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梅仕事

においを食べられたらいいのになぁ、と思うことがある。冬は酒粕、初夏は梅だ。「梅、おいしそうなにおいする、かじりたいなぁ」と言ったら、「大変なことになるよ」と夫が言った。昔の人も、そうやって梅の実を食す方法を編み出したのだろうか。今も昔も、食欲は原動力。

においにつられて、買ってしまった小粒でかわいい小梅ちゃん。小さきものはどうしたってかわいい。もうこれは買わずにすむものか。

2年前にも、この梅を買った。初めての梅だった。ピンクのきれいな梅シロップができた。どの梅もピンク色になるんだと、当然のように思ってしまった。色がきれいで、美味しくて、すぐに飲んでなくなってしまった。おかわり!と思ったけれど、同じ梅は売ってなくて、大きな梅を買って漬けたら、ピンク色にはならなくてがっかりしてしまった。

無知は、ありがたみを知らなくてこわい。調べてみるとこの小梅ちゃん、パープルクイーンという名の梅。記事を書くためにリンクを探していたら、パープルクイーンは希少種だったと知った次第である。
梅だけでピンク色になる&生産地が和歌山県の一部の地域に限られているというスーパースペシャルレアキャラ梅だったのだ。ハウルのカブ頭がどこぞの王子様だったんだ、くらい小梅ちゃんの出自に驚いた。

最初が特別だった場合、その特別をスタンダードだと思ってしまうから、特別を特別と気付かずにやり過ごしてしまう。それって幸なのか不幸なのか、得なのか損なのか、いつもそんなふうに考えてしまう。いつかは、特別が特別であることに気付くんだろうけど、それは特別じゃない方の通常版を経験して初めてわかるのであって、いちいち普通フィルターを通さねばならないって、なんなのよ、となる。本当の気持ちに気付くまでに遠回りしちゃう、胸キュン恋愛ドラマみたい。当て馬にされた方はたまったもんじゃないよね。

今年もピンク色のきれいなシロップができた。去年の夏、よく飲んだ梅ソルティを模して、少し塩を入れてみる。美味しい。もっと暑い日には炭酸水でも割ってみよう。それまで残っているかな。

2年前は、ユキと一緒に作った。いろんな意味でリハビリ中だった。ユキ自身も、ユキと私の関係も。
一緒に調べたり、ビンを探したり、氷砂糖を買いに行ったり、梅をきれいにしたり。初めての梅を扱うだけでもおっかなびっくりなのに、ユキとの久しぶりの共同作業。
梅仕事って大変、という記憶が残っているのはそのせいなのかもしれない。梅を漬ける1週間の間に、ユキとの関係が悪くなって、予定より長く漬けた気もするな。

今年は、ユキが一人で梅をきれいにしていた。黙々と作業に没頭していた。こういう仕事があればなぁ、と言っていた。そのあともほとんど一人ですすんでやっていた。あっという間で「なんだ、簡単じゃん」だった。
2年という歳月を思う。
子は成長するし、変わるのだな~とうっかりしみじみしてしまったけれど、どっこいまだ変わらない面もあり、難儀することも多い。




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