暗転

「暗転時間」の使い方

昔、舞台演出の駆け出しだった頃、師匠に「暗転」の使い方を教えて貰ったことがあります。

「暗転」は、単なる場面と場面のつなぎではなく、話の流れを整理したり、考えたり、あるいは心を落ち着かせて貰うために使うんだよ、と。
だから、なるべく話の流れを切らさないように長すぎず、思考を邪魔しないようにスムーズにすること。というものでした。

人生に置き換えて考えてみると、突然暗転になる「真っ暗」になるという場面なので、前触れもなく真っ暗になってしまったら、「ちょっと待って」「暗くてなにも見えないんですけど」「どうしよう、右ってどっち?」みたいな状態に陥ることにもなるわけで、人生の暗転はあまり好ましくはないような気もします。
けれど、人生には「暗転」のような、間を置くような時間が訪れることがしばしばあります。
分かっていたら「あぁ、暗転になっちゃったなぁ」と、暗転も怖くはなくなります。が、ほとんどの場合、そんなことはなく、突然「暗転」が訪れます。
人は、突然にはとても弱い生き物です。
ですから、焦って動いては壁にぶつかって怪我をしたり、迷子になってみたりするものです。

たとえば、
突然の病、失恋、親の失業やリストラや災害なども人生に突然訪れる「暗転」と言えます。

この文章を打ちながら、私はこの突然の「暗転」を何度も体験したことに気づきました。
あの頃「あぁ、暗転の時間が来たな」と分かっていたら、むやみに動かずにいたかなぁと思いますが、どうでしょう。
血気さかんな若い頃は、わかっていてもむやみに「ちょっとーーー、見えないんですけどーーー!」と大きな声を出しながら、暗闇で動き回っていたかもしれません(笑)

「分かる」
「分かっている」

ということは、心構えがある程度出来ているということ。
心構えがある。
ということは「対処ができるということ」です。

暗がりも、その場に目が慣れてくれば周りがぼんやり見えてくるものです。
舞台では、役者が転ばないように「蓄光(チッコウ)」という、暗闇で光るテープを小さく切ったものが、目印に貼ってあります。
演劇を見に行く機会があったら是非、見つけてみてください。

そして、人生に「暗転がやってきたな。」と思ったら、
是非、しばらくはその場で目をこらし、
耳をすませ、周りの様子をようく探ることからはじめてみてください。
きっと、あなたにしか見えない「蓄光テープ」が見えてくるはずです。

そしてもう一つ。
「暗転」は場面転換の時間。物事を新しく始める、見方を変えるチャンスだということを覚えておいてくださいね。

では、また。

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