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【フランスおいしい旅ガイド】ブルターニュ の都市別食べ歩き方

美食の国フランス。フランスの各地方には、その風土を活かした料理や伝統的なお菓子があります。フランスを20の地方に分けてそれぞれの特徴をご紹介します。今回はブルターニュ地方です。

ブルターニュ Bretagne

北は英仏海峡、南は大西洋に囲まれた半島にある。5世紀に英国(グランデ・ブルターニュ)から移り住んだケルト人が開拓した地で、その名は英国に対してプティット・ブルターニュと呼んだことに由来する。紀元前3000年頃にはすでに巨石文化が根付いており、紀元前1世紀にはローマ人が侵入した。ブルターニュは独立した公国を築いていたが、アンヌ・ブルターニュ公妃が最初の夫シャルル7世を亡くした後、1499年にルイ12世と結婚、フランス王妃となって、1532年にフランスに併合された。沿岸はフランスの一大リゾート地であり、また屈指の観光地となっている。ブルターニュ地方は大きくバス・ブルターニュ(半島の西部)とオート・ブルターニュ(半島の東部)に分けられる。バス・ブルターニュではフランス語と並行してブルトン語が話され、祭りや風俗、習慣に、よりブルターニュの伝統が色濃く残っている。ブルターニュの海岸線はリアス式に入り組んでおり、潮の干満の差が実に大きく、野生動物の宝庫となっている。また、カキの養殖も盛ん。内陸は丘陵地帯で小麦やソバの耕作量が多く、また、アーティチョークやカリフラワー、エシャロット、玉葱など野菜の栽培も多い。

データ
県名:フィニステールFinistere、コート・ダルモールCôtes d'Armor、
モルビアンMorbihan、イール・エ・ヴィレーヌIlle-et-Vilaine
旧地方名:ブルターニュBretagne
主要都市:レンヌRennes

特産品
プレ・サレ(海の風を受けたヨード、ミネラル、塩分を含んだ海辺の牧草で育った羊、生前から下味、風味がついている)、ナントの鴨、レーヌの肥鶏、カンカルの牡蠣、オマール、レンヌのブーダン、カンペルレのアンドュイエット、ゲランドの塩、有塩バター、シードル、カルヴァドス

おすすめのお土産
キブロンのキャラメル、ポン・タヴァンの缶入りガレット、カンペールの陶器、ゲランドの塩

■都市別ガイド

パリからブルターニュの入口、レンヌまではTGVがある。ブルターニュの北側へは、ここでローカル線に乗る。西側先端へ行くのならカンペールまでTGVで行ける。南側へはル・ボールというナントの先の駅までTGVがある。いずれにしても、電車の便はあまりよくない。

●レンヌRennes


レンヌは英仏海峡に注ぐイル川と大西洋に流れるヴィレーヌ川が合流する地点にある。人口20万。歴史はゴロワ人が造った小さな村にさかのぼり、1532年にブルターニュがフランスに統合されて以来、中心都市となった。だが、1720年に大火災に見舞われ、古い街並みはわずかに残るだけである。近代的な再建が進み、現在では45,000人の学生を有する大学の街として、また、車メーカーのシトロエン工場がある工業都市として発展している。街の北西の旧市街の小径には木と石で造られた家並みが続き、15~16世紀の中世にタイムスリップしたよう。窓枠で猫がひなたぼっこをしていたり、石の彫刻のある家があったり、シャッターチャンスがいっぱいある。

アクセス
パリ・モンパルナス駅からTGVで約2時間10分。

観光スポット
□サン・ピエール大聖堂(Cathedrale St.Pierre)
ドーム型天井のカテドラル。ステンドグラスが見事。

お菓子屋さん
□Laigre:レイグル
28, rue de Nemours, 35000 Rennes Tel: 02.99.79.06.63
マルセル・レイグル氏のお菓子屋さん。レンヌに2店舗ある。クイニー・アマン、ファー・ブルトン、ガレット・ブルトンヌなど地方菓子が充実。(1999/8/24)

□Le Daniel:ル・ダニエル
13, Galerie du Theatre, 35000 Rennes Tel: 2.99.79.33.81
MOFパティシエ、ローラン・ル・ダニエル氏の店。洗練された店内とケーキ。マダムは日本人。(1999/8/24)

レストラン
□Au Marché des Lices:オ・マルシェ・デ・リス
3, place des Lices, 35000 Rennes Tel: 02.99.30.42.95
クレープリー。(1999/8/24)

□Léon le Cochon:レオン・ル・コション
1, rue Maréchal Joffre, 35000 Rennes Tel: 02.99.79.37.54
ビストロ。デザートも充実。(1999/8/24)

●サン・マロSt.Malo


サン・マロはブルターニュの北の東端、陸地から突き出した海港城壁都市。16世紀には、王からその身分を認められたコルセールと呼ばれる私掠船が活躍し、敵国の船から荷を略奪しては富を得、17世紀末にはフランスきっての港として繁栄した。海洋探検家のジャック・カルティエが新大陸を目指し、カナダの地を発見したことでも有名。堅牢な花崗岩でできた城壁の街は、第2次世界大戦中の1944年、ドイツ軍が立てこもって破壊され、城壁だけが残った。今では城壁の上は一回りできる遊歩道になっている。

アクセス
レンヌからサン・マロ行き電車で約1時間。1時間に1本くらいの割合である。

お菓子屋さん
□Crêperie Ti Nevez
12,rue Broussais 35400 Saint-Malo Tel: 02.99.40.82.50
クレープリー。焼き菓子もある。(1999/8/23)

□Le Vieux Four
6, rue des Merciers, 35400 Saint-Malo Tel: 02.23.18.03.61
パン、お菓子屋。クイニー・アマンあり。(1999/8/23)

グルメスポット
□Le Comptoir:ル・コンプトワール
5, rue des Merciers, 35400 saint-Malo Tel: 02.99.40.98.25
スパイス専門店。レンヌにも支店あり。(1999/8/23)

●カンカルCancale


カンカルといえばカキ。カンカルのカキは、17kmの潮の満ち引きにより鍛えられており、ちょうど川が流れ込んで塩水と淡水が混ざる場所で育っているので、特別である。私の訪問の目的はメゾン・ド・ブリクールでのランチ。

レストラン
□Maisons de Bricourt:メゾン・ド・ブリクール
1, rue Duguesclin, 35260 Cancale Tel: 02.99.89.64.76
2ツ星レストラン。ルレ・エ・シャトー。オリヴィエ・ロランジェ氏の料理は繊細で香り豊か。ブルターニュの魚介類を堪能できる。
シェフはケルト人であり、その文化を大切にしている。シェフによると、「ケルト人はチーズ、きのこを食べない。カキはブルターニュで有名な海産物であるが、これには2種類ある。カンカレーズはブロンとも呼ばれ、丸くて薄い形。ミネラル分が多い風味。クルーズは、ジャポン、ポルトゲージュとも呼ばれ、下が膨らんだ形、風味はナチュラル。クルーズ種は一時病気でだめになった時に、日本から輸入されたことがあり、ジャポンと呼ばれた。カキは食材の王であり、オマールは王女である。そしてクリスマスには必ずオマールを食す。オマールの雌は胴の幅が広く、ミソが黒い。雄のミソは茶色。」とのこと。敷地内にはバター小屋もあり、近くのおばあさんから買い取ったという手作りバター機は今も現役。木の樽をぐるぐる回して撹拌して脂肪を固め、分離した水分を木の樽が吸うしくみ。その後水を入れて脂肪以外の成分を2回洗い流して完成。料理はどの皿もスパイスとハーブがふんだんに使われていて感動的。(1999/8/23)

●キブロンQuiberon


キブロンは海に15kmほど細長く突き出た半島の先端にある小さな街。白い砂浜と紺碧の海を楽しむ夏のリゾートとして人気が高い。内陸から半島の先端に向かう途中、土地が極端に狭くなり、一本道の両側まで海が迫っている。お菓子的には有塩バターのキャラメルで名高いル・ルーさんのお店。

アクセス
パリ・モンパルナス駅からオーレイまでTGVで約3時間30分。キブロン行きに乗り換え、約1時間。

観光スポット
□ベル・イル(Belle-Ile)
キブロンから船で45分の“美しい島”。岬巡りと洞窟探検ができる。

お菓子屋さん
□Le Roux:ル・ルー
18, rue du Port Maria, 56170 Quiberon Tel: 02.97.50.06.83
パリでも有名なチョコレート&キャラメル屋さん。シェフ・パティシエはアンリ・ル・ルー氏。ここのボンボン・オ・ショコラはフランスのチョコレート屋さんのランク付けの本『クロックー・ド・ショコラ』で、フランスに3軒しかない5タブレットに選ばれている。名物有塩バターのキャラメル(C.B.S)はとろけるおいしさ。紅茶、チョコレート、りんご、ジンジャーなどの種類がある。ボンボン・オ・ショコラも美しい。そば粉、抹茶、キャラメル、胡椒、プラム入りなども。アトリエの中では若い女性が、黙々と大きな銅鍋の中身を温度を測りながら木べらで混ぜ続けている。伸ばしたキャラメルをカットしたり、ラッピングはスイス製の機械でする。室内は甘い匂いで満たされている。キャラメルは箱に入った詰め合わせか、量り売り。(1999/8/25)

□Maison Riguidel:メゾン・リギデル
38, rue de Port Maria-BP67, 56170 Quiberon Tel: 02.97.50.07.41
海岸沿いのパン、お菓子屋。1893年創業。クイニー・アマンはおすすめ。(1999/8/25)

レストラン
□Le Port Maria:ル・ポルト・マリア
海岸沿いの魚料理のレストラン。リエットとメインを選べる77FFの定食がある。メインは焼きいわしのサフランライス添え。ワインはミュスカデ(Domaine du Paradis)。いわしとごはんなんて日本的でいい。しかも目の前は海。(1999/8/25)

●カンペールQuimper


カンペールはブルターニュの西端フィニステール県の中心都市。ステール川とオデ川が1つになって流れる静かな川のほとりにある。古くて美しい家並みが続く。そして職人芸の手描き陶器を生んだ街。民族的ないでたちの男女や草花を、青や黄色、薄紅色などで描いた伝統的な陶器である。

アクセス
パリ・モンパルナスからTGVで約4時間30分。レンヌから約2時間20分。

観光スポット
□陶器製作所HBアンリオ(HB Henriot Faienceries)
rue Haute BP 1219, 29000 Quimper Tel: 02.98.90.09.36
ブルターニュ独特の模様が描かれたカンペールの陶器の工房。製作行程を見学することができる。販売もしている。隣に陶器美術館がある。並びにはお土産用のお菓子屋さんもあり、カンペールの模様の缶に入ったガレット・ブルトンヌやマドレーヌ、サブレなどを置いている。試食させてもらったが意外においしい。ここに海藻アイスなるものがあるが、ほのかに昆布の味。(1999/8/26)

お菓子屋さん
□Boule de Neige:ブール・ド・ネージュ
14, rue des Boucheries, 29000 Quimper Tel: 02.98.95.88.22
MOFシェフの店。名物トルシェットの屋台あり。これは生地にヘーゼルナッツをのせて薄く焼いたもの。しけったかわらせんべいのよう。(1999/8/26)

グルメスポット
□Manoir du Kinkiz:マノワール・デュ・キンキズ
75, chemin du Quinquis-Ergue-Armel, 29000 Quimper
Tel: 02.98.90.20.57
シードルの醸造所。シードルCidresは元々スペインで作られていたもので、こちらでは11haで25種類のりんごを栽培している。そのうちシードル用は10種類。りんごのタイプは、Douces(甘味)、Douces-Ameres(甘・苦味)、Ameres(苦味)、Acidules(酸味)の4つ。収穫には3ヶ月の季節労働者を頼む。落ちたりんごを拾い、水で洗ってプレス機で搾る。そのまま3時間おいて発酵させ、樽かステンレス槽で2~3ヶ月熟成させ、アッサンブラージュし、瓶に詰めて2~3ヶ月で出荷。年間5000本の生産量。アルコール度数は6度。この他にアルコール度数40度のオー・ド・ヴィー・ド・ポムと、果汁とオー・ド・ヴィーを合わせたポモーPommeau(アルコール17度)を生産する。ポモーはアペリティフとしてフォアグラと合わせると良いとか。(1999/8/26)

レストラン
□Crêperie de La Place au Beurre:クレープリー・ド・ラ・プラス・オ・ブール
2, Bis Place au Beurre, 29000 Quimper Tel: 02.98.95.49.88
有名クレープリー。店内は狭いが、広場にもテーブルを並べている。お皿はもちろんカンペールの絵皿。ガレットとサラダをシェアする。飲み物はもちろんシードル。クレープは甘いスクランブルエッグとオレンジマーマレードなんていうのもある。リンゴのクレープはおかわりするほどおいしかった。2階のキッチンで、おにいさんが陽気にクレープを焼いていた。(1999/8/26)

□Café de L'Epee:カフェ・ド・レペ
14, rue de Parc, 29000 Quimper Tel: 02.98.95.28.97
ブラッセリー。スペシャリテは海の幸盛り合わせ(ラングスティーヌ、クラブ、カキ、Griseという小海老など)。コトリアッドあり。ブルターニュ版ブイヤベースの「コトリアッド」は、白身の魚とムール貝のごった煮。中に入っていたじゃがいもがおいしかった。意外にも豚肉が好評。付け合わせの茹でたじゃがいももいい。(1999/8/25)

●ヴァンヌVannes


ヴァンヌは“小さな海”を意味するモルビアン湾に面する、城壁に囲まれたこじんまりした街である。9世紀にはブルターニュの中心として勢力をふるい、ブルターニュがフランスに併合されてからは、小さな港を有する活気のある街として賑わってきた。

アクセス
パリ・モンパルナス駅からTGVで約3時間10分。

観光スポット
□共同洗濯場Vieux Lavoirs
17世紀の共同洗濯場あと。川沿いにあるその建物は、その昔川に向かって一列で洗濯をしていたとか。

お菓子屋さん
□La Huche a pain:ラ・ウッシュ・ア・パン
pl. des Lices, 56000 Vannes
マルシェの隣のパン、お菓子屋さん。ブリオッシュ・ブルトンというリンゴ入りのパンがおいしかった。(1999/8/25)

グルメスポット
□リス広場の朝市
水曜と土曜にある屋内の市場。小学校の体育館位の広さに、パンやら乳製品やらの店が軒を連ねている。入口近くのソーセージ屋では、カウボーイハットをかぶったお兄さんが、気前よく試食させてくれる。サラミのように細いものから太いもの、ナッツの入ったものなど形は様々。いかにも農家のおばちゃんが焼いたという感じのパンやお菓子の店には、アルミに入ったりんごのクイニー・アマン。結構おいしかった。これを手作りの暖かみというのかな。牛の看板の乳製品の店には、グエルGwellというブルターニュのヨーグルト(9FF/500g)、乳脂肪分0%のフロマージュ・ブラン(9FF/500g、乳脂肪分が20%だと11FF、40%だと12FFとなる)、ジュースの空き瓶に入ったレ・リボLait Ribot(10FF/L)などがある。レ・リボはブルターニュの伝統的な飲み物。牛乳から乳脂肪分を除いたもので、断食の金曜日にガレット・ブルトンヌと一緒に食べられていた。グエルは刺激臭があって、酸味が強い。フロマージュ・ブランはとろとろでさっぱりしている。(1999/8/25)

●ラ・ロッシュ・ベルナールLa Roche-Bernard


アクセス
パリからTGVでル・ボールLa Bauleまで約3時間。そこからタクシーで30
分。

レストラン
□L'Auberge Bretonne:オーベルジュ・ブルトンヌ
2, place du Guesclin, 56130 La Roche-Bernard Tel: 02.99.90.60.28
2ツ星レストラン。ルレ・エ・シャトー。あるシェフがここのカキのジュレが最高と教えてくれたので訪れたのだが、その料理はあいにくなかった。宿泊もできる。(2003/10/26)

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