展覧会「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」
「CURATION⇄FAIR」という新しいアートイベントが行われている。
展覧会と、アートフェアを、それぞれ期間をわけて行うイベントだ。
自分は展覧会のほうにいった。展覧会と、アートフェアで取引される作品が同じものなのかはわからない。
会場は九段下にある「kudan house」という施設だった。
ここは普段あまり一般公開されていないそうだ。
1927年に建てられたというから、昭和の最初期だ。
修復などもされているとはいえ、なかなか良い建物だった。
洋風建築なのだが、なぜか和室があったりして、不思議な構造ではある。
展示されていた作品は、作品そのものとしてはさほどインパクトはなかった。むしろ、それを狙っているのではないかとも思う。「kudan house」という建物に、いつもそこにあるような感じで飾られている、インテリアの一部のようだった。
日常生活の中にアートがあるのはいいものだ、と感じた。
もちろん「kudan house」のような素敵な家に住んでいるならば、というカッコがつくのだが。
昭和の上流階級はこういうところで生活していたのだろうか、などと想像しつつ、豊かな時間というものを感じられた。建築も含めたアートにはそういう力がある。
たとえば鈴木英人の絵にはバブル期の空気があって、当時の華やかで経済的に豊かな夢や希望といったものが滲み出している。よくも悪くも当時はそういう時代だったし、彼はその空気を全面的にポジティブに表現している。新作でもそういう作風のままなのは、バブルを楽しみ、今でも似たような生活を続けている人のために描いているのかどうかはわからないが、ここでは深入りせずにおく。
とにかく、「kudan house」には昭和初期の豊かさがあり、そういうものを知らない自分も、その場にたたずむことで追体験することができた。
建物に対する評価ばかりになってしまったが、この展覧会がそういう空気や時間を提供しようと意図していたのなら、本展は成功しているといっていいだろう。
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