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『現代短歌新聞』2023年1月号

①「インタビュー今井恵子氏に聞く」佐藤佐太郎賞ご受賞おめでとうございます。
 〈華道や能、日本画もそうですけど、間のとり方とか空白の作り方とか、暗示的な虚が特色の一つをなしてきた。〉
 日本文化一般にあてはまること。もちろん短歌も。短詩型文学を始め、継がれるところでは継がれていたのだが、近代という時代が見えにくくしてしまったことの一つかもしれない。

②加藤英彦「回顧と展望」短歌の世界だけでなく、国内国外の社会状況にも目を向けた、行き届いた論。特に『歌壇』6月号『現代短歌』7月号が取り上げた沖縄特集、『現代短歌』5月号の「アイヌと短歌」の特集について書き残していることの意義は大きいと思った。

皮うすく剥ぎゆけば掌にあたらしく梨といふ名の水の球体 岡部史 瑞々しい梨の姿が目に浮かぶような歌だ。特に「あたらしく」「水の球体」という部分が美しいと思った。皮を剥いた梨はあたらしいものとして、水の滴るような球体として、主体の手のひらの上にあるのだ。

ほろほろとくずれる時間あなたにもあなたにも逢えないまま春がくる 後藤由紀恵 コロナ禍で人に逢えないままに時間が経っていく。初句二句の時間の捉え方が結句の「春」に呼応している。あなたにも、を2回繰り返して、顔を思い浮かべながら詠っていることを思わせる。

2023.1.28.Twitterより編集再掲