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『月歩』vol.3 2021.11.

他者の目のなかのわたしを見るときのあなたは濡れた夏草だった 森山緋紗 私を直接見るのではなく、他者の目に映った私を見る。その時のあなたを私が見ている。他者の視線の中でお互いが視線を交わす。「濡れた夏草」は、陽光に萎れていたのが、雨の後、緑を取り戻したと取った。

曇り空うつさぬ川面 のこさるる時間を知らず我ら生きをり 中野功一 初句二句は景。どこか圧迫感がある。晴れていたら光が反射するが、曇っていると映っていても分かりにくいということだろうか。三句以下は納得の感慨。景と雰囲気が合う。知らないままに生きるしかないのだ。

チェイサーの結露もいつの間にか消えどこまでいつても身体は器 酒匂瑞貴 グラスに付いた結露が、時間が経って流れていった。グラスと中の水を見て、身体とその中の内面を思い描く。水は何に入れても水。自分の内面もそう。しかし器から逃げられないことも、また事実なのだ。

2022.8.3.Twitterより編集再掲