『短歌人』2022年12月号
①桑原憂太郎「現代口語短歌のリアリズムとは」
〈本稿は、現代口語短歌のリアリズムについて、もっぱら表現技法の面から議論するのを目的としている。〉
まず、この的の絞り方がいい。そして動画的リアリズム、独白的リアリズム、会話的リアリズムと歌を挙げて分析している。
動画的リアリズム
〈視点は動き、時間も流れている。そしてそのことがよくわかるように、実にダラダラとした叙述になっている。〉
ダラダラとした叙述という指摘は今まであまり無かった。そしてさらにその叙述が韻詩としての美質を持ち得るかにも疑問を呈している。
その後議論は独白的リアリズムと定型の問題、会話文のリアリズムとわざとらしさの回避の問題に踏み込んでいる。とても面白かった。個人的には独白も会話も「発話」と一まとめに捉えているので、この二つの差異を論じた部分をもっと詳しく読みたいと思った。特に会話文の分析はまだ続くのではと思う。
②黒崎聡美「時評」
〈昨年刊行された川本千栄の第四歌集『森へ行った日』は学校という職場や母としての今を見つめ、過去を振り返り、詠まれている辛さや苦しさが読者である私の身体にも感じられるほどだった。〉
〈(『キマイラ文語』では)文語と口語の対立構造に異を唱える。〉
歌集と評論集に同時に触れていただきました。深く読み込んでいただき、とてもうれしいです。
2022.12.27.Twitterより編集再掲