と親和性の高いリン酸部分が頭を出しています。

最後に、二重層の脂質膜の間の領域です。ここには、2層のリン脂質膜の脂質側がお互い向かい合って存在しています。脂質部分がお互い向き合っているのは、細胞の内界と外界を満たす水分子から逃げてきたためです。ここに、細胞膜構造が安定的に存在する所以があります。

水に満たされた環境が存在し、そこにリン脂質を落とすと、リン脂質の脂質部分は居場所をなくしてしまいます。そこで、リン脂質でお互いに凝集して、球状の構造を作るのです。この単純な構造をミセルと呼びます。リン脂質の脂質を内側、リン酸を外側にした球状の構造です。

ここからさらに、ミセル内に水が入ると、リン脂質は居場所をなくしてしまいます。そこで、リン脂質が二重層を取ることによって、構造の内部にも水を蓄えられる様になるのです。水なくしてリン脂質二重層は成り立ちません。

流動モザイクモデル

ここまでに、細胞膜の成り立ちについてお話してきました。細胞膜には数々の膜タンパク質、糖タンパク質、糖、糖脂質(リポ多糖)など様々な部品が埋め込まれています。いや、埋め込まれているというより、脂質二重層の海に浮かんでいます。というのも、リン脂質同士は共有結合をしているわけではなく、あくまでも互いに極性が似た者同士で集まっている、凝集しているに過ぎず、リン脂質の位置関係は刻一刻と変化しています。

つまり、スクランブル交差点の人が動いていくが、そこには常にたくさん人がいて同じ風景に見えるのと同じように、細胞膜も常に脂質が移動をし続けている動的な存在なのです。そこに埋め込まれた膜タンパク質などの部品も、動くことが出来ます。そんな、曖昧で柔らかな構造が、私達の細胞、そして体になっていると思うと、不思議に感じませんか?

このような、細胞膜の動的な様子を説明するモデルは、流動モザイクモデルと呼ばれています。

リポソーム、細胞膜、流動モザイクモデルのお話はいかがでしたか?細胞膜は、実は曖昧な構造であり、その上に数々の部品が浮かんでいるという景色が共有出来ていたら、今後の腸内細菌相談室の内容が、よりクリアに伝わると思います!

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