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上出長右衛門窯の道行

現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイディア、プロセスを上出長右衛門窯六代目・… もっと読む
月に2〜3本くらいが更新目標(絶対に1本は書きます)。現在公開している全てのマガジンがここで読めま… もっと詳しく
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2021年10月の記事一覧

【干支水滴 寅】の道行16「水滴の完成」

こんにちは。上出惠悟です。 今年の6月からスタートしたこの長右衛門窯の道行【干支水滴 寅】ですが、いよいよ今回をもって製品が完成となります。ここまでご同行頂いた皆さんには本当に感謝申し上げます。水滴のこれまでの道行を長いと感じましたでしょうか?それとも短いと感じましたでしょうか? 私は経営者でありながら、目標、展望、野望といったものを殆ど持っておらず、未来のことを考えたりするのも苦手で、取材などの最後に必ず訊かれる「今後のことについて」の質問にはいつも口を閉ざしてしまいま

【干支水滴 寅】の道行15「手おこし型での作り方」

こんにちは。上出惠悟です。 皆さんにお知らせです。ご存知の方も多いとは思いますが、私が代表を務めている合同会社上出瓷藝(かみでしげい)では昨年より、地元の酒造メーカーである福光屋の日本酒ラベルをデザインさせて頂いています。毎回、筒描と呼ばれる染色技法で、富山県八尾の和紙に染めた絵を原画としています。酒歳時記という季節に合わせて年に4回発売されている期間限定シリーズです。 そして弊社では現在、これらの筒描を楽しんで頂けるカレンダーを制作しています。これまでに酒歳時記で使用さ

【干支水滴 寅】の道行14「干支盃と型つくり」

こんにちは。上出惠悟です。 これまで干支の水滴の道行について取り上げて来ましたが、上出長右衛門窯で準備している干支ものは水滴だけではありません。そろそろ他の品物についてもこの道行でご紹介していきたいと思います。 高校生ぐらいの時から毎年夏になると祖父に「何か売れそうな干支盃のデザイン考えてくれや」と冗談半分によく言われました。前回も書きましたが、長右衛門窯の干支盃はもう40年は作り続けている商品で、夏頃から翌年の干支のデザインを考えることが伝統になっています。「売れそうな

【干支水滴 寅】の道行13「原形づくり」

こんにちは。上出惠悟です。 「今年の干支は何ですか?」という質問に即答できる人はどれくらいいらっしゃるでしょうか。年賀状の遣り取りも積極的ではなくなった現代において、「干支」の存在もかなり薄れてしまったように感じています。若い人の中には自分が何年なのか分からない。というか「干支って何?」という方ももしかしたら多いのかも知れません。 九谷焼の産地では昔からその年の干支に因んだ商品を縁起物として、年末に向け製造販売されて来ました。上出長右衛門窯でも40年前後(10/13 修正