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お気にいりの図書館と宇宙人

ゆったりとただよう空気感とか、天井までの高さとか、本がシンプルにずらーっと並んでいるところ、やわらかすぎずかたすぎなくてほどよいチェアーがあるところ、しかもそれらが窓際に配置されているところ、カフェスペースも併設されているので、遠くからカチャカチャペチャクチャ聞こえて静かすぎないところ、5時で閉館じゃないところ、なにもかもがわたし好みでちょうどいい図書館がある。

今日はどうにも気分が上がらない。図書館に救いを求めて立ち寄ってみた。

「落ち込んだ時に読む本」とかって検索したらどんなリストが出るんだろう~と一瞬よぎったけれど、却下した。なんとなくそれは違う気がしたから。

自分の「引き」の力を信じて、今の自分にふさわしい本を眼力で引きあてる。時々そんな賭けに出てしまいたくなる。
探し求めているときに、天からちょうどいいものが降りてきたり、やって来たりする不思議。不思議としか言い表せないけれど、不思議を信じて、待望して、不思議が訪れる。そんな一連の流れが、これまでもわたしをすくい上げてくれてきたし、今回だってそうだよね、って信頼を寄せているのだが。とにもかくにも不思議が好きなのだ。

不思議と巡り合うために、図書館の棚を「あ~わ」まで端から端まで見てまわることにした。不思議をつかむための唯一の努力。

なかなかわたしのアンテナに引っ掛かってこない。不発かなぁと不安になる。

今日は無性に本が読みたい。本よ来い!と念ずる。

そんなに強く惹かれないけど「な」で1冊。
最近追ってる作家のまだ読んでない作品があったから「ふ」で1冊。
「み」では、何回か読んだけど借りておくかーが2冊と、なんと「ワンさぶ子」がタイトルに入っとる本がある~!大興奮で1冊。

5冊かー今日の収穫はこんなもんかな、と山にキノコを採りに入ったキノコ狩り名人の気持ちで〆に入る。
ぜんぶがヒットしなくても、どれか1冊でもフィットすればいい。保険を掛けるじゃないけど、数冊借りておけばなんとなく安心できる。既読の本も保険なんだな。手堅いから。

「よ」で、『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』にすいよせられた。

なんというどストレートなタイトルだ。
友だちが持つ悩み?友だち関係についての悩み?
そしてばなな氏は有名な作家ではあるけれど、お悩み相談のスペシャリストだったっけ?
新聞の人生相談コーナー出てたっけ?

どういったスタンスで、意図で、書かれた本なのだー!
何かおことわりがあるはずだ、あるに違いない、と表紙をめくる。

「はじめに」があって、大前提が書いてあった。
だよね。

「はじめに」の存在だけで大丈夫な気がした。この本がもしかしたら今日の一番の獲物、なのかもしれない。予感でわくわくしながら前提を読む。

「友だち」というテーマで今回からお話しすることについて、じっくり考えていたのですが、一般的なまとまりのよい答えが一切自分のなかにないということがわかりました。私があまりにもかけ離れていると思うんですね。私は普通の主婦ではありません。職業も一般的ではありません。すごく早いうちに独立していて、実家も一般的な家ではない。
 そんな風に、私が答えるすべてのことが「それは吉本さんの環境だからでしょ」と言われたらもうおしまいになってしまうような状況にあるんですが、私が逆に問いかけたいことは「もし私のいる別の枠の中の場所から見たら、あなたはどんな風に見えると思う?」ということなんです。

無駄のないわかりやすい文章で、ほれぼれする。全文引用して国語のテストを作りたいくらいだ。

引用省いたけれど、続きがまた良くて、自身を「宇宙人」に例えていて、宇宙人だから違う角度から光を当てることができるし、悩める人のヒントが見つかるかもしれないと。吉本ばなな宇宙人だったんかい。

もうこの「はじめに」で惚れてしまって、すぐ読みたい読まずにはいられない。ちょっとだけちょっとだけ、空いているイスを探して座りこむ。いいイスのある図書館でよかった。

友だちについての悩み、とあるが、そんな狭い範囲のものではなかった。あらゆる人間関係についてかなりシビアに語られていた。厳しいっちゃあ厳しい、冷たいっちゃあ冷たい。SNSだったら炎上するんじゃね?とドキドキしながら、でも宇宙人だもんね。なんでもいいけど、わたしは夢中で読んだ。

気付いたら、外が暗くなっていて、閉館も近づいてきたので、あわてて栞がわりに貸出票をはさんで、荷物をまとめて帰る。

家事が終わってから、一気読み。またやっちゃったー(首大丈夫でした)けど、これは必要経費っていうか、ソッコー読んでよかった。

続けて、ワンさぶ子の本を読んだ。ワンさぶ子とは、作家宮下奈都のエッセイに、お子さんの想像上の犬として初登場して、今は宮下家の一員として実在する犬のことだ。詳しくはエッセイを読んでいただきたい。

相変わらずの素敵なご家族やご本人のご様子に、たくさん笑った。ばななさんよりはマイルドに、加えて笑い要素でさらにマイルドなんだけど、ばななさんも宮下さんも人間関係についての思考のベースは近いような気がして…宇宙人仲間かもしれない。

人との距離のとり方、特に子どもとの距離感について、じわじわーふむふむと考えさせられる。

家を出た上のお子さんについて、「この子は大丈夫」って宮下奈都は何度も確かめるように書いていた。

うちは大丈夫じゃないんですけど…でもそうやって切り離していかないといけないかもな、と思った次第で。

わたしの今抱える問題、例のクライアント(我が子)とのアレコレについて、2人の宇宙人(作家)からアレやコレやと諭されたような。
もう一歩下がって距離をとったところで腕組みしててもいいかなぁ。
でも、いざという時には頼ってもらえるような存在でありたいなぁ。

そして反省。

わたしはキャッチャーやキーパーみたいに、後方でデーンと構えている人になれていただろうか。
クライアントにそういう存在だと認識されていただろうか。

クライアントは遅かれ早かれ困った事態におちいるだろう。(ほぼ確定)
そうなったときに「どんとこい、俺がなんとかしちゃる」ってスパスパ、スパパーンと、かっこよくさばききってやることも親の大事な役目なんだよな〜と。

腹をくくる。くくった。これからもきっと、なんどもくくりなおすだろう。

宇宙人、どうもありがとう。文庫本があるなら文庫を買うよ。文庫がなければ文庫化を待って買うよ。


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