読書メモ 戸田山和久著『科学哲学の冒険』第二章 まずは、科学の方法について考えてみよう

科学のユニークな性質はどこから生まれるのか
1.科学は新しくて正しいことを言うように見える。なぜか
2.どんなに理論的でも、決して経験という足場から離れてしまうことがないように見える。なぜか

ベーコンは『ノヴム・オルガヌム』のなかでスコラ学者(アリストテレス主義者)と錬金術師を批判し、科学には理論と経験のバランスが大事だとした

演繹の種類(正しいことをいうが新しいことは言わない)
・三段論法
 すべてのAはB、すべてのBはC、したがってすべてのAはC
・モードゥス・トレンス
 AならばB、Bでない、したがってAでない
・モードゥス・ポネンス
 AならばB、Aである、したがってBである
前提が真なら結論も真になる演繹を妥当な演繹と呼び、この性質を心理保存性という
前提がすべての真で結論が偽になる例を演繹の反例という

帰納法の種類(新しいことをいうが正しいとは限らない)
・枚挙的帰納法
 これまで見たカラスはみんな黒かった。だから、次に見るカラスも黒いだろう。
・アブダクション(最良の説明への推論)
 太陽系外縁天体の軌道の傾きから海王星の外に未知の惑星(Planet Nine)が存在するはずだ
・アナロジー
 二つの質量の間に働く引力は距離の二乗に反比例する、だから二つの電荷の間に働くクーロン力も距離の二乗に反比例するはずだ

仮説演繹法
19世紀にはこれこそ科学的手法だと思われていた
帰納によって仮説をたて、演繹によって予言を導く
実験や観察によって予言を確かめる
予言が当たったら「検証された/確証された」という
外れたら「反証された」という

電磁場とかクオークとかニュートリノとか病原体とかを理論的対象と呼び、理論的対象を指している言葉を理論語という。対して、メーターの針とかリトマス紙の色とかを観察語という。

理論実証主義
「直接に真偽を確かめることができる文は観察文に限られる」とした
メーカーが10を示している、さえ観察文から除外し、赤が見えているなど文のみを観察文とした
これらの感覚のことを感覚所与とかセンスデータと呼ぶ
さらに、意味のある文は検証可能な文、観察不可能な文は無意味という意味の検証理論を提唱
理論文は観察文と対応規則によって結びつけられることで意味のある文になるとする
実際の研究では予言に理論語が含まれてしまうが、対応規則によって書き下せば全部観察文に置き換えられるという

(もともと実証主義はサン=シモンやコントの取った立場。強い経験主義(すべての知識は経験にルーツをもつ)、反形而上学(経験的事実の背後に超越的原理や仮説的実体を想定しない)という立場を取った。エルンスト・マッハは我々が直接にアクセスできるのはセンスデータだけで科学の目的はセンスデータの関係を簡潔に記述することにあるとした)

科学的言明の証拠も意味もルーツに感覚があるというのが経験主義のキモの部分

感想:本書では実証主義はやや批判的に扱われている。たぶん実証主義は古い理論で現代の科学とはかけ離れてしまっているのだろうなと思った。論理学や集合論が発達した時代の学問的雰囲気がそのままに反映されているのではないかなという雰囲気を感じた

第三章ヒュームの呪いへ続く

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