マスク

人を自由にするマスク


のっけからマジメな話をするが、ジェンダーのステレオタイプについて、気に留めることは日常でどのくらいあるだろうか。

冬になると、わたしはマスクを通してジェンダーを考える。

コンビニやドラッグストアのマスクコーナーには、大きいサイズと小さいサイズが置いてある。
そして、小さいほうはたいていピンクだ。
なぜか。

小さいほうは女性用だからだ。

わたしはピンクも好きだから、ピンクのマスクを「女性用」として売り出されても、特に困らない。
むしろ、青いマスクは医者みたいで日常ではつけたくない。

でも、男女とも使用する商品で、女性用が判を押したようにピンク一色だと、

「これ作ってる会社、会議の決定権があるのはおじさんばっかりで、若い女性社員にセクハラ発言かましているんだろうな」

という偏見にまみれた感想を抱いてしまう。


あるいは女性向けの日用品で、バラかレースかハートかリボンが散らしてあると、

「この会社、女性向け商品を作っているくせに、女性社員には発言権も決定権もないんだろうな」

と思ってしまう。
偏見だけど。

実際のところ、どうなんだろう。


マスクといえば、昨年からPITTAという商品を使っている。
高性能ポリウレタンでできたマスクで、これがとてもいい。

メガネが曇らないのと、息が苦しくないのだ。

メガネが曇らないマスクがある、と聞いて、半信半疑で試したわたしは、今ではすっかりPITTAのファンになってしまった。

メガネが曇らないだけでなく、あの針金入りの紙のマスクでは防げない、上部からの空気漏れがないのだ。
おかげで目の下の肌が乾燥したり、目が乾いたりすることがない。
メガネを使うかどうかにかかわらず、最高のマスクなのだ。

そしてPITTAは、パッケージもおしゃれだ。

「花粉99.9%カット!!」「ウイルスを防ぐ!」といった文字がでかでかと飛び交うパッケージが主流の売場の中で、「PITTA」の文字とマスクのシルエットのみというシンプルなデザイン。

「日常使いの商品こそ、スタイリッシュであるべき」というポリシーを感じる。

そして、無駄のないデザインは最高のパフォーマンスを秘めているのだ。


しかしながら、わたしには若干の不満があった。

日本の日用品の商品パッケージのセオリーに反しているPITTAが、あの高性能とおしゃれを兼ねそろえたPITTAが、

「Sサイズが出ているのがピンク系」

ということに。

ドラッグストアでは、PITTAは黒やグレーなどのモノトーン系、ベージュや白のナチュラル系の色の展開がある。
それなのに、Sサイズはピンク系でしか置いていないのだ。


少しがっかりしつつ、しかし男女格差が底辺の日本では、仕方がないのかと思った。


それでも商品の性能がいいのは事実なのだ。
その事実を推そうじゃないか、と思って、この記事を書くために、初めてPITTAのサイトを開いた。



そこに現れたのは、14色展開のマスクと、スタイリッシュなモデルたちだった。


一瞬、アパレルブランドのサイトを開いてしまったのかと思った。

画面には色の名前が並び、カーソルを合わせると、その色のマスクをしたモデルが現れる。
マスクと服の色の一部がそろっていて、かっこいい。

驚いたのは、グレーやカーキのマスクに女性モデルが充てられ、ピンクやラベンダーに男性モデルが充てられていることだ。
(あとから確認したところ、各色に男女ひとりずつモデルがいて、交互に表示される。)


ピンクのマスクをつけた男性は、おしゃれだった。
ラベンダーのマスクをつけた男性は、かっこよかった。
カーキのマスクの女性は、意思が強そうだった。
グレーのマスクの女性は、自然体だった。


誰もが、自分の好きな色を身に着けていいのだと、はっきりと伝えていた。

女性が暗い色のマスクをつけるのに、ロックっぽかったりゴスロリである必要はなく、
男性が淡い色のマスクをつけるのに、チャラかったり中性的である必要はなかった。

その日の服に合わせて、気分に合わせて、好みに合わせて、好きな色を着けてよかった。


ベージュ以外のすべての色に大きいサイズと小さいサイズがある。
キッズサイズだけの色もあって、元気なビタミンカラーが目に鮮やかだ。


社会が、昔の価値観が押し付ける、「女はこの色をつけろ」「男はこの色を使うな」「子どもは明るい色だけ」という枠など、そこには存在していなかった。

そのことを、サイトを見て初めて知ることができた。


日本の日用品は、ようやくここまで自由になったのだ。

わたしは自分でピンクを選んで、身に着けられるのだ。
その日の気分で、紺を選んでもいいのだ。

選べることが、こんなにうれしい。


翻って、ドラッグストアの売り場を決めるのは、仕入れ商品を決めるのは、結局「おじさん」なんだろうか。
PITTAの全セレクションを扱っているお店は、どこにあるのだろうか。
モノ作りが人を自由にしようとしても、人が自由を制限する。

願わくば、モノ作りもモノ売りも、人を抑圧から解き放つものへと、変わっていってほしい。


PITTAの公式サイトはこちら。

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