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背景の勉強

もうすぐ、WEBTOONの連載がスタートする。
しかし、ちょびには大問題があった。

『背景を描くのが遅い!!』

今のペースじゃ、週刊連載は絶対無理なレベルで遅い。
やばい。
どうにかできないか…と、試行錯誤した末、どうにもならん!!となったので、週刊連載をしている漫画家さんにアドバイスを聞く機会を作ってもらった。

週刊現代で『バウンスバック』を連載している、こしのりょう先生。
zoomで2時間も、お話させてもらえた。

結果、『週刊連載』の背中、見えた!!
背景を速く描く方法もそうだけど、それ以上に、こしの先生の漫画の描き方にむちゃくちゃ感動した。

WEBTOON業界、今後、雑誌連載経験をしてない作家がたくさん出てくると思う。ちょびも、そう。
漫画家のアシスタントすら経験したことがない。

そういう人たちに向けて、こしの先生の考え方を伝えたいって思った。
見開き、縦読みの垣根を越えて、漫画を描く人なら、絶対に知っておいた方がいい話だから。

こしの先生のスタートは、とにかく『週刊連載漫画家』になる、だった。
漫画家になる、じゃなくて、週刊連載漫画家。
どうしたら、週刊連載できるのか、ずっと考えていた。
アシスタント2年経験後、週刊連載を取り、そこから何年も描き続けている。

ちょびのWEBTOONを読んで、まず言われたのが「いらない背景がいっぱいあるね」だった。背景描かなくても、話が通じるコマが多い。
zoomで画面共有をしながら、1コマずつ「この背景はどういう意味があるの?」「どうしてここに背景を描いたの?」と質問された。
答えられないコマが9割くらいあった。
そして、答えられるコマの役割は全て「位置関係を説明したいから」だった。

こしの先生は、アシスタントに背景をお願いする時、まず先に感情を伝える。
「この背景、悲しい感じ」「この背景、喜び、嬉しい感じ」とか。
その後で、細かい指示を出す。

これは衝撃だった。
WEBTOONを描いてても、読んでても、背景の感情なんて意識したことが無かった。

こしの先生に話を聞く前の背景はこれ。

このシーンは、前半が『殺人の暗いトーン』になっているので、ここは明るくなるはずの部分。
感情は、平穏、おだやか、安心。
いや!それにしては、影濃い!不穏だわ!
線も多いから、不穏感増し増し!

そして、そのシーンで出てくる、次の背景。

こっちは、こしの先生の話を聞いた後で描いた
。感情は、平穏、おだやか、安心。
窓を多く取って、光が多めに差し込むようにした。
後ろの小物も、アウトラインだけ取って、線を少なくする。
前景の人物も、描きこみは少なく。
何故なら、このコマの主役は「主人公たち二人と、窓から差し込む光、それに照らされた刑事一課の室内」だからだ。

こんな感じで、1話分、全てのコマで伝えるべきことを一緒に整理してもらった。
そして、必要な背景、必要じゃない背景を選別した。

絵がぎっしり入っていると、上手く見える。
ちょびは、そこに頼ってしまいがち。
編集の佐渡島さんにも指摘された。
「絵は漫画の面白さを深めるけど、面白い漫画は絵が入ってなくても面白い」
これはつまり、こしの先生と一緒にやった、選別。
伝えたいことを絞るってことだと思った。

ちょびの漫画は、情報量が多くて読みづらい、とよく言われる。
でも漫画の情報量が多いことは良いことなんだ。
だから、そうじゃなくて、情報を絞ってないから読みづらかったんだ、と腑に落ちた。

選別した結果、3割、描かなくて良い背景を削った。

背景を速く描く方法。
ペンの動かし方とか、クリスタのツールとかで解決しようとしていた。
ちょび…安易~!そんなんじゃなくて、根本。
ここを見直さなきゃいけなかった。

ちなみに、こしの先生は、ちょびの漫画を見ながら、
「このコマは2時間かかる」「ここは3時間だね」
って、ペンを入れる時間を言った。
ちょびは「いや~、そんな、ここに2時間もかかんないっすよ~」と思い、その後ペン入れした時間を計った。

ぴったり2時間かかった。

言われた時間、本当にだいたいその時間だった。
魔法じゃん!!って思った。笑

ちょび、昔マジックをやっていたから分かる。
魔法って思える現象の裏には、途方もなく費やした時間がある。
タネも仕掛けもない。
膨大な時間、それをやったから、魔法みたいなことができる。

こしの先生は、週刊連載をやってきた。その経験や知識は、半端ないのだ。魔法だ。

背景の描き方を、もっと理解したく、バウンスバックを読み始めた。

どんなコマに、どんな背景が入っているか、感情は何か。
教えてもらったことをふまえて読むと、たくさんの発見があった。
体感として、どんなコマにどんな背景が必要かが分かってきた。

背景を速く描きたいと思っている人。
コマの背景、どんなふうに入れたらいいのか悩んでいる人。

ぜひ、この記事を読んだうえで、バウンスバックを読んでみてほしい。
むちゃくちゃ学べる。

そして、背景を学んでいたつもりが、何度読み返しても、途中でいつの間にか漫画の内容を追い始めてしまう。
これが、ネームパワーのある作品なのだ。
こういうのが『面白い漫画』なのか!!すげぇ~!!と思った。

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