「きのう何食べた?」たいしたものじゃないけど
みなさんはきのうの夜、何を食べましたか?
わたしは松屋の牛鍋半玉(単品)でした。
おいしかったです。
昨年ドラマ化して大ヒットした「きのう何食べた?」、みなさんはご覧になったでしょうか。
原作は、よしながふみのマンガ『きのう何食べた?』(2007年~)です。
わたしは3年前くらいにハマりました。
わたしねぇ、この作品がすごく好きなんですよ。
だからドラマも好評で(結局1話しか見れていませんが)、とてもうれしいです。
この作品、一言でいうと、
普通
です。
登場人物も普通、出てくる料理も普通、出来事も普通。
普通、普通、普通、のオンパレード。
シロさんもケンジも、普通にその辺にいそうな人です。
そしてわたしは、この作品がどこまでも「普通」なのがいいんだなぁと思います。
ドラマもマンガも見ていない方に簡単に説明すると、この作品は、
・シロさん:43歳弁護士
と
・ケンジ:41歳美容師
のカップルの日常を、料理を軸に描いています。
日々の生活、そしてごはん。
それだけ。
登場人物も普通の人たちばかりです。
シロさんは仕事のやりがい<<<<定時上がりな弁護士で、日々の楽しみは、スーパーで安い食材を買い込んでやりくりしてご飯を作ること。
ケンジは地元のおばさまおばあさまに大人気の美容師で、シロさんのこともシロさんのご飯も大好き。
シロさんの料理友達の佳代子さんは、定年になった旦那や結婚した娘のことが気にかかるし、ケンジの店長のヒロちゃんは、浮気性で奥さんに愛想をつかされるし。
ゲイ友達の小日向さんとジルベール、シロさんの事務所の人たち、ケンジの職場の人たち、それぞれの家族。
みんな人がよくて、自分の生活が大事で、うまくいかないこともあるし、いい思いをすることもあります。
適度な距離感で関係性を築いていて、それが心地よかったり居心地が悪かったりもします。
ものすごくありきたりな人間関係。
シロさんと佳代子さんの出会いからして、スーパーの安売りスイカを半分こした仲、だし。
「主人公の成長のための要素」ではなくて、あくまでも、たまたまシロさんやケンジの生活に縁があっただけで、彼らにはそれぞれの日常があるんだという描写が、読んでいて心地がいいのです。
人だけではなくて、料理も普通です。
間違っても呪文料理ではありません。
シロさんの旬の食材(=安い)を使ったメニューは、見ているだけでもおいしそうで、各話に簡単なレシピも付いているので、実際に作ることもできます。
わたしも何度か作っていますが、美味しいですよ。
レシピ本としても優秀です。
作る料理は、人によってそれぞれです。
シロさんの栄養と味のバランスに気を付けた、スーパーの普通の食材と調味料を使った料理。
ケンジがひとりのときに作るラーメンやかつ丼。
佳代子さんの主婦の知恵と適当さが光る天ぷらや焼き肉。
小日向さんのこだわりの調味料を使ったパーティー料理。
どれもこれも美味しそうで、読んでいると帰りにスーパーに寄りたくなります。
献立の参考にもなりますしね。
……ただ、40代男性の食卓は、そのまま自分に適用するのは難しいですが。
とはいえ、1巻のころのメニューはがっつりですが、最近のものはあっさりしたものが多くあります。
なぜかというと、作中でみんな年をとったからです。
2019年12月発行の最新刊(16巻)では、
・シロさん:52歳
・ケンジ:50歳
実に9年の作中時間が経っています。
現実より多少ゆっくりとはいえ、読者の体感と同じくらいでしょうか。
9年の間に、いろんな変化があります。
がっつりメニューた食べられなくなったのも、その一つです。
シロさんのクライアント(男性)にいちいち嫉妬していたケンジは、シロさんに大切にされていることを実感するようになるし、
ゲイっぽい行動が大嫌いだったシロさんは、ケンジの好きなおしゃれ系カフェに一緒に行くようになるし、
お互い仕事での責任は増えるし、家族との距離の取り方もうまくなるし。
「お互い、年をとったなぁ」というような、ありきたりな変化を、じわじわと感じられます。
普通の人たちが、普通に料理をして、普通に年をとっていく。
仕事や人間関係のちょっとした事件は、本人にとっては一大事でも、やっぱりありきたりの内容だったりします。
そういった普通のできごとを通して、その人の人生に共感したり驚いたりする、それがこの作品のよさなのかなと思います。
あとは、料理がメインの作品なのに、別に料理は事件を解決しないんですよね。
美味しい食卓を囲みながらケンカもするし、仕事でツイていなかった日に料理がうまくいってもやっぱり気分はあがらないし、美味しいごはんができただけで一日ハッピーだったり、みんなで食べるごはんが楽しくて食べ過ぎちゃったり。
日常に影響はするけれど、ごはんはごはん、というスタンスなので、読んでいると、「まあとにかく、ごはん食べようか」という気持ちになります。
なんだかありきたりな感想になってしまいましたが、普通でありきたりなのも、『きのう何食べた?』っぽくて、まあいいでしょう。
さて、明日はなにを食べましょうか。
放っておいても好きなものを紹介しますが、サポートしていただけるともっと喜んで好きなものを推させていただきます。 ぜひわたしのことも推してください!