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【フランスおいしい旅ガイド】ノルマンディーの都市別食べ歩き方

美食の国フランス。フランスの各地方には、その風土を活かした料理や伝統的なお菓子があります。フランスを20の地方に分けてそれぞれの特徴をご紹介します。今回はノルマンディー地方です。

ノルマンディNormandie

フランス北西部にあって、英仏海峡に臨む地方。8世紀の末に北方バイキング(ノルマン)が進入し、911年にルーアンを首都としてノルマンディ公国を建国したことに始まる。この地方で英仏2国は長年に渡り衝突した。1066年にノルマンディ公ウィリアム1世がイングランド征服に成功した模様は、バイユーに残るタピスリーが物語っている。1204年フランス王国に併合され、14~15世紀の百年戦争の際には戦場と化した。その末期に活躍したジャンヌ・ダルクは1431年5月30日、ルーアンで火刑に処されている。最終的には1468年フランス領となった。また、1944年第2次世界大戦末期には、連合軍のノルマンディ上陸作戦の舞台ともなった。

気候は温暖、風光明媚な土地柄で、セザンヌ、モネら画家達もこの土地を好んだ。ノルマンディの内部ではコクのあるバターやチーズ、ミルクなどの乳製品が生産される。リンゴの果実園も多く、ほとんどの農家ではリンゴの醸造酒であるシードルの小屋がみられる。海岸沿いには中小の漁港があり、漁業も主要産業の1つである。

データ
県名:セーヌ・マリティムSeine-Maritime、ウールEure、マンシュManche、カルヴァドスCalvados、オルヌOrne
旧地方名:ノルマンディNormandie
主要都市:ルーアンRouen、カーンCaen

特産品
ルーアンの鴨、ドーバー・ソール、クレアンスの人参(AOC)、イジニーのバター(AOC)

アルコール
シードル、カルヴァドス、ポワレPoiré(洋梨のシードル)
ベネディクティンBénédictine(16世紀初頭、フェカンのベネディクト派修道院で作り出された様々な薬草のリキュール)
*食事の間にカルヴァドスを飲んで消化を促進することを「ノルマンディの穴」という。

お土産物
ルーアンのリンゴの飴、カマンベールなどのチーズ

■都市別ガイド

ノルマンディの入口ルーアンや、モネが晩年を過ごしたジヴェルニーは、パリから日帰り圏内。

●ルーアンRouen


ノルマンディは、8世紀の末に北方のバイキング(ノルマン)が侵入し、ノルマンディ公国を建国したことに始まる。当初ノルマンディ公はルーアンに首都を置いたが、その後ノルマンディを2つに分けてセーヌ河口付近をオート・ノルマンディ、西のコタンタン半島周辺をバス・ノルマンディとし、ルーアンとカーンをそれぞれの首都とした。ルーアンはかつてノルマンディ公国の首都として栄えた街。現在でも北フランス有数の大都市で、フランス第3の商業港である。またここはジャンヌ・ダルクが没した街でもある。パリから約140km、街の真ん中をセーヌ川が流れる。木の梁と柱を組み合わせて作った木骨組み造りの独特な建築が、印象派達に愛された景観に美しい彩りを加える。

アクセス
パリ サン・ラザール駅から特急で約1時間10分。

モデルコース
(9:15サン・ラザール駅発→10:23ルーアン着)マルシェ→ジャンヌ・ダルク教会→大時計→大聖堂→お菓子屋さんめぐり(所要半日)

観光スポット
□大時計通り(Rue du Cros Horloge)
15~18世紀の木組みの家が並ぶ通り。ここは古いルーアンの中心で、1525年に取り付けられたルネッサンスの時計が今でも時を刻む。

□ジャンヌ・ダルク教会(Eglise Ste-Jeanne-d'Arc)
この教会は1979年に再建された現代風の建物で、一面のステンドグラスは見事。15~16世紀のステンドグラスを集め、20世紀の現代風の装飾を補って、連続した絵に仕立てている。白色が特徴的。天井は、バイキングの船の形からインスピレーションを受けたという形。

□ノートルダム大聖堂(Cathedrale Notre-Dame)
12世紀のゴシック様式。13世紀と15世紀に再建される。ゴシックは天に届く高い建物で、北フランスに多い。バラ窓のステンドグラスが特徴。正面の門は後期ゴシック。すすで真っ黒だったものを一部洗ったという。1944年の爆撃で破壊されている。建物は縦が長いラテン十字。この大聖堂は、モネが繰り返し描いている。

お菓子屋さん
□Chocolatier Anzou:ショコラティエ・アンズー
163, rue du Gros Horloge, 76000 Rouen Tel: 02.35.70.59.31
リンゴ型のお菓子、羊型のビスキュイなど。(1999/8/21)

□Le Mirliton (Guy Bregeon):ル・ミルリトン
88, rue de la Republique, 76000 Rouen Tel: 02.35.71.68.18
店名の通り、ミルリトンあり。(2003/10/28)

グルメスポット
□旧市場広場(Place de Vieux Marche)のマルシェ
ジャンヌ・ダルクが処刑されたという広場にこぢんまりとした市が立つ。野菜、果物、乳製品、肉、魚など。場所柄かカマンベールの種類が多い。1リットルのビニール詰めの無殺菌の牛乳は、まったりしていて、甘みを感じる。臭みなどはほとんどない。(2003/10/28)

レストラン
□Quatre Saison:キャトル・セゾン
place Bernard Tissot, 76000 Rouen Tel: 02.35.71.96.00
ホテル・ディエップHotel Dieppeにあるレストラン。ここにルーアンの鴨保存委員会がある。奥には鴨用のオーブンがある。天井にも鴨の絵。(2003/10/28)

□Gill:ジル
9, quai Bourse, 76000 Rouen Tel: 02.35.71.16.14
2ツ星レストラン。セーヌ川沿いにある。お店はモダンで料理もライト。魚料理が特においしい。シェフのジルさんは杏の季節にはミルリトンを作るのだそうだ。(2003/10/29)

●オンフルールHonfleur


オンフルールは16世紀から17世紀にかけて、セーヌ河口近くの海運の街として栄えてきた港町。カナダのケベック州の基礎を作ったサミュエル・シャンプランが船出した街でもある。その後、大型船の寄港地として、海の向かい側のル・アーヴルLe Havreが発展し、漁港としての役目はこちらに譲る。1995年にはこの2つの街は全長2150mのノルマンディ橋で結ばれる。オンフルールはまた、印象派の画家や詩人が活動の場としていた。所狭しと並ぶヨットと、それを取り囲む色とりどりの建物。ゆるやかな石畳の坂道にあるノルマンディ様式の建物。大道芸人までいて、観光地気分は盛り上がる。

アクセス
パリ サン・ラザール駅からリジュー駅まで約2時間~2時間30分。そこからバスで約20分。

お菓子屋さん
□Fabien Baratte et Spluie:ファビヤン・バラット・エ・スプリュイ
17, rue de la Republique,14600 Honfleur Tel: 02.31.89.09.42
タルト・ノルマンディ、カルヴァドス入りチョコレートケーキがおすすめ。(1999/8/21)

□Aux Blés d'Or:オー・ブレ・ドール
41, rue du Dauphin 14600, Honfleur Tel: 02.31.89.28.66
パン屋さん。ビスキュイ・ド・メールあり(1999/8/21)

●カーンCaen


カーンはバス・ノルマンディの中心都市。第2次世界大戦当時、市街の4分の3が破壊されるという壊滅的な打撃を受けたにもかかわらず、数十年で立ち直ったという。料理的にいうと名物は、トリップのカーン風煮込み(カルヴァドス煮込み)。

アクセス
パリ サン・ラザール駅から約2時間10分。

モデルコース
マルシェ→男子修道院→女子修道院→サント・トリニテ聖堂→お菓子屋
(所要半日)

観光スポット
□男子修道院(Abbaye aux Hommes)と女子修道院(Abbaye aux Dames)
男子修道院はウィリアム征服王が寄進して建てたもので、現在は市庁舎として使用されている。ノルマン・ロマネスク様式の代表的建築の1つで、3つの角型の鐘楼が特長。女子修道院の方は、ウィリアム征服王の王妃マチルダが1062年に創建した三位一体教会。

□サント・トリニテ聖堂(Eglise de la Trinite)
11世紀のロマネスク様式をそのままとどめている教会。半月のアーチが特徴的。装飾が少なく、どっしりと力強い。内陣にはマチルダの墓がある。

お菓子屋さん
□Pâtisserie Meslin:パティスリ・メスラン
10, place Malherbe, 14000 Tel: 02.31.85.41.75
昔ながらのお菓子屋さん。リンゴのタルトあり。(1999/8/21)

□Boulangerie Normande D.Breant:ブーランジュリ・ノルマンド・デイ・ブレアン
126, rue Saint-Pierre, 14000 Caen Tel: 02.31.50.22.55
パン屋さん。焼き立てバゲットの種類が豊富。ベーコン入り栗粉のパンがおすすめ。(1999/8/21)

グルメスポット
□マルシェ
市場は結構広い。私たちのお目当てはトゥルグル。
○Ferme du Pot Blanc
14000 Caen Tel: 02.31.31.62.06
朝市のお店。トゥルグル、チーズ、乳製品など。(1999/8/22)

レストラン
□La Taverne de Maitre Kanter:ラ・タベルヌ・ド・メトル・カンテール
1, Av. Du 6 Juin, 14000 Caen Tel: 02.31.50.02.22
フランス全土にあるブラッセリーのチェーンだが、地方料理が食べられる。(1999/8/21)

●モン・サン・ミッシェルMont Saint-Michel


年間200万人以上の観光客が訪れるフランス有数の名勝である。ノルマンディとブルターニュの境に位置し、海岸線から1kmほど沖に突き出た陸続きの島である。ヴィクトル・ユゴーやモーパッサンらが“幻想的で、驚異的”とたたえた僧院がある。行政区分上ではノルマンディ地方に属するが、ブルターニュも自分達のものだと譲らないらしい。ガイドブックでもブルターニュの方に入っていたりする。島の起源は8世紀初めにさかのぼる。当時の司教だったオベールはサン・ミッシェルの夢のお告げにより、トンブ山と呼ばれた高さ約80mのこの地に礼拝堂を建立。その後11世紀から12世紀にかけてロマネスク建築の僧院が、13世紀にはゴシック様式の建築が建てられ、ベネディクト派の巡礼の地として栄えてきた。15世紀には百年戦争に巻き込まれ、フランス革命の際には政治犯の牢獄として使用された。その後1874年に国の歴史的記念建造物に指定され、現在では国立博物館となっている。さすがに入口には行列ができている。

急な階段を登ってまず西のテラスに出る。渡ってきた海の中のくねった1本道が見える。鐘楼の上に立っているのは金箔のミカエル。19世紀末のもの。サン・ミッシェルは足元に龍がいて、悪魔を退治するといわれている。左手にははかりを持ち、最後の審判で天国か地獄かを決める役割がある。お菓子とパンの神様でもある。緑の中庭の周りを127本の石柱が取り囲む、木造屋根の回廊は13世紀のゴシック。黙想のための飾りが施されている。花や蔦の模様に混ざって彫刻家の横顔が紛れていて、おかしい。修道院の食堂も13世紀のゴシック。光を取り込むため、ステンドグラスは単調。ベネディクト派は、食べる間一言も発してはならないという規律があるという。北側には11世紀の回廊と、病院→チャペル→埋葬の場と並んだ部屋、囚人が荷の積み下ろしの為6人がかりで回す木の滑車のある牢獄がある。南側には11世紀のロマネスク教会、食堂、1日6~8時間写本をするという勉強室、図書館、貴賓室等がある。

レストラン
□La Mere Poulard:ラ・メール・プーラール
Grand rue 50170, Le Mont Saint-Michel Tel: 02.33.60.14.01
モン・サン・ミッシェルの名物オムレツ屋。ここはプーラールおばさんが巡礼者に温かいものを出しているうちに、有名になってレストランとなった店。創業1888年。今ではホテルもある。世界各国の有名人のサインが貼ってあるが、日本人のものは天皇とユーミンだとか。外から見える暖炉では、赤いボレロを着たおじさんが淡々とオムレツを焼いている。(1999/8/22)

●その他の町

□カマンベール博物館Musee du Camembert
10, avenue Gal de Gaulle, B.P.32-61120 Vimoutiers Tel: 02.33.39.30.29
ヴィムティエVimoutiersにある。昔のバターやカマンベール製造の道具や古いラベルが展示されていて、テープで解説が流れる。一通り見学を終えて、外のテーブルで、シードルと共に試食。チーズはやや若いせいか、くせがあまりなく食べやすかった。本場で味わうシードルは、想像していたのと違い、フェルミエ香がして、酵母が生きていますといった味。炭酸がしっかりしていて、爽やか。それから部屋に入ってカマンベール製造工程のビデオを見る。(1999/8/21)

□Ferme de la Mimarnel:フェルム・ド・ラ・ミマルネル
D.50-14340, Cambremer Tel: 02.31.63.00.50
カンブルメールCambremerの農家。ここでは脱サラ(元エンジニア)した御主人が、牛の飼育に適したノルマンディで、あえて山羊のチーズを作っている。山羊小屋で説明の後、チーズ作りの実演。山羊は雄2頭と雌30頭のハーレム状態。子山羊が約10頭。1頭が年間800Lの乳を出す。乳は1日2回搾る。この時の温度が39℃。それを急いで20℃に冷やす。Presure(凝乳酵素)を入れると、1日で固まる。これを穴のあいた型に入れ1日おいて、ひっくり返す。上に塩をふる。翌日プラスチックの網の上に置き、両面塩をして2日おく。それから1週間たったものが、フレッシュの状態。さらに2週間たつとドゥミセック。さらに2~3週間で完全に熟成する。衛生管理には気を使っているというが、デモの間中ハエがぶんぶん。フランス人はハエをあまり気にしないのかも。びくびくしながら試食開始。フレッシュのものはシェーブル独特の獣臭がなく、あっさりしていて食べやすい。ノルマンディの豊かな草を食べているせいか、乳の旨みもある。ドゥミセックになると、水分が抜けた分、味が凝縮されてさらにリッチになる。私には、熟成香が出てぴりっとくる5週間ものより、この方がおいしく感じられる。(1999/8/22)

□農家博物館Ferme-Musee du Cotentin
北西に突き出したコタンタン半島のサント・メール・エグリーズSaint-Mere-Egliseにある農家博物館。ここは17、18世紀の伝統的な豪農の家を開放したもの。馬小屋、牛小屋、納屋からパン焼小屋、ダイニングルーム、ゲストルーム等があり、庭にはシードル用りんごプレス臼もある。(1999/8/22)

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