『短歌往来』2019年12月号

①後藤由紀恵「今月の視点」塔短歌会の有志による『2933日目 東日本大震災から八年を詠む』について。
死者の手をこじ開け切った爪ほどの白さの凍月 もう忘れたい 佐藤涼子  
〈掲出歌からはあの日、三月十一日から起こった出来事が少しも過去になっていないことを強く感じた〉

大通りへ出てバスに乗りあの大き金木犀の香より逃げきる 小島ゆかり 逃れたいのは金木犀の香からではなく、母の病いという現実と介護の続く日常からだろう。

旅ゆくは遠くへ帰りゆくごとし枯原は全方位あかるし 小島ゆかり 松尾芭蕉の「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」を踏まえているのだろうか。「あかるし」というがあまり明るくない。諦念のようなものが感じられる。

④石川幸雄「評論月評」〈評論は短歌に明るくない人にも理解できるように書くべきであって、簡単に説明できることをことさら難解な語句やカタカナ語を用いて、衒学的に書かれている文章を目にすることがあるが…。〉同意。人の評論を読むときにも思うし、自戒もしている。

⑤石川幸雄「評論月評」つづき〈ここ数年続けて(現代短歌評論賞の)選考委員を務めている専門歌人四名の平均年齢は七九歳になるが、…〉。えっと思って計算してみたら本当だった。元気だなあ。でも代替わりもそろそろ必要かと思う

2019.12.9.~13.Twitterより編集再掲