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【エッセイ】すべて昨日の出来事

朝方、心地良い気温だったのでベビーカーに娘を乗せて散歩に出た。
横断歩道の前で信号待ちをしていたら、ゆっくり発進する車の窓から園児くらいの少年が顔を出してきて「わあ、赤ちゃんだ!めっちゃかわいい!」と言い娘を指差した。
咄嗟のことで驚いたけれどすかさず「ありがとね〜」と笑顔で手を振ってみた。
そして心の中で「君もとても可愛いよ」と呟いた。

午後もまた気持ちの良い風が吹いていたので娘と散歩をした。
ある時、道路を挟んで向かい側に美容院があり、その駐車場で小さな赤ちゃんを抱っこをした女性がいた。
私が娘に「向こうに可愛い赤ちゃんがいるね」と話しかけていたら、女性が赤ちゃんの手を握り、こちらに振ってくれた。赤ちゃんはおそらく娘よりも幼く、小さな小さな手がぎこちなく動かされていた。私も嬉しくなり同じように娘の手を取って振らせてみた。
車がそれなり行き来していたので私達母親は会話をすることもなく、会釈のみだったけれど小さな赤ちゃんがいる同士。それだけで仲間意識が生まれた瞬間だった。

散歩帰り、買い物に寄るとご年配の女性が「何ヶ月なの?」と話しかけてくれた。(こういうことは本当によくあり、娘を連れて買い物に行くとほぼ必ず誰かしら街の人に話しかけてもらえる気がする。)
ひととおり会話をしてた後、女性が「赤ちゃんを見せてくれてありがとね」と言った。
その言葉がとても胸に残った。こんなことを言われたのははじめてだった。
だけどその気持ち、本当によく分かる。子どもを産んでからというもの、赤ちゃんという存在は光のように眩しくそこにいるだけみんなの心を明るく照らすようなものだと感じていたからだ。
私もそんな気持ちを素直に伝えられる人でありたいなと思った。

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