「獣の国」第1幕 第26場(獣の巣)
獣の巣
■ 水溜りに顔を付け、俯せに倒れているレベッカ。
■ 水滴がレベッカの頬に落ちる。
■ レベッカが薄目を開ける。
■ 身体を起こし、横座りになるレベッカ。
■ 辺りを見回すレベッカ、その顔は血と泥で汚れている。
■ 石造りの壁に囲われた薄暗い部屋、瓦礫と得体の知れない塵芥が散乱している。
■ 顔を顰め、指先で鼻を押さえるレベッカ。
(レベッカ)…… 鼻が曲がりそう……
■ レベッカの後ろの壁の上方に、四角い開口部が見える。
(レベッカ)(落とされたんだ)
■ 右手を胸に当てながら、レベッカが立ち上がる。
(レベッカ)(手も足も出なかった…… 折れてはなさそうだけど)
■ 左手で側頭部を触るレベッカ。
(レベッカ)(…… 痛い……)
(レベッカ)(けど良かった…… 血は止まってる)
■ レベッカは無線機を手にする。
(レベッカ)(ドルジさんに渡された無線機は ここでは使えないみたい)
■ イヤホンに繋がる襟元のスイッチを左手で触るレベッカ。
(レベッカ)(こっちも駄目だ)
■ 正面にある両開きの扉の隙間から薄明かりが漏れている。
■ 足元に落ちていた拳銃を拾い上げ、扉の陰に身を寄せるレベッカ。
(レベッカ)(出口を探さないと……)
■ レベッカはゆっくりと扉を開ける。
■ 扉の先は通路が真っ直ぐ伸びており、天井からぶら下がった裸電球がぼんやりと光っている。
■ 右側の壁に寄り、拳銃を胸元で構えて歩き始めるレベッカ。
(レベッカ)(大昔の施設のようだけれど 灯りが点いている……)
(レベッカ)(今も使われているってことかしら?)
■ 前方に左への分岐路が見える。
(レベッカ)(灯りが維持されているということは 今でもそれを必要としている人がいるということ……)
(レベッカ)(この電球を辿っていけば 恐らくそのどこかに出入口があるはずだわ)
■ 慎重に分岐路まで進むレベッカ。
■ レベッカは角からそっと顔を出す。
■ 分岐路には電球の光がない。
(レベッカ)(…… この路は捨てる)
■ 分岐路を通り過ぎようとしたその時、レベッカの顔に緊張が走る。
■ 前方に見える十字路、右から大型の猿のようなシルエットがゆっくり動いている。
■ 十字路の裸電球の下、ゆっくりとレベッカの方に顔を向ける獣。
■ 分岐路に身を隠すレベッカ。
■ レベッカの顔、突然の遭遇に動揺している。
(レベッカ)(獣⁉︎)
(レベッカ)(群れを作る習性がある…… 1匹だけの訳がない)
(レベッカ)(人間のにおいに反応するらしいけど)
■ 二の腕を鼻に近づけ、自分のにおいを確認するレベッカ。
(レベッカ)(…… ごみ溜めに落とされたお陰で誤魔化せるかも)
■ レベッカ、角からそっと顔を出し、十字路を確認する。
■ 獣の姿はない。
■ 拳銃を手に、再び歩き始めるレベッカ。
■ 十字路に到着したレベッカ、獣が向かった方向を避けて右に曲がり、裸電球の僅かな光を頼りに通路を慎重に進んで行く。
■ 通路の終端に近づくと、遠くから微かな嗚咽と荒い呼吸音が聞こえてくる。
■ 陰となる位置で片膝を突いて身を低くし、音のする方向を確認するレベッカ。
■ 真っ直ぐ繋がったやや幅の広い通路の片側には、赤く塗られた鉄格子の嵌った小部屋が幾つも並び、手前から2つ目の小部屋の扉が開いている。
■ 音を立てないよう静かに近づき、その小部屋の中をそっと窺うレベッカ。
■ 小部屋の中では、獣がこちら側に背を向け激しく腰を振っており、獣の両足の間からは血だらけの白い脚が見える。
■ 激しい怒りの表情のレベッカ。
■ レベッカは拳銃を両手で正面に構え、獣の背中に銃弾を撃ち込む。
■ ゆっくりと振り返る獣。
■ 更に撃つレベッカ。
■ 銃弾が獣の額を抉る。
■ 獣に駆け寄り、回し蹴りを放つレベッカ。
■ レベッカの右足の甲が獣の顔面を捉える。
■ 鉄格子の隅へ蹴り飛ばされる獣。
■ レベッカは、崩れ落ちた女を庇うように立ち、拳銃を構える。
■ 女の股からは白濁した液体が零れ、血と混じりながら太腿を伝っている。
■ 鉄格子を背に立ち上がる獣、レベッカの強烈な一撃でひしゃげた顔を更に歪め、まるで笑っているかのような表情でレベッカを見つめる。
■ 複数の足音が近づいてくる。
■ 唇を噛むレベッカ。
■小部屋の中で立ち上がった獣の背後に、鉄格子を隔てて3匹の獣が姿を現す。
■ 眦を決し、拳銃を構えるレベッカ。
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