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「コントラクト・キラー」(1990年)

アキ・カウリスマキの作品をちゃんと観たのははじめてだ。
いわゆるオフビートというのが感覚的に体感できる。

主人公はイギリスで働いているフランス人アンリ。
突然会社をリストラされる。職を失った彼は、再就職する気もなく、自殺を試みるがうまくいかない。
結局、殺し屋を雇って、自分を殺してもらうことにする。
殺し屋を待つ間、パブにいくと、そこでマーガレットという花売りの女に出会う。
話すうちに、命が惜しくなる。しかし、殺し屋は彼を追ってくる。

劇中。ビリー・ホリデイがよくかかる。そして、ジョー・ストラマーがパブで演奏しているシーンでは、エルヴィスの写真が飾ってある。
1990年に公開された映画だから、1989年ごろの世の中を反映しているのだと思う。
1989年はベルリンの壁が崩壊した年だ。そして、本作の舞台であるイギリスはサッチャー政権の最末期。当時は経済にも不安があったようだ。
1980年代後半のアメリカは経済成長を続けていた。だから、アメリカに対するあこがれがあちらこちらに出てくるのだろう。

主人公のアンリが死のうとしたのは、不安定な世の中で生きていくことに希望を見出せなかったのだろう。もっとも、マーガレットと出会うことで、その希望を見出すのだが。
ただ、本当にハッピーかというと、そこまで単純ではない。
一緒に逃げようというマーガレットにアンリが「国を捨てるのか」と聞くと、マーガレットは「労働者階級に祖国はない」と答える。どこにいっても楽ではないのだろう。
それでもふたりは愛し合っているし、未来はある。それが希望に満ちたものではないにしても。
人生はつらいことばかりかもしれないが、それでも生きる希望を失ってはいけないという、本質的なメッセージがここにある。

https://www.youtube.com/watch?v=jwv22AFP_zI

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