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サイコ(1960年)

文句のない面白さ。

物語は前半と後半に分けられる。
前半はマリオンが、職場から四万ドルを横領して逃げるパート。
そして、彼女はベイツ・モーテルのシャワールームで殺される。
後半は私立探偵のアボガーストと、マリオンの恋人のサムと、彼女の妹ライラが、失踪したマリオンを探すというパートになる。

マリオンはそもそもなぜ四万ドルを盗んだのか。
これは現金をもってきた客が「金で幸せを買うのではない。金で不幸を追い払うんだ」と言ったことがひとつのきっかけになっているのだろう。その前段階として、恋人のサムとのあわただしい逢引に嫌気がさしてきていて、結婚するか別れるか、という選択をしようとしている時期であったことが一番の要因だろう。
借金を返し終えないと結婚はできないというサムのために金を盗んだのかもしれないし、金があれば不幸を追い払えると思ったのかもしれない。
金があれば不幸を追い払えるというのは本当かもしれないが、他人の金を盗んでは、幸福にはなれない。他人からなにかを奪っても幸福にはなれないのだ。それはマリオンもそうだし、母親とその愛人を毒殺したノーマン・ベイツもそうだ。

本作はすぐれたスリラーであるのはもちろんだが、まっとうな人生訓を伝えてくれる作品でもある。

それにしてもヒッチコックのスリラーは本当にすばらしくて、そのスタイリッシュな演出には感動すら覚える。色あせない、とはこういうことなのだろう。

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