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実名制コミュニティと匿名制コミュニティを6つのポイントで徹底比較!

実名制にするか、匿名制にするか…。

メンバーがコミュニティに入るときには一人ひとりを判別できる呼称を何かしら付与することになるので、コミュニティがスタートする前の段階で実名制か匿名制かを決めておく必要があります。

まだ存在しないコミュニティのことを想像するのはけっこう難しいことなのですが、その割にはその後のコミュニティ全体に影響する大事な意思決定でもあります。実際、コミュニティについてご相談を受けるときにも頻出する話題です。

どちらを選ぶかによって実名制のFacebookグループを使うかどうかなど活用するツールの選定も変わってきますし、ルール・カルチャー・コミュニケーション等のデザインも全く別物になることも。

コミュニティに必ずついてまわる「実名制か匿名制か?」という判断をもう少しカンタンにしたい。今回の研究にはそんな想いが込められています。

この研究成果では、実名制と匿名制を比較するカタチで解説します。以下の図がその比較表です。これだけだと分かりにくいと思うので、記事のなかでしっかり解説していきます。

コミュニティマネージャーの方はもちろん、どんなタイプのコミュニティに参加するか迷っている方や、コミュニティのことをもっと知りたい方にも読んでいただけたら嬉しいです!それではいきましょう。

※少し長いので、気になる箇所だけ読んでいただいても構いません!



実名制と匿名制の使い分け

まずは、具体的にどんなコミュニティで実名制と匿名制が採用されているのでしょうか?実名と匿名のハイブリッド方式を採用しているコミュニティもありますし、個別具体の状況に左右されるので、あくまで傾向です。

実名制が採用されやすいコミュニティ

リアルな接点が存在する、コラボレーションするなど、具体的な実践が重視される場合は実名制が採用されやすいようです。

  • キャリアアップやネットワーキングを目的としたコミュニティ

  • 医療や法律など信頼性が重要視されるテーマのコミュニティ

  • 教育機関や研究機関のコミュニティ

  • 地域への密着度が高いコミュニティ

匿名制が採用されやすいコミュニティ

趣味や嗜好にまつわる雑談、悩みの吐露など、自由なコミュニケーションが重視される場合は匿名制が採用されやすいようです。

  • コンプレックスやメンタルヘルスなどの繊細な話題を扱うコミュニティ

  • 自由でオープンな意見交換を重視する掲示板的なコミュニティ

  • レビューやクチコミを書き込むコミュニティ

  • 創作活動や趣味を共有するコミュニティ

もちろんメリットとデメリットがある

使い分けを把握したことで、大まかな傾向が見えてきましたね。ここからはより詳細に実名制と匿名制の特徴を捉えていきましょう。そのために、メリットとデメリットを比較します。

実名制のメリットは匿名制のデメリットでもあり、実名制のデメリットは匿名制のメリットでもあります。多くの場合メリットとデメリットは両立が難しいトレードオフ(いわゆる、あちら立てればこちらが立たぬ状態)となります。

今回扱うトレードオフは以下の6つです。

  • 信頼性と自由度

  • 関係性と多様性

  • 定着率と流動性

  • 安全性とプライバシー

  • スキルマッチとアイデア発想



1. 信頼性と自由度から考える


1-1. 実名制のメリット・デメリット

投稿者の身元が明らかになることで情報の信頼性が高まり、虚偽情報や悪意のある投稿が抑制されることが実名制のメリットとして挙げられます。また、発言に責任を持つことで建設的な議論が期待でき、自分の意見を明確に主張しやすくなります。自分の専門性やスキルをアピールしやすくなるのも実名制の特徴です。

一方で、デメリットとしては、発言内容に慎重になることで自由な意見交換が制限される可能性があることです。意見の対立や批判にさらされる可能性もあり、発言への心理的負担が大きくなる傾向にあります。他者からの評価を意識するあまり、自由な自己表現が制限されたり、コミュニティへの参加に抵抗感を感じる人が出てくるケースも。

1-2. 匿名制のメリット・デメリット

自由な意見交換がしやすいことが匿名制のメリットとして挙げられます。また、批判や反論を恐れずに意見を発信できることから発言への心理的負担が少なく、多様な意見や体験談が集まりやすくなります。他者からの評価を気にせず率直に自分の個性や興味関心を表現できるのも匿名制の特徴です。

一方で、デメリットとしては、情報の信頼性が低くなる可能性があることです。情報源の特定が難しく、無責任な発言や荒らしに対して脆弱になる場合もあります。

1-3. 双方のデメリットへの対策

実名制のデメリットである発言の心理的なハードルや自由度の低さについては、コミュニティ運営者がファシリテーションしたりオンボーディング(先行研究あり)を丁寧にすることによってカバーすることができます。

また、匿名制のデメリットである情報の信頼性の低さについては、信頼性が必要ではないテーマ選びや荒らしに対する的確な対応(ルールや管理体制の整備)によって底上げできるでしょう。



2. 関係性と多様性から考える


2-1. 実名制のメリット・デメリット

メンバーの属性が明確であるためターゲットを絞ってコミュニティを運営しやすい点が実名制のメリットの1つ。メンバーの積極的なエンゲージメントも期待できます。オフラインでの出会いや関係構築につながりやすく、リアルな友好関係が育まれる可能性もあります。

一方で、デメリットとしては、メンバーの属性が偏る可能性があり、多様な意見や価値観に触れる機会が限られる可能性があることです。空気を読み合ってしまったり、場合によっては現実の人間関係に波及することもあるかもしれません。

2-2. 匿名制のメリット・デメリット

幅広い属性の人々が参加しやすく、多様な意見や価値観に触れられることが匿名制のメリットとして挙げられます。気軽に参加できるため、多様なメンバーのエンゲージメントを促しやすく、幅広いネットワークを形成しやすくなります。また、リアルな人間関係と無縁の場であることで、気軽に交流を楽しむことができます。

一方で、デメリットとしては、メンバーの属性が不明確なため、コミュニティ運営が難しくなることがあります。メンバーの目的やエンゲージメントにばらつきが出やすくなります。深い人間関係を築きにくく、オフラインでの交流につながりにくいという側面もあります。

2-3. 双方のデメリットへの対策

実名制のデメリットであるメンバーの多様性の低さは必ずしもネガティブではありません。多様性が低く均一性の高いコミュニティはその分カルチャーを作りやすかったり共通言語の多さからコミュニケーションがスムーズだったりします。それでももし多様性を担保したい場合は欠けている属性のメンバーを重点的に集めたり、異なるメンバー属性を持つコミュニティと合同でイベントやプロジェクトを推進することも効果的です。

また、匿名制のデメリットである関係性の築きにくさへの対策としては、定期的に実名制イベントを開催したり、メンバー同士で1on1ができる仕組みを用意してその場では実名でコミュニケーションしてもらう、などが考えられます。



3. 定着率と流動性から考える


3-1. 実名制のメリット・デメリット

メンバー同士の信頼関係と責任感に基づいたコミュニティ運営が可能になることが実名制のメリットの1つです。それを活かせば定着率を高めることができますし、長期的な活動にも適しています。

一方で、デメリットとしては、メンバーの入れ替わりが少なくなりやすく新しい刺激を得にくいという点があります。新たな視点や発想を取り入れにくくなれば、コミュニティが停滞してしまう可能性もあります。

3-2. 匿名制のメリット・デメリット

参加のハードルが低いため、既存メンバーとは性質の異なる新規メンバーが集まりやすいことが匿名制のメリットとして挙げられます。気軽に参加できるため、コミュニティの活性化につながる可能性もあります。

一方で、デメリットとしては、メンバーの定着率が低くなる可能性がある点でしょう。メンバーの帰属意識が比較的育ちにくく、コミュニティへの貢献意欲が低下する可能性もあります。そのため。コミュニティの継続が不安定になりやすい傾向もあります。

3-3. 双方のデメリットへの対策

実名制のデメリットであるメンバーの固定化は、新規メンバーを重視したコミュニティ運営によってカバーすることができます。新しい発想やアイデアをもたらしてくれそうなメンバーを特に重用し、コミュニティを攪拌するイメージです。

また、匿名制のデメリットである定着率の低下については、オンボーディング(先行研究あり)のプロセスを洗練させることで対処可能でしょう。



4. 安全性とプライバシーから考える


4-1. 実名制のメリット・デメリット

メンバーの身元が明らかなため、不適切な行為を抑止しやすい安全な環境であることが実名制のメリットとして挙げられます。問題が発生した際には責任の所在が明確になるため、コミュニティの秩序維持に役立ちます。そこにさらにメンバー同士の相互の信頼関係に基づいた安心感もプラスされます。

一方で、デメリットとしては、個人情報の管理が必要になるケースがあることです。プライバシーの懸念からメンバーが心理的に萎縮してしまうかもしれません。それによって自由な意見交換が阻害されるケースもあります。

4-2. 匿名制のメリット・デメリット

プライバシーが保護されやすく、個人情報の流出リスクが低いことが匿名制のメリットとして挙げられます。プライバシーを気にせずメンバーが自由に発言できることが期待できます。

一方で、デメリットとしては、なりすましや荒らしを防ぎにくくなる点です。コミュニティ内で不適切な言動によって安全性が脅かされる可能性もあります。

4-3. 双方のデメリットへの対策

実名制のデメリットであるプライバシーの保護の難しさについては、一般的なプライバシー対策を取ることでクリアできるでしょう。不正アクセス等への対策が実装されている運営ツールを利用することも大切です。

また、匿名制のデメリットである安全性の低さについては、荒らしを早期発見できる運営ツールを利用したり、言動についてのルールを明確にすることで対処できるでしょう。



5. スキルマッチとアイデア発想から考える


5-1. 実名制のメリット・デメリット

実名で参加することで、各自の専門分野におけるスキルを積極的に提供し合える環境が生まれる点が実名制のメリットです。これにより、新たなプロジェクトが生まれる可能性が高まります。

一方で、デメリットとしては、メンバーが既存の評価や立場を気にするあまり、画期的なアイデアの提案をためらってしまう可能性があることです。また、権威あるメンバーがいればその意見に流されやすくなり、多様な視点からのディスカッションが阻害されるケースもあります。

5-2. 匿名制のメリット・デメリット

自由な発想が促進され、斬新なアイデアが生まれやすいことが匿名制のメリットとして挙げられます。匿名であるためメンバーが既存の枠組みにとらわれずに思考を巡らせることができ、アイデアが発想されやすい環境だと言えます。

一方で、デメリットとしては、スキルを出し合って実際にそのアイデアを実現することが難しい場合があることです。匿名であるためメンバーの専門知識や経験が明らかにならず、コラボレーションしにくくなるからです。

5-3. 双方のデメリットへの対策

実名制のデメリットである自由なアイデアが生まれにくい状況は、自由闊達なディスカッションを支援するファシリテーターによって解決できるでしょう。ワークショップを通じてアイデアが発想しやすいコミュニケーションをデザインすることも効果的です。

また、匿名制のデメリットであるスキルマッチの難しさについては、各自のスキルや専門性を公開リスト化することによって解決できるでしょう。メンバー同士が横でつながれる仕組みを用意することで「そのスキルならあのメンバーが持っている」という相互認識が生まれることでも改善できます。



6. 評判と挑戦から考える


6-1. 実名制のメリット・デメリット

メンバーの実名が公開されることで、その個人の評判にポジティブな影響を与えられることが実名制のメリットの1つです。実名での活動は、個人のキャリア形成に寄与する可能性もあります。

一方で、デメリットとしては、ネガティブな評判が個人の評判を損ねる可能性もあることです。そのことが挑戦を阻む要因になることもあるでしょう。

6-2. 匿名制のメリット・デメリット

匿名であることで、個人の評判に直接的な影響が少ないことが匿名制のメリットとして挙げられます。自由な試行錯誤が可能で、失敗を恐れずに挑戦できる環境となります。

一方で、デメリットとしては、コミュニティでの活動が個人の評判に貢献しにくいことでしょう。匿名であることで、個人の貢献が可視化されにくくなります。

6-3. 双方のデメリットへの対策

実名制のデメリットである失敗を恐れてしまう傾向については、コミュニティ運営者からの積極的な支援が効果的でしょう。また、コミュニティ内で仲間や協力者を募集できる制度を用意するなど、メンバー同士でサポートし合う体制ができればさらに挑戦しやすくなるはずです。

また、匿名制のデメリットであるコミュニティ内の貢献が個人の評判に波及しない点については、本人の許可を得て実名で記事への掲載やイベント登壇をしてもらう機会を提供すると効果的でしょう。



この研究成果の活かし方

いろいろな角度から実名制コミュニティと匿名制コミュニティの特徴を整理してみました。それぞれのメリットをブーストさせつつ、デメリットを抑えるような施策を考えてみると、コミュニティ運営の参考になる知見が得られるはずです。

また、コミュニティに所属している方にとっては、そのコミュニティの特徴を把握し、そこでの振る舞いをチューニングするために活用できる内容かもしれません。

振り返りのために冒頭の表をここにも置いておきましょう。

今回の研究成果が、コミュニティの特徴に合わせた関わり方を模索するみなさんにとっての一助となれば嬉しいです!



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