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クリスマスはオレンジの香り

“オレンジポマンダー”

この見慣れない言葉を、ルピシアのクリスマスティーのセレクションの中にみつけました。
ルピシアは、紅茶をはじめ日本茶、中国茶、ハーブティーを扱うお茶の専門店で、特にブレンドティーやフレーバーティーの種類の多さで有名です。季節ごとのフレーバーや、地域限定のフレーバーも豊富で、ちょっとした手土産や旅行のお土産にも便利なブランドです。

さて、この“オレンジポマンダー”、ルピシアのアイコンでもある丸い銀の缶に、オレンジ色の豹があしらわれたデザインで、なかなかオシャレです。
テスターをかいでみると、さわやかな柑橘の香りと、暖かみのあるスパイスの香りがしますお

あ、これは。

思い当たる節がありました。
これは、イギリスの伝統的なクリスマスティーの香りです。

紅茶の国イギリスには、特徴的な紅茶がいくつもあります。代表的なものは、“アールグレイ”でしょう。茶葉にベルガモットとオレンジピールで香り付けしたものです。香料のみか、花びらやピールも入れるのか、はたまた茶葉の種類などはメーカーによりますが、“アールグレイといえばこれ“、という共通認識ができあがっているフレーバーです。
グレイ伯爵に由来するとされるこのフレーバーは、今やどの紅茶メーカーでも扱っているほどに普遍的な紅茶になりました。

同じように、イギリスでは”クリスマスティー“といえば、ほとんど必ずオレンジとクローブの組み合わせです。わたしもイギリスにいるときは、毎年このフレーバーを買っていました。日本でも同じようなクリスマスティーをよく買います。

ルピシアで香りを試した紅茶は、確かにわたしのよく知るクリスマスティーの香りを纏っていました。
でも、なんで名前が”クリスマスティー“ じゃないんでしょうか。ルピシアには、他にもクリスマス限定のフレーバーがあるので、そのせいでしょうか。

”オレンジ“はともかく、”ポマンダー“ とは。

そんな疑問は、ググったらすぐに解けました。
”オレンジポマンダー“とは、イギリスでよく見かける、クリスマス時期のオーナメントだったのです。
売ってもいますが、簡単に作れます。オレンジをリボンで吊るせるように縛って、クローブを表面に刺したらできあがり。クローブは、表面にびっしりでも、柄にしてもいいです。
それをそのまま、乾燥して風通しのいいところにぶら下げておきます。イギリスだと、フレッシュな状態で室内に吊るしておいても、いい感じに乾燥しますが、日本では陰干ししてある程度乾かしたほうがいいような気がします。
全体が乾くと、オレンジの甘くてさわやかな香りと、クローブのちょっと刺激的な香りが数年持つそうです。

話が長くなりました。

その冬の風物詩であるオレンジポマンダーが、クリスマスティーの香りの由来だったのです。そして、ルピシアの紅茶には、オーナメントの名前がそのままついていたのでした。

一つの疑問が解けたところで、もう一つ気になることが出てきました。

”ポマンダー”とは、一体何なのでしょうか。
オックスフォード英語大辞典なら、この言葉の起源を長々と説明してくれるのでしょうが、手元にないので、Google先生に聞くしかありません。参考にしたソースは2種類だけですが、おおむね以下のようなことがわかりました。

ポマンダー(pomander)はムスクとアンバーグリスを球状にした香料そのもの、あるいはその香料を入れる球状の装飾品を指します。ヨーロッパで中世から使われはじめ、絵画でも、主に女性が腰のベルトやネックレスから鎖を垂らした先に、球状の飾りをつけているのがみられます。
17世紀ごろになると、ポマンダーはクローブなどのスパイスを刺したオレンジやリンゴになり、やがてこれはクリスマスの風物詩として認識されるようになりました。人々は、クリスマスや新年の贈り物として、ポマンダーを交換するようになったそうです。
ポマンダーという名前は、フランス語のpomme d'amber(琥珀のリンゴ)ないしpomme d'ambergris(アンバーグリス/龍涎香のリンゴ)から来ています。
(wikipedia: "pomander", https://en.wikipedia.org/wiki/Pomander , 
Jane Austen Centre:https://janeausten.co.uk/blogs/hands-on-crafts/cloved-orange-a-regency-pomander)

ということで、何をきっかけにしてオレンジになったかはともかく、クリスマスの風物詩としてはこの200年ほどで根付いた文化のようです。案外新しいですね。もしかして、クリスマスツリーにぶら下げる球状の飾りも、ポマンダー由来なのでしょうか。香りのほうも、形の方も、いつのまにかクリスマスには欠かせないものになっていったようです。

キリスト教の歴史の浅い日本では、クリスマス商戦をはじめ、イエス・キリストの降誕とは縁もゆかりもない祝い方がされていますが、イギリスやヨーロッパでの祝い方も、存外聖書とは関係がないものだなあ、とおもしろくなりました。
文化としての宗教行事については賛否両論あることでしょうが、わたしはというと、クリスマスを本来の意味で祝う気持ちがあれば、形式はなんでもいいと思うのです。それよりも、それを行うことによって”祝っている”という気持ちがはっきりすルコとの方が大切ではありませんか。


オレンジポマンダーから話がかなり流れてきました。
ルピシアでは、ほかにも美味しいクリスマスの紅茶がたくさん並んでいます。ぜひ自分のお気に入りを選んで、そしてクリスマスを祝ってほしいと思います。

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