たかが『アイドル育成ゲーム』と侮るなかれ

私は非常に飽き性だ。

そんな私は、自分の中で「3年以上、継続して熱量が注げるかどうか」で物事の『好き』を線引きしている。

つまり、3年以上経っても変わらずに続けているもの、愛情を注げるものが、私にとって『好きなもの』なのだ。


その中の一つが、『アイドリッシュセブン』というアプリゲームだ。


ご存知の方も多いかと思うけれど、知らない方には是非一度プレイしてみて欲しい。

あーハイハイ、最近よくあるアイドル系アプリね。適度に色んな系統のイケメン揃えて、「この中からアナタの推しを選んでね⭐︎」的なヤツでしょ。『豪華声優陣による〜』ってコピーもお馴染みだよね。


などと軽い気持ちで始めるのは、大間違いである。


私はアイドリッシュセブン(以下アイナナと呼ぶ)を始めてもうすぐ4年になるのだが、これだけ続いたアプリはアイナナしかない。

テレビCMでもよく見かけるようなメジャーアプリは一通り触れてきたが、どれも続かなかった。

ソシャゲ戦国時代と言っても良いこのご時世。

運営側としては、如何に課金勢を獲得するかがサービス継続のカギになるわけだけれど、どのアプリも「課金しても良いな」と、私は思えなかったのだ。

無課金で続けるには辛くなってきたけど、なら課金してまで続けたいかと問われたら、それほどではないな、で終わってしまう。

けれど、アイナナだけは違った。

飽き性かつ、捻くれ者で流行りものに乗るのが嫌いな私だが、アイナナに関しては「課金しよう。いや、むしろ課金させて欲しい」とまで思った。


何故、アイナナだけはそう思えたのか。

その理由は、実によく作り込まれたストーリーだ。

アイナナは、大きな括りで言うならリズムゲーム。所謂、音ゲーである。

音ゲーの要とも言える楽曲のセンスが良いのも高ポイントなのだが、それに加えて、ストーリーの深さがとにかく物凄い。

アイドルモノと言うと、キラキラしていて、夢に向かって突き進んでいく様を見守るようなストーリーが王道だ。

実際私も、そんな感じなんだろうと思っていた。


ところがどっこい。

アイナナもアイドル界で登り詰めていくアイドルたちの物語ではあるのだが、デビューしてステージに立つまでの苦悩や困難。

芸能界の光と影。

ファンの前で見せる姿と、そんなアイドルであり続ける為の葛藤や覚悟。

共に喜んだかと思えば、時には感情のままぶつかり合って築きあげていく、人と人との絆。


一括りに『アイドル』という言葉には収まらない、我々の日常の中にも当て嵌まるようなテーマが次々に繰り出されるので、強く心を掴まれるのだ。

何より、ストーリーの展開に全てのメインキャラクターがしっかりと関わっている為、所謂「どうでも良いキャラ」というものが存在しない。

どのキャラを差し引いてもストーリーが成立しないように、巧みにシナリオが構成されている。

それはつまり、ソシャゲに欠かせないガチャシステムにおいて、「ハズレ感が少ない」ということに繋がる。

実際私も、アイナナにおいて推しキャラは居るものの、「この子は別に…」というキャラは、一人も居ない。

むしろストーリーを読み進めるにつれ、各キャラの魅力が上がる一方で、最早誰が推しなのかすらもわからない状態。

これぞ、運営の思うツボである。

それがわかっていても、「これだけのストーリーを読ませてくれているのだから」と、私はアイナナには定期的に課金するようにしている。

サービスが終了して、ストーリーの続きが読めなくなることの方が辛いからだ。

同時に、ユーザーに自然とこう思わせてくれるところが、アイナナというコンテンツが好きな理由に繋がるのである。


アプリ自体について、かなり熱く語ってしまったが、このアイナナというコンテンツは、最近よく聞く『2.5次元』にも進出している。

一昨年と、昨年の2度、計4公演。

メットライフドームにて、出演キャスト陣によるライブが行われた。

かつては、声優さんと言うとあまり表舞台には出てこないイメージだったし、私自身もそういう時代を見てきた。

だからこそ、このライブの告知を初めて聞いたとき、戸惑いの気持ちが強かった。

アイナナというコンテンツが好きだからこそ、その世界観やキャラクターを、少しも崩して欲しくないと思ったのだ。


けれど、そんな心配は杞憂だった。

ライブのステージ演出、衣装、セットリスト。

何もかも、アイナナファンには堪らない仕上がりになっていたし、何よりキャストの皆さんが、各キャラクターやコンテンツをとても尊重して下さっていた。

実は1stライブでは、斉藤壮馬氏のパフォーマンスを観て『九条天ファン』になり、2ndライブでは増田俊樹氏の完璧な一織ぶりを観て『和泉一織ファン』になった。

声優さんのパフォーマンスを観て、その声優さんのファンになるのではなく(勿論声優さん本人にも感動したが)、その方の演じるキャラのファンになる。

それはつまり、お二人がそれだけ、自身の演じるキャラクターの魅力を伝えてくれていたからに他ならない。


声優さんたちだけではない。

およそ4万人もの観客を収容出来るドームで、『魅せるステージ』を作り上げてくれた、全スタッフの熱意。

作中と連動した演出やパフォーマンス、衣装デザインには、本当に並々ならぬ愛情を感じた。


↑これは、2ndライブ『REUNION』で実際にキャストの方々がステージ上で着用していた衣装が、全て掲載されたコスチュームブックだ。

1stライブの時から、衣装のクオリティが凄いと思っていたが、この本を見て更に感動が大きくなった。

生地や糸の種類と色。布の模様。ボタンの色や数。胸元のブローチの小さなパーツ一つまで、各キャラクターを意識して、とても細かく丁寧に作り込まれているのが分かる。

キャストの動きやすさや、ステージ映えも綿密に計算されていることもそうだが、何より驚いたのは、このクオリティの衣装の制作期間が、僅か1ヶ月ほどだったという事実。

最も時間がかかった某ユニットのローブに至っては、本番当日の朝に仕上がったそうで。


そんな話を知ってしまうと、またライブ映像が観たくなり、Blu-rayを引っ張り出してきてしまう。

アプリの方でも今はイベントが開催されているので、そちらも疎かにするわけにはいかない(意地)


やはり、運営の思うツボである。


けれど、これほど楽しめるコンテンツを提供してくれる運営なら、私は今後も喜んで踊らされたいと思う。

ファンとしては、また次のライブも開催してもらわなければ困るのだ。


こんな幸せな需要と供給があるだろうかと、私は有り難みを噛みしめながら、今日もアイナナにログインする。



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