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【noteが新規上場】メディアビジネスの儲けどころとnoteの勝ち筋とは?

noteが新規上場することになりました。

今回の記事では、他の国産Webメディアのビジネス動向も見ていきながら、メディアビジネスの勝ちどころについて考えていきたいと思います。

まずは、noteの状況について。

noteの主だった指標について

売上と利益

noteの売上と利益は以下のようになっています。

売上:18.8億円
経常利益:-4.3億円

新規上場申請のための有価証券報告書」より

赤字上場であることは必ずしも悪ではないと思いますが、もともとの評価額300億越えだった事業が、想定時価総額44億円となり、大幅ダウンラウンド上場です。

ちなみに、有価証券届出書には、4半期ごとのGMV(流通総額)が掲載されていますが、成長はしているものの流通額も鈍化傾向にあるようにみられます。

さらに言えば、売上トップラインは伸びているものの、赤字幅は増大傾向。一体何が起きているのか….というのが正直な感想でした。

売上構成と推移

次にnoteの収益内訳について。

noteはCtoC課金のプラットフォーム売上が大半で、企業向けのnote proと法人向けサービス(コンテストやイベント運営)でも売上を立てるビジネスモデルになっています。

なぜnoteは赤字なのか?

そもそもnoteはなぜ赤字なのでしょうか?

売上原価+販管費、いわゆる支出の項目を見てみると、人件費がこの2年で3倍に膨れ上がっていることがわかります。

noteの本業はCtoCのプラットフォームビジネスです。プラットフォームビジネスの利点は、運営コストはほぼ一定でもユーザー数の増大によって、売上・利益が二次関数的に増えていくことがあげられます

ある人がネットワークに加入することによって、その人の効用を増加させるだけでなく他の加入者の効用も増加させる効果を、「ネットワーク効果」と呼ぶ。

平成19年版 情報通信白書

これはいわゆるネットワーク効果が働くことによるものなのですが(FacebookやUber、メルカリなどがその一例)、CtoC課金プラットフォームだと、結局はクリエイターと読者の1:1の繋がりのみで、二次関数的にユーザーが爆増しづらい環境にあるのかなと感じました。

ここからは推測です。プラットフォームビジネスで急成長が見込めないリスクヘッジとしてtoB向けビジネスで売上を作りに行っているものの、コンサル業のように、売上が投下人数(人件費)に連動するビジネスモデルなので、このままでは一生赤字になってしまうかと思われます。

人件費を増やさずに売上を増やす=プラットフォーム売上を拡大させるか、人件費を削減するの2択しかありません。

Webメディアの稼ぎ方にはパターンがある

Webメディアのお金の稼ぎ方にはいくつかのパターンがあります。逆に言えば、このいくつかのパターンを突き詰めないと利益をなかなかあげることができません。

そのパターンが以下の3つです。

①広告
②個人課金
③法人向けサービス提供

実際には、①②③を組み合わせて、売上・利益を最大化している企業が多いですが、この3つのどれかを強みにしている企業をそれぞれ紹介していきます。

広告マネタイズの事例

日本のWebメディアで最も広告費を稼いでいる事業はYahoo(企業はZホールディングス)です。(メディアというよりはネットワークに近いですが。)

Zホールディングス株式会社 決算説明会 2021年度 通期及び第4四半期

Yahooの広告事業の売上が、3,926億円。note売上と比較すると200倍以上ありますね。Yahoo広告の事業規模の巨大さと同時に、note市場がまだまだ思いの外小さいことがわかります。

もう一つ、参考事例として取り上げたいのがGunosyです。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/6047/tdnet/2189658/00.pdfより

Gunosyに関しては、別の事業も走っているので、メディア事業単体の売上ではありませんが、およそ年間売上90億円となっています。

検索連動型広告を持つことなく、単一メディア(プラットフォーム)上で広告マネタイズをするとなると、売上のアッパーは100億円程度と言えるかもしれません。

②個人課金の事例

個人課金で、メディアのマネタイズに取り組んでいる企業といえばNewsPicksが挙げられます。


2021年12月期通期 決算説明資料

2021年のNewsPicks事業の売上高が61億円、そのうち有料課金事業は23.3億円となっています。課金事業単体で言えば、売上18.8億円のnoteとほぼニアリーな規模だといえます。

必死で販促をしているNewsPicksが23億円規模と考えると、100億円以上の課金プラットフォームになるのは、意外と難しいのかも?とも思ったり。

また、よりnoteに近い個人課金サービスでいえば、メルマガプラットフォームを運営している「まぐまぐ」があります。

2022年9月期 決算説明資料

2022年9月期 決算説明資料

ただ、メルマガプラットフォームの売上は3.29億円と、すでにnoteのほうが6倍近く上回っている状況でした。

やはりこの観点からも、「テキスト中心×個人課金」の市場では、すでにnoteがアッパーにたどり着いている可能性が高そうです。

③法人向けサービス提供

メディアを入り口としつつ、toBサービスで稼いでいるのが「はてな」です。一時期は、はてなブログやブックマークで有名でしたが、いつの間にかtoBビジネスが売上の柱となっています。

2022年7月期決算説明資料_株式会社はてな

肝心の売上は、プラットフォームビジネスが4.8億、マーケ支援ビジネスが7.9億、受託サービスが17.8億円と、売上規模としてはこれまで紹介してきたメディア事業の売上よりは小さいものとなっています。

最後に、ちゃっかり法人向けサービスで爆益を上げているのがITメディアです。

売上は80億円ほどで、営業利益26.8億と、本来のWebメディアのあるべき姿らしく超効率良くお金を稼いでいます。

2022年3月期 決算説明資料

特にITメディアは、広告マネタイズ、イベント、法人向けにリード販売と手広く、やれるマネタイズは全て取り組んでいるのが特徴です。

ただし、それぞれ個別にみると、
広告収益:36.5億円
デジタルイベント収益:18.1億円
法人向けサービス(リードジェン事業):26.3億円

と、やはりここでも、これまで見てきたメディア事業のアッパーに近しい数字が出てきています。

広告、個人課金、法人向けサービス、3つのマネタイズ方法のどれをとっても(ないしは組み合わせても)、いま国内市場×Webメディアで稼ぐアッパーは100億円前後にある気がしています。

そんなnoteがこれからさらに売上トップラインを伸ばす方法を個人的に考えてみました。

超個人的な、Webメディアビジネスの勝ち筋

他人の舞台で踊るなら1人(ミニマム)で、舞台を作る側なら集団で。

noteがいまいちパッとしない理由(あくまでビジネスとしてで、イチユーザーとしてnoteサービスは好きです)は、他人の土俵で相撲をとっているからです。

noteのトラフィックは、オーガニック流入(Google検索)とSNS(主にTwitter)に大きく依存しています。

イチユーザーからすると、「スマホで何かしらの情報を探したときに、たまたまnoteコンテンツにぶつかったからnoteプラットフォームにやってくる」、そんな構造になってるわけです。

つまり、一番最初にアクセスする場所(YahooトップやTwitterのタイムライン)というポジションを取れていないのが今のnoteの状態。

これが冒頭で書いた、「他人の舞台で踊っている」状態です。他人の舞台で踊るのなら、ビジネス上大きなトラフィックを獲得できないため、1人で踊ったほうがマシだと私は思います。

中途半端に企業がメディアを運営するなら、1人インフルエンサーをやっていたほうがよっぽど利益は出るでしょう。

さらに、noteはもう一つ依存しているものがあります。それがコンテンツです。noteは、箱だけを用意している立場であり、トラフィックを外部に依存しているだけではなく、人を呼び寄せるコンテンツも外に依存している状態です。書き手がプラットフォームを離れるリスクもあるという意味で、トラフィックとコンテンツ、二重の依存の元で成り立っているというのが実情なのです。

入り口ポジションを獲得するしかない

「言うは易し、行うは難し」の典型ですが、1次トラフィックの獲得、スマホやPCを開いたときに、最初にアクセスする場所としての地位を目指すしかないと思っています。

つまり、note内でのタイムラインの充実化を図ることで、「ユーザーがnoteに入ってきて、noteの中をぐるぐる回る」。そんな構造を作る必要があるのかなと。

ちなみに、ニュースフィードの重要性は、ブリッツスケーリングで以下のように語られています。

過小評価され、見過ごされている実証済みの成功パターンはニュースフィードだ。フェイスブックがあれほどのユーザーを引き寄せている理由はもちろん強力なネットワーク効果だが、巨大なグローバルビジネスの運営を支えている柱は画期的なニュースフィード・テクノロジーだ。それにフィードでビジネスを成功させているのはフェイスブックだけではない。いうまでもなく、ツイッター、インスタグラム、スラックなどのサービスはすべてニュースフィードをベースに数十億ドルの市場価値を築いている。

ニュースフィードの真の力は、サービスが現実に利用される度合い、つまりユーザーエンゲージメントを促進するところにある。これは広告収入を長期的に確保できるようにする。フェイスブックが実証したとおり、スポンサーからの広告投稿を含むニュースフィードは、インターネットでいわゆる「ユーザー・アテンション」を収益化する最も効果的な方法だ。

ブリッツスケーリング

noteは広告を使わないビジネスモデルに挑戦していますが、広告ビジネスではないからと言って、ニュースフィード面の最適化に取り組まないのはやはり損だなと感じます。

ウルトラCはうまく広告モデルを組み合わせること

最後に、もう一案。。。笑

noteは広告モデルを採用していないことを売りにしています。(実際に、有価証券報告書にも以下のように書かれている。)

「note」はランキングがない・広告がないといった特徴から、PV獲得目的の炎上行為が発生しづらく、 クリエイターは自由に安心してコンテンツを投稿でき、読者はクリエイターの世界に没頭できる空気感が醸成され ており、収益化を意識した良質なコンテンツが集まりやすい環境となっています。

僕自身、noteプラットフォームが持つ独自の世界観はとても好きです。一方で、先ほど他社メディア事例を見てきたように、ほぼ全てのメディアが広告マネタイズを採用しており、その割合はどの事業もだいたい5割を超えています。

つまり、単純に18.8億の売上を生み出すプラットフォーム(トラフィック)なら、それと同じ売上分を広告ビジネスで生み出せるポテンシャルがあるのかなと。

仮に広告マネタイズに取り組むのなら、ガバガバの審査基準ではなく、あくまでnote pro利用企業、およびマーケ支援を受ける企業のみに絞って、かつ広告遷移先をnote記事に絞ってやってみれば、いまの世界観を失うことなく広告マネタイズに取り組める可能性は大いにあると思っています。

noteでPRをしたい企業の求めるものは、自社コンテンツへの流入、理解促進なわけで、note上のトラフィックを活かさない手はないのでしょうか。なにより、note様が直々にPR・マーケ支援している記事コンテンツであれば、自信をもって広告をぶち込んでも、noteの生態系は荒れないと思います。

まあ、こちらも言うは易しの話かもしれませんが、上場して数年したら、なんらかの形で広告モデルが導入されるに1000ジンバブエドルかけたいと思います!稼がなければならない圧力がかかるのが上場企業ですし、最もシンプルに最速で稼げる方法が広告モデルの導入です。

という感じで、メディアビジネスについてだらだら書いていたら思いのほか長くなってしまいました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

そんじゃーね。

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