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『キマイラ文語』がネットニュースに

 川本千栄『キマイラ文語』がネットニュースに取り上げられました! 「文語と口語の線引きをやめようと歌人が提言した評論集『キマイラ文語』では~(寺田理恵)」  クリックしてお読みください!

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男性もはまる エモい言葉

2022/10/9 15:00

交流サイト(SNS)の普及や創作物を発表できる投稿サイトの活況を背景に、感情を伝える言葉を集めた本が相次いで刊行されている。若い世代向けが多いが、収録語には古い言葉が目立つ。夏目漱石も使った「木下闇(こしたやみ)」、『方丈記』の冒頭で有名な「泡沫(うたかた)」…。なぜ古い言葉が見直されているのか。

「好きなキャラをエモく表現したい」という中学生の要望がきっかけで企画された『エモい古語辞典』(堀越英美著、朝日出版社・1782円)は少女漫画のようなカバーながら、男性や高齢者にも好評だ。

『万葉集』の枕詞(まくらことば)から近代文学の言葉や現代でも使う季語まで、「エモさ」重視で選ばれた古語1654語を「星・色・恋・鬼・地獄」などの項目に分けて収録。古典や近代の文学作品での用例を記載した。

発売から約3カ月で5刷2万5千部(9月末時点)を発行。発行元では好調な要因を「若者向けに作ったが、高齢の方も買っている。男女比は4対6程度。日常とは違う言葉への憧れがあるのではないか」とみる。

    なぜ古語なのか。文筆家の著者はまえがきで、「エモい」とされるのはノスタルジックな風景など「今・ここ」ではないどこかに心が奪われている状態だとの見方を示す。その上で、こうした感情を言葉で表現していた時代に使われた古語を「エモい表現の宝庫」と捉えている。

さらに、現代でも「今・ここ」とは異なる世界を演出するために古語が使われると指摘し、『鬼滅の刃』に登場する「上弦の鬼」「下弦の鬼」が仮に「一軍の鬼」「二軍の鬼」だったら―と問いかける。

また編集担当者によると、近代日本の作家や詩人をキャラクター化した人気漫画『文豪ストレイドッグス』『月に吠(ほ)えらんねえ』の影響で、明治・大正の文学が若者文化の中で復活しているという事情もあるという。

    若い女性を対象にした『小さな言の葉の本』(東直子監修、リベラル社・1650円)は、若者に人気の歌人が監修。SNSで使われるタイプの言葉に絞り、約500語を①感情②おいしい③おしゃれ④情景―の4章立てで収録している。

発行元は「古典的な言葉に興味を持つ人も増えていると感じる」とし、季節や風景の表現に秋風の音を表す季語「爽籟(そうらい)」など伝統的な言葉を選んだ。一方、グルメなど「SNSに欠かせない」というジャンルでは「ブルワリー(ビール醸造所)」のような新しい外来語を取り入れている。新語と古語を場面に応じて使い分けており、現代の生活になじみそうだ。

    文献学者が監修した『推しことば類語辞典』(山口謠司監修、笠倉出版社・1430円)は「好き・最高・すごい」では伝えきれない感動をより具体的に表現する言葉を集めた。

推し(応援している人や物)の素晴らしさを発信したい人向き。「掌中(しょうちゅう)の珠(たま)」「鍾愛(しょうあい)」といった古めかしい言葉も含めて、辞典形式で紹介している。ただ、例文は新語やインターネットスラングを交えて示されており、ポップな仕上がり。

    文語と口語の線引きをやめようと歌人が提言した評論集『キマイラ文語』(川本千栄著、現代短歌社新書・1650円)では、短歌に文語を使う効果として、日常語に古語をぶつけることによる異化作用が挙げられている。ありふれた出来事も、格調高い古語を交えて表現することで特別なイベントになるかもしれない。(寺田理恵)

2022.10.17.Twitterより編集再掲