オラファー・エリアソン展ー自然と手をつなぐ
恋人と川べりを歩く気持ちになった。癒されるし、ドキドキもする。東京都現代美術館で開催中の「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を見終わったあと、とても疲れて、とても幸せになった。
オラファー・エリアソンはデンマーク生まれのアーティストで、絵画、写真、建築、そのほか多彩な表現をしている。たとえばニューヨークに巨大な滝を出現させたことなどでも有名。
今回も多面的なアートで楽しめる。見るだけではなく、映ったり、体験したり、通ったり、一緒に旅をしている気持ちになれる。
入ってすぐの展示「クリティカルゾーンの記憶(ドイツーポーランドーロシアー中国ー日本)」(2020)。大きめの円の中にもにゃもにゃした細い線が不規則に描かれている。
種明かししたくない。説明を読む前に「何なのか」考えてみてほしい。自由な発想で。正解はない。
ただテレビでも紹介されているので簡単な説明をすると、これは旅をしてきた絵。木枠で動くようにセッティングした紙にペンが滑るように置かれ、乗り物が揺れるとペンが紙に線を引いていくドローイングマシンで描かれた絵だ。
人ではなく、「マシン」が陸を海を渡りながら描いた絵。旅をしてきた歩み。
自分でも目をつぶって鉛筆立てて揺らしたらこんな線になるかもしれない。そう考えるとやってみたくなる。
「太陽の中心への探査」(2017)
展示室の中心にある大きな「太陽」が7色に輝く。ゆっくりと回転すると光の色が変わり、壁と床を彩る。
近づいた時と、少し距離をとってみた時とでまったく見えるものが違う。どちらもまばゆい。
「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」(2020)
あなたが部屋に入って映し出されることで完成する作品。別の方と重なると違うシルエットになり、近づいたり遠ざかると変わっていく。あなたが動くと作品が動く。
「ビューティー」(1993)
滝に虹がかかり、虹を抜けると滝の向こうに行ける。ずっと虹を見ていたくもあり、虹の向こうに行きたくもなる。抜けるときに少し濡れるのもおもしろく、往復したくなる。
この展覧会のタイトルともなっている「ときに川は橋となる」(2020)は動きが美しい作品なので、ここでは上げない。正直に言うと、動画を撮って写真を撮り忘れた。
天井に映るゆらめきが美しいインスタレーション。幻想的な世界が広がる、大きな作品だ。
ほかにも20年前と20年後の氷河を撮った写真が視覚に焼き付く。
説明がなくても、訴えてくるもの。自然に寄り添う優しさと厳しい視点。見終わって出てくると、自分の感覚が開いていることを感じられる。この感覚を持ち続けていたい。
東京都現代美術館 9月27日まで
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