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ディパーテッド

香港映画「インファナル・アフェア」のリメイク。

レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーティン・シーン、マーク・ウォルバーグ、アレック・ボールドウィンといったそうそうたるメンツだ。

映画としてはおもしろいが、スコセッシが撮る必要はなかったと思う。


まず、スコセッシのカラーが薄い。イタリア系移民の話ではないというのもあるし、撮影や編集が冴えない。「グッドフェローズ」と同じ撮影・編集なのに、なぜこうも凡庸なのか。

本家の「インファナル・アフェア」は良くも悪くも香港映画の泥臭さがあったが、本作は悪い意味でアメリカナイズされてしまっていた。


映画としては悪くないというのは、ディカプリオの演技がよかったことと、香港版では茶髪のチンピラみたいだったボスを、ジャック・ニコルソンが演じたことで、凄みが増した点がすばらしかった。


物語としては、マット・デイモンが警察に入るところからはじまる。かれは、子どものころからニコルソン演じるボスにかわいがられている。そのためニコルソンが悪玉であることを知りながら情報提供をする。逆に、ボスのもとに潜入捜査で潜り込むのがディカプリオだ。このだましあいの中で、誰もが本当の自分として生きることができず、強いストレスの中で生きていく。


これほど過酷ではないが、社会で生きるというのはそういうことで、会社で仕事熱心なるふりをする自分、家族の顔色をうかがって幸せを装う自分、町内会でいい人を演じる自分、キャバクラでお金持ちのふりをする自分、と人はいろいろなペルソナを持っている。では本当の自分はなんなのだ、ということを考えると、自分でもよくわからなくなる。どれも本当の自分ですよ、あなたはそのままで十分素敵ですよ、というのは模範解答で、それもそうかなとは思うが、納得はできない。

とかく生きるのは難しく、本作の登場人物たちが嘘に嘘を重ねてボロボロになっていくのもよくわかる。社会に生きるとはそういうことだよな、などと思う。


豪華な俳優陣と、スリリングな展開。一級の娯楽作品だとは思うが、小生はやっぱりレイ・リオッタやデ・ニーロが出てきて、ママが作ったスパゲッティ・トマトソースを食べてげらげら笑うスコセッシらしい映画を観たかったなと思う。

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