婚約破棄になったINTJ(建築家型)女の話

彼とは、コロナ渦の真っ只中で出会った。人と人との物理的接触が憚られるようになってしまったあの頃、狭い狭い1Kのマンションで一人暮らしをしていた私にとって、彼の存在は孤独に差し込んだ一筋の光だった。
パンデミックの最中に出会い、新型コロナの分類が「5類」に変わるそのときを一緒に迎えて、3年以上付き合った、最愛の元婚約者。
ようやく入籍しようとしたそのタイミングで、婚約破棄になった。

どうして、婚約破棄になったのか。どうして私を裏切ったのか。
この疑問文は、いつまでも頭をよぎって離れない。

私は子供が欲しくない。
その理由については別の機会に書きたいけれど、子供が欲しくない私にとっての「結婚の意義」は10代の頃からのテーマだ。

「25歳ぐらいまでに結婚して、30歳までに子供が2人ほしいな」
「結婚式したいよね!子供かわいい!」
「結婚できなかったらどうしよう」

結婚への憧れと期待を口にする友人達を前に「私は子供なんて欲しくない。結婚ってなんでしたいの?」って聞くのは私が根っからのINTJだからだと思う。そして、数少ない友人達がとても優しく、F型(感情型)の子ばかりだから純粋に疑問を投げることができるのだ。

MBTI診断(16パーソナリティーズ)
「INTJ(建築家タイプ)」は、女性の割合が少ないことで知られており
世界的には全人口の2%で、女性に限ると0.8%とされている。

「建築家型の性格(16personalities.com)」

彼女たちは、いつだって私の意見を尊重してくれる。「そうなんだね!」の一言で受け入れてくれる。でも、私がなぜそう思うのかを掘り下げてくれる人はいなかったし、おそらく興味はないのだろう。共感してほしいなんておこがましくて、大切な友人達に求めようとは思わなかったけれど。
でも、この長年のテーマに向き合いたくて仕方なかった。
だから私はプロポーズしてくれた彼にぶつけた。ぶつけ続けた。
子供が欲しくない理由も、結婚に対する長年の疑問も、感じている不安も、全て。

彼はとても優しかった。優しい人だったと今でも信じたい。私の言葉全てに耳を傾けて、
「君とずっと一緒にいたい。僕が君を幸せにしたい。君以上に愛せる人は今後現れない。」
と言い続けてくれた。
そんな言葉をどこかで疑う自分がいたけれど、それでも私は彼を信じたいと心底願った。素敵な言葉を投げかけてくれる彼の愛情を何よりも大切にしたかったのに、彼と結婚する話が正式に進んだ3年目の夏に、私はあっさりと浮気され、そしてとうとう婚約破棄となったのだ。

私を抱きしめ、「結婚しようね」と優しく微笑んだあなたはどこへいったのだろうか。
私があなたを変えてしまったのだろうか。
…あれ?息ができない。涙が止まらない。でも、涙を拭うために顔を洗いに行くことすらできない。
外に出ることができない。仕事ができない。流れるように仕事は休職することになった。足に力が入らないの。私、どうやって立っていたんだっけ?

ーああ、これが絶望か。

この苦しみを抱えながら私、これから先も生きていくの?ねぇ、本当に?
何も口にできなかった。それでも吐き気で目が覚める日々。空っぽの私の体は一体何を吐き出したいんだろう。

SNS上には、結婚式や子供の写真が溢れていて、”普通”の幸せがたくさん散らかっている。本来の役目をなくしたダイヤモンドの指輪が、キラキラ光って、私をあざ笑っていた。
ずっと、好きだって、言ったじゃないか。

いつの日だったか、あなたは言った。

「普通、好きな人がいたら結婚したいし、好きな人との子供はほしいでしょう。疑ったことないよ。」

あなたはどんな顔をして、そう言ったんだっけ。も
う覚えていない。
普通ってなんだろう。
ずっとずっと考えていた。考えることをやめられなかった。
いつだって私を苦しめる「普通」の存在。

ねぇ、でも、でもさ、「普通」は、婚約者を裏切って浮気なんてしないんじゃないの?  

散々永遠の愛を語っていたけれど、壊れる時はあっという間だった。積み上げた信頼も時間もこれから先あるはずだった未来も全部なぎ倒して、いとも簡単に崩れ去った。

ご飯をもう一度食べられるようになるまでどれだけ私が苦しんだのかをあなたは知らないでしょう。前を向いたと思っても、突然襲ってくる絶望に怯えながら生きている私のことなんて、きっともう忘れてしまったんでしょうね。
そして、絶望の淵で私は気づいてしまう。私を愛し続けることができる存在は私しかいないんだと。至上の恋人は、私でしかないんだと。そう、本当はプロポーズされた時から、その前から、ずっと気づいていた。
それでもこの苦しい人生を生きていくうえで、最大の味方を得たいという欲求。

それが私の結婚への捨てきれない欲と憧れ。手にしたいと夢みるようになったのです。


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