"あがり”たくなったら"一回休み”を
20歳を目前に死のうとした人間の提供でお送りします。
私は、現在25歳の人間である。もっと言うと今年の11月に生誕26周年になる。ざっくり言うとアラサーである。そして特に何者でもない。どこにでもいるような居酒屋店員である。最近はメロンパンとココナッツサブレにハマっている、いたって一般的な一般人だ。
さて、私が20歳のときは何をしていただろうか。思い出してみると、これといった記憶がない。実質的に一回死んだ直後だったから。
「20歳」という概念に怯えていた。
大人になるのは怖かった。だって、大人というのは、何かにならなければ許されないから。だというのに、私はなりたい「何か」がまったく思い浮かばないんだもの。辺りは真っ暗、お先も真っ暗。そりゃあ死にたくもなる。
だから私は20歳になる前に首を吊ったわけだ。でも、結局苦しいのが怖くてやめちゃったから、私は今ここで誰に読まれるかもわからない文章を書いている。敗因は「苦しいのが怖い」と思える正常さがちょっとばかり残っていたことだろう。
当時大学生だった私は、とりあえず一回休学。実家に帰る。
私はそこで何をして生きていたのか、びっくりするぐらい覚えていない。なぜだ。ホントのホントに何もしていなかったのだろうか。
一つだけ覚えているのは、密かに退学を決意したその日に、大学の授業に役立つかもと思って取っておいた高校の教科書をすべて捨てたこと。(家庭科の資料集は捨てなきゃよかったな~。)
私は現在、実質5歳。
その後は、泣き落としも使って父親を言いくるめ(言い方がクズ)、大学を無事退学。一人暮らしを再開して、写真学校に通ったもののすぐ挫折したり、人間関係を言いわけに職を転々としたり、大好きな母の死に見舞われながら、どうにかこうにか生きている。
世間的に言う「レールに乗った人生」を歩んでいた私は、あの日死んだ。この肉体は実際死んでいないけれど、こころ的には一回完ペキに死んだのだ。
だから今、私は「どうにでもなれ」と思っている。
ロープの輪っかに頭を通したときも思っていた。「どうにでもなれ」って。あの「どうにでもなれ」はとことんネガティブだった。死んですべてを放棄して逃げて楽になろうとしていた。
今の「どうにでもなれ」はちょっと違う。ポジティブだ。どうせレールからもう外れてしまったのだし、やりたいようにやっていくしかねぇ~ってコブシを天に向かって突き上げている。自由に伴う責任はもちろん引き受ける。その結果のたれ死んだなら、それはそれで最高だ。
人生は物語ではない。
人生は壮大で奇跡にあふれた感動の超大作!なんてものではない。
人生はたぶん、あれだ。すごろく。しかも、ほとんどのマスに何も書かれていない。だから総合的にみれば平穏にゴールしていく人が多いし、稀にでっかいイベントのあるマスにばかり止まって目立つ人もいる。
私は「一回休み」のマスに止まってばかりだった。長くなるからここでは割愛するけれど、いろいろなことがあって、価値観が変わって、ようやく前に進めるようになったのはごく最近の話だ。
そこで気づいたのは、「このすごろくは、私自身がマスに何かを書き足していってもOK」ということ。
何も書かれていないマスに止まったとしても、たとえば「noteを始める」と自分の字で勝手に書いていい。「一日中寝る」「仕事を辞める」「あの人と縁を切る」と書いてもいい。
一回も休まずあがれる人なんていないだろう。
挫折であったり、疲弊であったり、喪失であったり。生きていけば、サイコロを振れない・振りたくないと思う瞬間がきっとどこかで訪れる。その想いが積もれば積もるほど、追い詰められて、空白のマスに「今日死ぬ」と書きこみたくなるかもしれない。
死とは「あがり」だ。サイコロはおろか、空白のマスに文字を書きこむペンも、自由に書きこめるその空白のマスすらも目の前から消えてなくなることだ。
だから、もしあなたが空白のマスに「今日死ぬ」と書きかけたら、とりあえずまずは「一回休み」と書いてほしい。一回じゃ足りない気がするなら、「二回休み」「三回休み」でもいい。
そして、今順調な20歳も、一回休みのマスにいる20歳も、記憶の片隅に置いておいてくれ。「あがりたくなったらとにかく一回休みにしろ」と叫んでいた実質5歳がいたことを。
あの日死んでいたら、私はここであなたに出逢えなかった。それがすべてだ。
20歳を目前に死のうとした人間の提供でお送りしました。
ここまで書いて思ったんだけど、「人生はすごろく」って、つまり人生ゲームのことでは?
…………………。
ま、いっか。実質5歳の言うことだから、細かいところまで真面目に考えないでおいてよ。ね?わかった?
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こちらの私設賞に参加させていただきました!
【2020/05/10 追記】
お返事noteがやってきた!うれしい!
良いんですか?ではありがたく頂戴いたします。