読書メモ 『錯覚の科学』第一章 注意の錯覚

クリストファー・チャブリス, ダニエル・シモンズ『錯覚の科学』文春文庫

一章 注意の錯覚

• 袋小路にはられたフェンスを越えようとする黒人強盗の後を黒人の私服警官マイケル・コックスが追った。彼は後から来た警官に犯人と間違われて暴行を受けた。ケニー・コンリーは、犯人の乗り捨てたレクサスから12mのところに停車し、犯人がフェンスの反対側に落下し、逃走する姿を目撃。自分もフェンスを越えて1.5kmほど追いかけて犯人を逮捕した。コンリーはコックスがフェンスから引き摺り下ろされたと同時に犯人追跡をはじめ、コックスが殴打されている横でフェンスにのぼった。そして、コンリーはコックスの暴行を見ていないと証言し、偽証罪と法廷侮辱罪で起訴された。

•被験者に バスケ試合のフィルムを見せ、白シャツの選手がバスケの回数を数えてもらう。ゴリラが横切っても半数の人は気づかない。この見落としは予期せぬものへの注意力の欠如で"非注意による盲目状態"と呼ばれる。
参考:https://youtu.be/vJG698U2Mvo

• アメリカの成人へのアンケートでは75%の人が、例え別のことに集中していても自分は予期せぬ出来事に気づくと答えた。

• 「アイトラッカー」で眼球の動きを調べたところ、ゴリラを見落とした被験者も気づいた被験者もゴリラに視線を向けていた時間は同じ。平均1秒。「目は向けていても見えていない」

• バイクは自動車運転手にとって予期されておらず事故ることが多い。バイクと自動車の事故62件を調べ、自動車運転手がバイクに乗ったことがあるのは皆無。バイクはゴリラ

• フライトシミュレーターを使い「目は向けていても見えない」状態を示した実験では飛行時間一千時間以上のパイロットたちに、目指す滑走路に侵入する巨大なジェット機を表示したが何人かは見落とした。このような事故は”たまに”起きるが、”たまに”しか起きないのでパイロットにとって予想外となっている。ゴリラ

• 電話をにぎりながら運転する行為はさほど認知能力を必要としない。ハンズフリーの電話でも注意力に対する影響は変わらない。脳の中で注意力が必要なほど、それぞれの作業の質は落ちる。限りある認知能力を通話に奪われることが問題であり、それを握ることが問題なのではない。

• 電話をしながらパスを数える実験、想定外のものを見落とす率が3倍に。しかし、パスを見落とす能力は損なわれなかった。

• ゴリラの実験では、ハーバードの学生とそれほどでもない学生の間で気づく能力に差はなかった。また、男女の間でもマルチタスクの能力に差はなかった。また、注意力と気づく能力に関係は見られなかった。バスケの選手はゴリラに気づく割合が高く、ハンドボールの選手は低かった。

• 人は、予期していれば気づきやすいものと、予期していなくても気づくべきものを混同しがち。

第二章 記憶の錯覚へつづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?