見出し画像

角川『短歌年鑑』令和5年版

①「回顧と展望」阿木津英〈折口信夫は、戦後、ある歌会で「(…)いい文学ができなければ、生じてないのと、同様である。そんな作物はない方が、意味があるといえる」と言ったが、短歌は文学でも芸術でもない、となれば話は変わる。エンタメ系の尺度は、名前が売れるかどうか、商品(短歌)が売れて金が稼げるかどうかなのだから。〉
 概ね言いたいことは分かる。売ることにのみ力点を置き、売れるとわかると飛びついてくるメディアやそれを是とする風潮に対する疑問の気持ちは共感する。何より回りくどくごまかさずにストレートに書いているのがいい。  
 しかし、やはり折口信夫の言う「文学」「いい文学」の定義が曖昧なのが気になる。阿木津はそれに賛同しているようだが、果たして折口と同じ定義を持っているのか、も気になる。短歌は文学なのかどうかというところにまで遡りかねない話だが。

②「回顧と展望」東郷雄二〈若い世代の短歌に見られる最も大きな変化は口語化ではなかろうか。文語に豊富にあった助動詞のほとんどが現代口語で失われた結果として、時間表現が平板になり「今」に焦点が当たりやすくなった。〉
 これは本当に繰り返し言われていることだ。では口語になった時に新しく加わった表現は何なのか。それを考えていきたいと思うのだ。

③「作品点描」広坂早苗 
真闇から雪が匂うよ手を伸ばし肉で外気に触れたのだった 川本千栄
〈雪の降る外気に触れた瞬間の冷たさを歌う一首目。「肉で」触れたという表現に衝撃力がある。〉ありがとうございます!

④「特別座談会 「調べ」の現在」 林和清〈現代の若い世代の小原奈実が文語の調べを駆使して歌うときに心の中で葛藤や違和感はないんですか。〉 小原奈実〈私は口語で歌ができたことがないというか、始めた頃からこんな感じだったんです。〉
    今、私の関心事の一つ、文語で歌が出て来る、という現象。発想は文語、という歌人は割と多いのではないか。何でそうなるんだろう。みんなどうなんだろう。聞いてみたい気がする。

⑤「自選歌集」 言おうか迷っていましたが、、誤植がありました。これは私の字が汚いためです。反省の意味も込めて上げます。(ちょっと笑)
誤:としうろこ鳥の体毛こころとろかせる愛撫の記憶沈めて
正:ヒレうろこ鳥の体毛こころとろかせる愛撫の記憶沈めて 川本千栄

⑥「アンケート特集 今年の秀歌集」令和3年10月~令和4年9月の歌集から3冊を選んで答えました。今年の私のベスト3は
1『湖とファルセット』田村穂隆
2『meal』山下翔
3『おかえり、いってらっしゃい』前田康子
です。どれも自信を持ってオススメします!

2022.12.25.~27.,31.Twitterより編集再掲