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上出長右衛門窯の道行

現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイディア、プロセスを上出長右衛門窯六代目・… もっと読む
月に2〜3本くらいが更新目標(絶対に1本は書きます)。現在公開している全てのマガジンがここで読めま… もっと詳しく
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#干支水滴寅

【干支水滴 寅】の道行18「物を見る力」

こんにちは。上出惠悟です。 この夏、上出長右衛門窯で絵付師の一人として働く山﨑つかさが取材を受け、その時の映像が先日公開されました。宜しければご覧ください。 石川県能美市が市内で働く若者を紹介し応援する「ゲンバ・ヒーローズ」という企画で、特設サイトにも写真などが公開されています。弊窯が取材を受ける際は私の目線から語られることが多いので、このような機会は私にとっても非常に有難いものです。山﨑は北海道出身ですが、長右衛門窯には彼女のように県外から来た若い女性が多いです。いずれ

【干支水滴 寅】の道行17「販売スタート」

こんにちは。上出惠悟です。 前回はエフゴマグの道行を柴田が書いてくれましたが、やっぱりリアルタイムにお伝えしないと多くのことは忘れてしまいますね。それでも私たちがどのような考えでマグをつくったのか、その一端は垣間見れるかと思いますので、愛用してくださってる方は是非読んでみてください。 タイトルの通り、先月末に干支水滴 寅が発売になりました。 早速ご購入くださった方、どうもありがとうございます。実際にお手元に届いて如何でしょうか?私たちにとって、製作過程の試行錯誤をそのま

【干支水滴 寅】の道行16「水滴の完成」

こんにちは。上出惠悟です。 今年の6月からスタートしたこの長右衛門窯の道行【干支水滴 寅】ですが、いよいよ今回をもって製品が完成となります。ここまでご同行頂いた皆さんには本当に感謝申し上げます。水滴のこれまでの道行を長いと感じましたでしょうか?それとも短いと感じましたでしょうか? 私は経営者でありながら、目標、展望、野望といったものを殆ど持っておらず、未来のことを考えたりするのも苦手で、取材などの最後に必ず訊かれる「今後のことについて」の質問にはいつも口を閉ざしてしまいま

【干支水滴 寅】の道行15「手おこし型での作り方」

こんにちは。上出惠悟です。 皆さんにお知らせです。ご存知の方も多いとは思いますが、私が代表を務めている合同会社上出瓷藝(かみでしげい)では昨年より、地元の酒造メーカーである福光屋の日本酒ラベルをデザインさせて頂いています。毎回、筒描と呼ばれる染色技法で、富山県八尾の和紙に染めた絵を原画としています。酒歳時記という季節に合わせて年に4回発売されている期間限定シリーズです。 そして弊社では現在、これらの筒描を楽しんで頂けるカレンダーを制作しています。これまでに酒歳時記で使用さ

【干支水滴 寅】の道行14「干支盃と型つくり」

こんにちは。上出惠悟です。 これまで干支の水滴の道行について取り上げて来ましたが、上出長右衛門窯で準備している干支ものは水滴だけではありません。そろそろ他の品物についてもこの道行でご紹介していきたいと思います。 高校生ぐらいの時から毎年夏になると祖父に「何か売れそうな干支盃のデザイン考えてくれや」と冗談半分によく言われました。前回も書きましたが、長右衛門窯の干支盃はもう40年は作り続けている商品で、夏頃から翌年の干支のデザインを考えることが伝統になっています。「売れそうな

【干支水滴 寅】の道行13「原形づくり」

こんにちは。上出惠悟です。 「今年の干支は何ですか?」という質問に即答できる人はどれくらいいらっしゃるでしょうか。年賀状の遣り取りも積極的ではなくなった現代において、「干支」の存在もかなり薄れてしまったように感じています。若い人の中には自分が何年なのか分からない。というか「干支って何?」という方ももしかしたら多いのかも知れません。 九谷焼の産地では昔からその年の干支に因んだ商品を縁起物として、年末に向け製造販売されて来ました。上出長右衛門窯でも40年前後(10/13 修正

【干支水滴 寅】の道行12「初老と検証」

こんにちは。上出惠悟です。 2021年の9月が終わりを告げ、10月が始まります。そして22日になればいよいよ私は40歳に。子供の頃に自分の父親が初老を迎えた事を覚えているので、何だか不思議な感覚です。先日私の住んでいる地区にある神社で、少ない人数ではありますが、同級生が集まって初老の厄祓いが行われました。皆でお金を出し合って駐車場にフェンスを奉納し、少しだけ地域の役に立った気持ちがしました。 さて、今回の寅の水滴は過去の干支水滴で言えば戌とよく似ています。直角で平らな壁に

【干支水滴 寅】の道行11「虎の尾が向く先」

こんにちは。上出惠悟です。 この道行noteは製作過程をリアルタイムでお届けすると謳っておりましたが、実は1〜2ヶ月程のタイムラグがあってスタートしました。遅れた時間を取り戻すべく奮闘していましたが、私の筆のスピードが想定よりも遅く、この時差を一切埋められることなく【干支水滴 寅】はゴールしてしまうかもしれません(ごめんなさい)。 しかし実は、毎回ヘッダーに使用している散歩中に撮影した写真はそれぞれの製作時期に合わせたものを選んでいますので、少し季節はずれの景色が気になっ

【干支水滴 寅】の道行10「キとトラ」

こんにちは。上出惠悟です。 先日、石川県の能登地方で震度5弱の地震がありました。私が住む地域はそれ程揺れず、ただ携帯の通知に驚いていましたが、幸い能登の方でも人的被害がなかったようで一安心しています。全国でニュースにもなったようで、たくさんの方からご心配のメッセージを頂戴し、ありがとうございました。 石川県の人は「大きな地震も台風も来ないし石川は住みやすい」とよく言いますが、おとなり福井県で昭和23年に大きな地震があった時は、石川県も大きな被害があり大勢の人が亡くなったそ

【干支水滴 寅】の道行9「制約について」

こんにちは。上出惠悟です。 もう9月ですね。石川県は少しだけ朝夕涼しくなったように感じます。 前回の最後で「手を動かして考える」ことを大切にしていると言いましたが、水滴作りにはいくつかの制約があります。それらを引き受けながら作業は進むのです。今日はそれらの制約についてお話ししながら、制作中の画像をお見せして行きたいと思います。

【干支水滴 寅】の道行8「四本足とちびくろ案」

こんにちは。上出惠悟です。 東洋で始まった磁器の歴史を舞台にしながら、伝統に固執しない柔軟な姿勢で、割烹食器を中心に発表しています。職人による手仕事にこだわり、時代を経ても瑞々しさを感じられる九谷焼の焼造を目指しています。 これは最近少し書き換えた上出長右衛門窯のステイトメントです。焼造(しょうぞう)とは「焼いて造る」という意味になります。今は化石のようなホームページですが、このnoteへのリンクも入れて更新しました。

【干支水滴 寅】の道行7「1stサンプル焼き上がり②」

こんにちは。上出惠悟です。 いつもヘッダーに使っている画像は、私が飼っている犬との散歩時に撮った風景です。今回は6月頃に用水沿いで撮った植物で、柳花笠という名前だそうです。今、季節は夏となり、私たちの散歩の時間は以前に比べると随分遅くなりました。夕日が沈む頃、太陽を追いかけるように西に向かって出発し、帰って来る頃には東の山影がうっすらとしか見えなくなり、光と闇の隙間を私たちはすうっとすり抜けるように散歩しています。 少しお待たせしてしまいましたが、「干支水滴 寅」1stサ

【干支水滴 寅】の道行6「1stサンプル焼き上がり①」

こんにちは。上出惠悟です。 早くもこの道行は6回を数えるんですね。ご同行頂いている皆様本当にありがとうございます。とは言っても私たちの道行はこれからもまだまだ続きます。松尾芭蕉の「おくのほそ道」で言えば今はまだ草加松原辺りでしょうか。お煎餅でも食べながら引き続きお楽しみ頂ければ嬉しいです。 さて、いよいよ「干支水滴 寅」1stサンプル焼き上がりのお披露目です。これまでお見せしていた画像の柔らかい粘土は、その後乾燥を経て、素焼(800℃)、絵付(染付)、施釉、本焼成(130

【干支水滴 寅】の道行5「9daysと新しい形」

こんにちは。上出惠悟です。 このnoteは有料ですが、今回は無料でお読みいただける冒頭部分をいつもより長くして、本題とは別の「道行」について書いてみます。それは私たち上出長右衛門窯が、このコロナ禍で始めてみた、ある試みについての道行です。 その試みとは新たなオンラインショップのオープンです。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、9days Shopと言うショップです。 それは毎月9の付く日(の夜9時に)に1つの商品だけを販売するという少し変わったお店で、売れても売れなく