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近所に老夫婦が暮らしている家がある
二人は小さな犬を飼っている
愛情を注いでいることが、私にも伝わる
部屋にいると、外から、犬に話しかけている声が聞こえている
愛情に満ちた優しい声だ
老夫婦には子どもがいるのだろうか
そして、独り立ちしてどこかで家庭を築いているのだろうか
老夫婦は第二ステージの人生を楽しんでいるように見える

とある日、
私が自動車で出かけると、犬が道路の前に出てきた
スピードを緩めて近づいていく
しかし、一向に逃げる気配がない
つぶらな目をして、こちらを見続けている
自動車を止めると、おじいちゃんが出てきた
「こら、だめだよ」
と犬に優しく声をかける
抱き上げて私に一礼をして、家の中へ入っていった

同じことは数回続いた
犬は自分がひかれるという危機感もなく、いつもこちらをつぶらな目で見続けている
そして、おじいさんが出てきて、抱き上げていく

愛しているものを大切にすることは当たり前のことだ
でも、愛しているものが少しでも自分で生きていけるようにするために
助けないことも必要かもしれない
そう思った近所での出来事

三浦健太朗


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