最後のひとつまえ【カミーノへ行こう:本編その34】
本日の歩行:21キロ、5時間20分
今日は20キロちょっとだ短いぞ!
と思う時点でもう脳みその一部がおかしくなっている。
そのくせ、宿をさがすときに「中心部から徒歩15分……ないな」みたいな思考の流れがある。
ふしぎ。
今日はぎりぎり雨が降っていない!
なんなら予報は曇りだ!
と意気込んで6:30に出発。
曇りだけど雨じゃなきゃもうなんでもいい。
そう思って歩いていたら、雲の隙間から月が顔を出した。
久しぶりのお月様。
ほんの数分の間だけど(道が悪かったから)、月光散歩を楽しむ。
そのあとだいぶ雲が晴れてきて、そんで当たりが明るくなってきた。
振り返ったら、何日ぶりかわからない朝ひが見えた。
朝日ってこんなに綺麗だったっけ。
明日は雨の予報だから、朝日が見れるのも今日が最後だよな。
最後だよな。
そう思いながら歩く。
歩くんだけど、なんだろう、数日前まで感じていた感傷とか、内面的な何かとか、もうなくなってしまって、ただひたすら歩くだけ。
なんならいつも通り、本のこと漫画のこと映画のこと舞台のことを考えている。
結局残るのはこれか。
わたしは変わらないなあ。
今日も景色がくるくると入れ替わる楽しい道だったので、牧場から草原から森の中まで、いろんな道を通る。
以前同じ宿だったルーマニア人(きのこハンター)が、雨のあとはきのこがたくさん生えてるんだよ、と言っていたので森の中で気をつけて見ていたら、そこらじゅうきのこだらけ。
はじめは写真撮ってたけど、もう見たやつだこれ、みたいになって途中から撮らなくなるくらい、きのこだらけだった。
きのこが見分けられる人は楽しいだろうなぁ。
でもきのこは素人が簡単に手を出していいものじゃないからな。
見るだけ。
見るだけでおもしろいものが、たくさんある。
昨日あたりから、町や村のあちこちに高床式倉庫みたいなのを見かけるようになった。
かなり古いものから、現役で使われていそうな新しいものまである。
なんだろうな?
倉庫にしては壁(板張り)が雑というか、隙間があるし、動物を飼うでもないし、そもそもどこから入ればいいのかわからないし。
こういうの、その土地の歴史とか生活様式を知らないといけないんだろうけど、聞く相手がいない。
スペインの他の場所では見なかったから、この地域特有のなにかなんだろう。
そういう知らないことがたくさんあって、わかればもっとおもしろいんだろうけど、わからなくてもおもしろい。
そういうのが旅のいいところだと思う。
よくわからないといえば、今日休憩していたカフェに大型バスが乗りつけてきて、おそらく遠足か修学旅行的な高校生にカフェをジャックされたんだけど、列が酷くなる前にと思って急いでトイレにいったの。
そしたら、女の子が2人並んでて、待ってたら女の子が2人出てきて。
お、個室ふたつあるのか、と思って前の子達が2人して入っていくのを見送って、「高校生って一緒にトイレ行く文化とかあったよね〜、わたしはしなかったけど」と思ってわたしの番になったら、個室ひとつだけなのよ。
え?
まじで意味がわからないんですが??
個室に?2人で入るの?最近の女子高生は???
高校生怖過ぎて急いでカフェを後にした。
そのあともひたすら歩き続けて、宿に到着したのがチェックイン開始3分前!
勝った!!
の気持ち。
荷物が届いていないのでお昼を食べに出る。
どうしようかと迷ったけど、エビのアヒージョ!!
おいしい!!
エビよりオイルがおいしい!!!
いくらでも食べれる感じだけど、さすがにお腹いっぱいになってワインで赤い顔をして帰宿。
ルーティンをおわらせ、明日の予習。
明日は最終日。
サンディアゴに到着してから、ミサに行って証明書もらって、海鮮市場にも行きたいし、もちろんシャワーや洗濯はしなきゃだし、博物館美術館いっぱいあるし、夜ごはんはお祝いだし、もう忙しい。
どうにかしてやり切らなければ。
昨日一緒だった韓国人夫婦とブラジル人カップルと一緒に夜ごはん。
メキシカン。
目当ては珍しいスタンプ。
おいしかったし楽しかった。
明日も夜ごはんを一緒に食べる予定。
楽しみ。
明日が最後かー、という感慨がまだ湧かない。
まだわかないけど、明日が最後。
最後、雨だけど。
でも楽しい1日になるといいな。
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