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灼熱の魂(2010年)

ヴィルヌーヴにしては映像の美しさはあまりなかった。舞台が主に戦闘地域だから、というのもあるだろうが、「ボーダーライン」のときはそういう地域を扱っていてもすばらしい構図を見せてくれた。
今回はおもにシナリオのうまさが際立っていた。

母親が亡くなり、その息子と娘は遺言を受けとる。
彼らの父と兄を見つけ出して、手紙を渡すように、というものだった。
母親の人生と、その足跡を追う子どもたちの姿が交錯する。
過酷な真実が次第に明らかになっていく。

ヴィルヌーヴはいつもハードな現実を描くが、そこに知性がにじみでる。いわゆる社会派ではなく、シナリオにひとひねりあるのだ。
今回もすばらしいまとめかたをしていた。ハッピーエンドということではないが、そういうオチにもっていくか、という面白さがある。このオチは他の映画でも類似のシチュエーションがあったが、この手の映画にこのオチを組み合わせるのはうまい、と感じた。

本作での問いは、家族に関するものだ。
血のつながりのある、もっとも近くにいる人のことを、はたして我々は本当に理解しているのだろうか。血のつながりとは、なんなのだろう。それは家族ではあるかもしれないが、すべてを理解しているわけではないのだ。

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