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「三島喜美代ー未来への記憶」/生きているゴミ 

「三島喜美代ー未来への記憶」
練馬区立美術館 2024年5月19日~7月7日

https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202401281706414617

このノートを書きかけてぐずぐずしているうちに、三島喜美代さんの訃報を知りました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

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私が三島喜美代さんのことを知ったのは、2021年の六本木美術館「アナザーエナジー展」でした。https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/anotherenergy/index.html

コロナ禍の年末、閑散とした会場で遭遇した巨大な新聞紙の山とドラム缶からあふれる紙。
題材も、それが陶でできていることも、衝撃でした。

2021年のアナザーエナジー展にて

形になって、大きくなって

今回は個展なので、展示もたっぷり。
まずは初期の作品から。
コラージュや素描、油絵が展示されていましたが、「普通の絵」はありません。いえ、デッサンも静物画もあったのですが、どれも「見えているものが他の人とは違うんだろうな」と感じさせる不思議な力強さがありました。

陶の造形も、初期の頃から異質。

これが陶(やきもの)だなんて、信じられる?

新聞、段ボール、空き缶などのゴミ。あまりにもリアルで目が離せなくなります。
印刷(転写)されている文字に意味があるのかどうかわからないけれど、文字があるとつい読んでしまう。情報ってなんだろう。割れる印刷物は、不穏な感じもありながらユーモアを含んで、不思議な安定感があります。

陶製のチラシと段ボール

展示が進むにつれて大きな作品が増えていくのも印象的でした。年齢を重ねるにつれて体力は落ちてゆくはずなのに、ますますでっかいものが生み出されていくのがすごい。

とても大きな少年マガジン。幅1.5mくらいあったかも?


しかも、題材がゴミです。

巨大な「少年マガジン」の原料には、ゴミを高温焼成した溶融スラグも使われているということです。
陶土も資源であり、いつかは尽きてしまう。何トンも使っていていいのか?と考えた三島さんは、廃棄物を使って作品を作り始めたのだそうです。

インタビューの中で、「ゴミからゴミを作っている」とおっしゃっていましたが、廃棄と再生のサイクルの中でゴミは作品になって生かされ、ゴミじゃなくなっていました。

「未来への記憶」

第3展示室には、一面に広がる「未来への記憶」。
作品の焼成に使っていた窯を廃した際に出た耐火レンガに新聞が転写されています。圧巻でした。

この膨大な数のレンガすべてに文字が転写されています

新聞は戦前のものから比較的新しいものまでさまざま。ここでもやはり文字を読んでしまい、その情報から別の記憶が引っ張り出され、この部屋で結構な時間を過ごしてしまいました。情報ってなんだろう(2回目)。

部屋のすみにちょっと高くなった見学台がありました。写真はそこから撮ったもの。

あふれるエナジー

三島さんは1923年生まれ。晩年まで精力的に創作されていました。
先日個展を観た宇野亞喜良さんもそうですが、年齢を理由にブレーキをかける必要なんてないのですね。

「好きなようにやってみたらええんですよ」
「失敗もおもしろいんですよ」

会場で映されていたビデオの中で、そんなことばを聞きました。
若い人へのメッセージでしたが、中年の私も、少なくとも三島さんよりは若い一人として、しっかり受け止めました。

次は、三島さんの屋外展示物を観てみたいなあ。

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