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ここが地獄だとしたらあまりに美しいなと思う

空と雲のすきまを大きな龍が飛んでいく。

その直後、突然降りだした強い雨の中、傘も放り出してステップを踏む。アマガエルたちも一緒に飛び跳ねる。軽く杖のように傘を振れば、雨粒が小さな花びらに変わる。

紫陽花の色彩は、淡い春と鮮烈な夏をつなぐ虹の橋。雨上がりの土の匂い。色濃くなった緑の輝き。この地獄は今日も私たちに無関心のまま、「今」という祝福を歌う。
 










母にとってこの世界は、生きている意味も理由も見いだせないような地獄だったのだろうか。そうだとすればなぜ、この私を産んだのだろうか?この私を世界に存在させれば、それが生きていく意味や理由になると思ったのだろうか?

あるとても冷えた冬の日、母は自ら死を選んだ。その晩は記録的な猛吹雪となり、私の世界からは色が消えた。私は母の生きる意味になれなかった。生きるどころか、死なない理由にすらも。

生きていたくない。

常に心のどこかでそう思っている。暗い運命に立ち向かうヒロインのような強さも、たったひとりのために剣を振るう勇者のような希望も、自分の中には見いだせない。「日常の中にささいな幸せを見つけよう」なんて言説にさえ疲れを感じる。鉛のような体を引きずって、なかなか晴れない心をどうにかなだめて、毎日を生きている。

この世界は地獄だ。

成長しよう努力しようと拡声器を使って笑顔を振りまきながら叫ぶ人。それを横目に早足で通り抜けた先には、そんなの自己責任だと見知らぬ誰かを棍棒で叩く人。慌てて目をそらそうにも、いろいろな場所でいろいろな人たちが取っ組み合いの喧嘩をしている。海の向こうでは、同じ人間どうしが殺しあっている。

生まれた理由も生きている意味も、わからない。幼い頃からずっと。世界に希望を感じたいといくら願っても、苦しくて、苦しくて、できなかった。生きていてよかったと思える瞬間はあっても、生まれてよかったと思えたためしはなかった。

いや、わかっている。生まれた理由も生きている意味も、そんなものはじめから存在しないのだ。ただ私は生まれて今ここにいる、その事実がぽつんとあるだけなのだ。もし生まれた理由や生きている意味をその手にもっているとすれば、それは生きていくために自らが作り出したものにすぎない。

それならば。そうであるならば。私たちはどんなにこの命が苦しくとも、楽しむこと・喜ぶこと・幸せになることを許されているはずではないのか。許していいはずだろう。母の生きる意味にも死なない理由にもなれなかったこの私にすらも。たとえ生まれたこと自体を呪おうと、生きていくこと自体が痛かろうと。

そうでなければ、この地獄が、こんなに美しいわけがない。

だから写真を撮っている。
今ここにある命を祝福し、一筋の光のような救いを得るために。






蒸し暑い日々、低気圧の到来、自律神経には過酷な日々がつづきますね。皆さんいかがお過ごしですか?わたしゃもうヘトヘトです。なんかもう起き上がっていられない。

さて、ただいまコンビニのマルチコピー機の「ネットワークプリント」を使い、写真中心とした折本を配布しております。今月のテーマは紫陽花。カバンの中や手帳のあいだに潜ませて、心を鎮めたいときや一息入れたいときなどにパッと開いてみてはいかがでしょうか。


折本とは?

一枚の紙をカンタンに折りたたんで作る本のこと。今回はA4サイズの紙の表面だけに全ページを印刷し、皆さんの手でちょっと切り折りしていただくだけで小さな冊子が完成します。


ネットワークプリントの利用方法

お近くのコンビニにあるマルチコピー機をご利用ください。A4サイズのカラー片面印刷で1枚60円(こちらは印刷代で、私の収益にはなりません)。フチ・余白・ちょっと小さめ設定は「なし」推奨です。

配布期限が一週間程度となっているので、ご希望の方はお早めに!


◇セブンイレブン
予約番号:96593040
(2023/07/05 23:59まで)
利用法はこちら↓


◇ローソン・ファミリーマート
ユーザー番号:HLWB99BJW5
(2023/07/06 19時頃まで)
利用法はこちら↓


折り方

一か所だけカッターで切れ込みをいれる必要アリです。



月報

おまわりさんも出動するカルガモの親子大行進に遭遇したり、洗濯物を干そうとしたら下にねこがいたり、ひとり焼肉で250グラムの肉を食らったり、なんだかんだで生き延びた六月。

だが雨降る中、紫陽花を撮っていたら上からでかい木が落ちてきた日は、さすがに肝が冷えた。

頭上でガサガサと音がして「鳥が飛び立ったのかな?」と思った次の瞬間、体にずしりとかなりの重量がかかり、真横にでかい木が転がったのである。「は?」と驚嘆が口をついて出た。

幸い傘をさしていたため直撃は免れ、体には何の異常もなく済んだ。ただお気に入りのねこ柄の傘がけっこう曲がった。傘がなかったら脳天直撃で気を失いでもしていたかもしれない。怖。

この場からの帰り、一気に放出されたアドレナリンを落ち着かせようと日本庭園に寄ったが、そこでも近くの木の幹から蛇が滑り落ちてきてビビり倒した。踏んだり蹴ったり。「今日は良くない日なのか」と感じ、めちゃくちゃ気をつけて家まで帰った。無事帰れて良かった。


今月の一曲

ハマいく / ビートDEトーヒ
気が落ちがちな梅雨時にいい感じ



  

良いんですか?ではありがたく頂戴いたします。