『歌壇』2020年1月号
①高野公彦「作者、読者、読み手」新古今時代の歌人たちは発表前の歌に眼を通し合っていた、そこから〈作りっ放しで歌を発表する私たちはこれでいいのか〉と問う。この指摘は多くの論点を含んでいる。
②高野公彦「作者、読者、読み手」〈読者は気ままに人の歌を拾い読みして楽しむ。しかし、〈読者〉とは別に、じつは〈読み手〉がいる。読み手とは、人の作ったたくさんの歌を、価値判断しながら読む人のことである。〉まあ選者のことだけど。価値判断、というところがポイント。
③吉川宏志は、上田三四二の歌「どんぐりを掌にのせくれぬどんぐりの林を顕(た)たせそこをゆくわれ」について〈病床にいて、孫からどんぐりを手渡された、という場面なのだろうか(…)一粒のどんぐりから幻の林を生み出して、そこを歩いてゆく〉と述べる。良い歌に良い読み。
④吉川宏志「上田三四二」〈(上田には)(癌から)生き延びたことで、自分には書かねばならないことがあるはずだという天命的な意識が生じてくる。意味のない偶然を、意味のある必然に変えようとする思い。〉身に響く文章。この後引かれている歌も全ていい。
⑤吉川宏志「上田三四二」〈(上田は)「何か目に見えないものの援助の手の存在」という表現をしている。「神」と同じではないか、という人もいるかもしれない。だが、「神」という言葉を使うか、使わないかという差は、実は非常に大きい。〉文を書く上での大切な示唆と思う。
2020.1.9.~12.Twitterより編集再掲