心の奥をのぞくよう 〜津田隆志写真展『水域』
川の水に映るものは
2018年12月29日、この日までということで慌てて銀座ニコンサロンへ。
ホラノコウスケさんのブログで拝見して、
ああ、これを観られて良かった…と思った。
不思議な写真たちは、川の水に映った風景を逆さにしたもの。見れば見るほどどちらが本当の世界か分からなくなってくる。
埼玉県川口市を流れる旧芝川を舞台に制作されたものだそうで、「実は言葉遊びなんですよ」と在廊していた撮影者の津田さんに教えていただく。
mirror / river
都市の繁栄と、それを反映する形で汚染された河川。その河川に反映する都市の像を撮影する。
mirror/river は、このような言葉遊びを元にした作品です。
水に映ったものとは思えないほど鮮明な写真もあれば、全体がゆらいでいるものもある。ノイズは観ている側を不安にする。しかし、この写真たちにおいてはノイズがあるほうが、水面ということを認識できて安心できる。
不思議な不思議な感覚。
こちらも向こうもなく、正解も誤りもない、本当は世界の全てがそうなのではないかと思いながら、そもそも“本当は”とは何だろうと思う。
津田さんは「水の深さで加減が変わるんですよ。浅いほうが反射が強い」と言った。
季節や天候、時間帯で変わるのかと思っていたのに、深さなのか。
水鏡に映る肖像
もう一つのアプローチは、旧芝川の水を汲んで作った水鏡に映る肖像である。
水面に落とした石がまるで光の粒のように見える。
「この写真に惹かれます」と私が言うと、津田さんは「この一枚が撮れたので『水域』が展けています」と言った。
少し怖いけれど覗きこまずにいられない。ギリギリのバランスを取っている少女の内面が、閉鎖河川である旧芝川の水に映し出されている。
水に惹かれる少女は、私自身かもしれない。
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