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映画館よ、永遠なれ

どぉ……ん

どお……ん

どどぉ……ん


鼓膜を震わせ、腹の底に響く低音。
目の前に迫りくる光。

やっぱり映画館の醍醐味は、これだ。


先日、じつに半年ぶりに映画館に出かけた。
もともと映画ファンなわけではないけれど、やっぱり映画館で見たい映画はある。
映画館が営業を再開して、これほど嬉しいことはない。

コロナ禍によって映画業界も多大な影響を受けた。
公開が先送りになった作品もたくさんあるし、年明けに始まっていて見ようと思っていたものが、公開終了になってしまったりもした。
仕方がない。
仕方がないけど、残念は残念だ。

「三密」を避けるように、といわれれば、映画館も大変だよなあと思う。
いま再開している映画館は、大抵が前後左右ひと席空けた配置になっていて、入り口での検温や消毒はもちろん、上映後に座席の消毒もしているようだ。
スタッフのみなさんは大変だろう。

ところで、コロナが騒がれはじめたころから言われていたことだが、映画館はもともと換気システムが優れている(というか、そうでないと開業できない)らしい。
そのため、「閉鎖空間」「密閉した空間」にはあたらないとのことだ。
確かに大昔の映画館はともかく、いま都内にあるシネコンで、見ているうちに劇場内に匂いが篭ったり息苦しく感じたり、ということはない。

さらに、これは最近のニュースで読んだのだが、全員が一方向を見て声を出さないし動かない映画館では、席の間隔を空けるという対策はほとんど意味がないそうだ。
咳をしたときなどの対策でマスクの着用をし、隣の他人と手が触れないように肘掛を使わないなど(これは今までもそうしている人が多いだろう)、その程度の対策ですむらしい。
まあこの辺は、賛否両論あるだろうなとは思うけれど。
できることなら、映画館も空席を作ったりチケットの発売を当日のみにしたりしないで、存分に集客してほしいものだ。

そんなことをツラツラと考えながら、先日映画館に行った。
営業再開直後の今、映画館で上映している作品の半分以上が、過去作の再上映だ。

再上映。

最高じゃないか。

そんなわけで、この間うっかりハマってしまった「シン・ゴジラ」を見に行ってしまった。
(うっかりやらかした時の記事はこちら)

やったぜ。

あれ、大画面で見てみたかったんだ。


無料で動画配信しているものに、わざわざお金を出すってどういう神経だ、という人もいるだろう。
たしかに、これが無料動画じゃなくて有料動画で見るのだとしたら、ちょっとどうだろう、とわたしも思う。

だが、映画館というのは、動画視聴とは全く別の娯楽なのだ。


コロナの自粛中、いろいろな動画配信サービスや舞台芸術関連が、無料の映像を公開していた。
わたしが追いかけていたのは、アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカルだったり、ナショナルシアターだったり、ロイヤルオペラだったり、シェイクスピア・グローブだったりと、まあイギリスものが多かった。
過去の上演映像とはいえ、そもそもDVDにもなっていなかったり、日本でライブヴューイングをしていないような作品なのだ。
無料で観れるなら、見ない手はないだろう。

そう思っていたのだが、結局見られた映像は、予定の半分以下だった。

無料だし時間もあるのに、「その時間にパソコンを開いて集中する」ことが、とてつもなく難しかった。
気がつくと開始時間が過ぎていたり、見はじめたのに途中で眠くなったり、うっかりゲームをしていたりと、とにかく作品に集中できない。

似たような経験をした人も、きっといるだろう。

チケットを買って観に行っていれば、そんなことには絶対にならない。

あの高額のチケット代は、自分の時間と意識と場所を確保するための、必要な経費だったのだ。

だとすれば、やはり映画館だ。

映画館だって、同じものを提供してくれる。
つまり、わたしの時間と、集中力と、いい席といい音響といい映像を提供してくれるのが映画館だ。
やっぱり好きな作品は、映画館で見たい。


どぉ……ん

スクリーンに映された「東宝」の文字とともに、低い地鳴りが響き渡る。
ゾクゾクする。

上映がはじまると、あっという間に世界に引き込まれた。
視界がすべて映像で占められるというのは、最高だ。
余計な情報が一切入らず、物語に集中できる。

そしてなにより、大画面用に作られた映画は、大画面で見てこそよさがわかる。

カマタくんが進化するときの皮膚のざわめきが、最高に気持ち悪かった。

ホワイトボードに書かれた細かい文字も読める(意味はわからない)。

ヤシオリ作戦決行時に、矢口さんのそばに立っている自衛隊員の名前が「土方」さんと「伊達」さんだったけど、その名字にはなにか裏設定でもあるのだろうか。
それとも、出演者の本名なのだろうか。

撮影協力にキングジムがあった。
わたしもいつもお世話になっています。

設定が詰め込まれた作品ほど、大画面で見ると与えられる情報量が上がる。

映画そのものも最高だったし、やっぱり大画面高音質というのは受ける刺激が違う。
見終わったあと、ものすごい充足感を得た。
久しぶりの感覚だった。

ありがとう映画館。
ありがとう映画館で働く人。
ありがとう再上映を許可してくれた制作会社の人。

こんな感じで、過去の良作を再上映する映画館が増えればいいなあと思う。
好きな映画だったら、絶対見にってしまうから。


(追記)
ここまで書いて、「ジブリ4作品上映!」のニュースが飛び込んできた。
6月26日より、3週間の上映らしい。
「千と千尋の神隠し」は映画館で見た記憶があるけど、「ナウシカ」が見れるなんて!
当時よりも格段によくなった画面と音響でナウシカを見られる日が来るとは、思っても見なかった。

絶対に観にいこう。

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